シーラじいさん見聞録

   

カモメは飛びたった。深く潜れば、早く進めるのだが仕方がない。どこにカモメがいるかすぐにわかるように海面近くを進んだ。
1時間ほど進んだとき、カモメが下りてきた。「もう少しだ。ヘリコプターが飛んでいる。その下には、船が4、5隻集まっているようだ。そのまわりで大きな波が立っている。さっきに見たときと同じだ」
もう1羽のカモメが下りてきて、「あちこちから、船に向かって向かっている。まだ遠いからはっきりしないが、やはりクラーケンだな。幸い後ろから来ていないけど、ミラも気をつけるんだ。海面は見ておくけど、海の中はわからないからな」と言った。。
「わかりました。かなり長い間攻撃しているようですね」
「そうだな。どの船も動いていないようだから、クラーケンが取りまいて、舟にぶつかり、船からは攻撃しているはずだ」
「もう少し近づきましょう」
「それはいいけど、ヘリコプターやセンスイカンが来て、おまえを狙ったりしない注意するんだ。まだこの前のけが治っていないだろう?」
「はい。何か情報がないか探しにきただけですから、危険なことはしません。もしアントニスに伝えることがあればお願いします」
「了解。それじゃ、わしらも様子を見ながら行く」
「お願いします。ぼくも、少し下を見ながら行きます」ミラは、そう言うと、ぐっと力を入れて潜った。しばらくしてから、動きを止めて、あたりの様子を感じた。
何か動いている。それも、不規則で激しい。まちがいなくクラーケンだ。またあらわれるようになったのだ。
それがわかればいい。もう帰ろうと思ったとき、シューという音が聞こえた。そちらに顔を向けようとしたとき、腹に何かが当たった。その勢いで、ミラの体が傾いた。
すぐに戻そうとしたが、思うように力が入らない。どうしたんだ?
またシューという音がした。その態勢で何とか体を動かした。何かがすぐそばを通過した。
狙われていると感じたミラは、体をジグザグに動かしながら上に向かった。
ようやく海面に上がった。カモメが2羽下りてきた。「おい、どうした!血が噴きだしている」
「ああ、何か当たったようです」ミラは顔をしかめた。
「センスイカンに撃たれたんだ!ヘリコプターやクラーケンは見かけないから」
「クラーケンのことはわしらが見ておくから、おまえはすぐに戻れ!」
「また同じことをしているのですね」
「帰ろう。みんな心配するから」
「そうです。そうです。みんな心配している」ミラはそう言いながら、前に進みはじめた。「ミラ、反対だ。そっちに行けば、クラーケンと船がいる」カモメはあわててミラの頭のそばに来て叫んだ。
そして、嘴でミラの体をつつきはじめた。「ミラ、しっかりしろ。おれたちの後についてこい!」
しかし、意識がかなり薄れてきているようだ。目もうつろになってきている。
「おい、センスイカンがあらわれた!」帰る方向に黒いものが浮いてきたのだ。
「ミラ、こっちへ来い」2羽のカモメは南の方向を示した。こっちなら、センスイカンをまけば、何とかリゲルたちのところに戻れる。
しかし、ミラは判断ができなくなってきていた。センスイカンという言葉だけが頭に入ったのか、また前にゆっくり進んだ。
カモメは、「ミラ、こっちだ。そっちじゃない」と叫びつづけた。
ミラは、潜る力がなくなっているのは、海面近くを一目散に進みはじめた。
何かがぶつかってくる。それを体で払いのけた。相手は何か言っているがわからない。さらに当たってくる。
「おまえたち、邪魔をするな。おれは帰るんだ」ミラは大きな声で叫びながら、体を振りながら前に進んだ。
クラーケンは、敵が来たのかと思い、ミラのまわりに集まりはじめた。
「オリオンを助けに行くのだ。邪魔をするな。オリオンがいれば、どこも平和になるんだ。おまえたち、わからないのか!」
ミラは激しく暴れた。自分の体か出る血とクラーケンの血で海は真っ赤になった。

「おい、見ろ!」ジムが叫んだ。その声にみんながテレビのある部屋に集まると、大きなクジラが、何十頭というサメやシャチを襲っているニュースが流れていた。
「どうしたんだ!」誰かが聞いた。
「アメリアの船とチャイアの船が交戦した場所で、今度はアメリアの船にクラーケンがぶつかってきたそうだ。
アメリアの船が応戦していたとき、どこからかクジラがあらわれて、クラーケンを追いはらおうとしたみたいだ。それをヘリから取っている」
「これはミラじゃないか」アントニスが叫んだ。
「そうだよ。ミラだ。でも、リゲルたちはどうしたんだろう?」イリアスも驚いた。
ほとんどのクラーケンは逃げたが、4,5頭のサメが浮いていると伝えて、その映像を流していた。
そして、クジラはそうとうけがをして血を流していたが、しばらくしてから海面から消えたと言って、その様子も映していた。
「ミラがかわいそうだ!一人でクラーケンをやっつけようとしたんだ」イリアスは泣きだしそうな声を上げた。
「すぐにシーラじいさんに手紙を書く」アントニスは立ちあがった。

 -