シーラじいさん見聞録

   

ペルセウスが外の様子を見た。灯りはどこにもない。船は来ていないようだ。しかし、ヘリコプターの音がだんだん大きくなっているようが、こちらには来ないだろう。
下からゴーッという音が聞こえた。ミラが、オリオンの入れた檻を背中に乗せて海面に近づいたのだ。
ペルセウスは、見張りを友だちやその仲間に任せて、すぐに潜った。そして、ミラに近づいて、「大丈夫だ。誰もいない」と叫んだ。
ミラは、それを聞いて、そのまま一気に浮きあがった。早くしないとオリオンの命にかかわるからだ。
檻は海面の上に出た。オリオンはぐったりしていたが、しばらくすると徐々に元気になっていった。

「オリオン!」ペルセウスは、檻を通して、自分の体をオリオンにつけるようにしながら言った。
「ペルセウス、ありがとう。助かったよ」
「でも、これからだ。きみをここから出さなければならない」
「無理をしないでくれ」
「どこかの海岸に運べば、ミラが、こんな檻なんかすぐにつぶしてくれるよ。アントニスたちニンゲンも来てくれるはずだ」
友だちが寄ってきて、「ヘリコプターの音が大きくなった。海を照らしている。こちらに向かっているようだ」
それを聞いて、オリオンは、「ああ、ぼくの体には、場所がわかるものが埋めこまれているはずだ!早く逃げろ」急に叫んだ。
「そうか、それなら、ミラがもう一度海に潜って、やつらをまこう」ペルセウスは提案した。
「でも、センスイカンもわかるよ」オリオンが答えた。
「ミラに相談しよう」
それを聞いたミラは、「オリオンは、1時間ぐらいは海の中におれる。すぐに西に向かう。リゲルたちと合流すれば、なんとかなるかもしれない」
「よし、そうしよう」
ミラは、檻を背中に乗せてそのまま潜った。しかし、海の中でも、何か音がする。センスイカンか。
一度海面に上がった。すると、ヘリコプターが数機上空を旋回していた。
「まだついてきていやがる」ペルセウスが叫んだ。
「どこへ逃げてもわかるんだ。これ以上いっしょにいると、きみらが狙われる。ぼくをおいて、すぐ逃げてくれ。ニンゲンはぼくを助けるだろうから」
「でも、ここまで来たんだぜ。それなら、きみの体からその機械を取る」ペルセウスは反対した。
「いや、だめだ。どこにあるかわからない。早く逃げないと、きみらを攻撃する」オリオンは焦った。
そのとき、カモメが来た。「リゲルたちがもうすぐ着く。ヘリコプターが集まっているので、偵察を頼まれたんだ。あっ、オリオン!まだ閉じこめられたままか?」
「いつも助けてくれてありがとうございます」
「何を言っているんだ。おまえこそ一番辛い目にあっているじゃないか」
「オリオンの体には、場所がわかるものがついているんだ。それで、これからどうしようか思案しているんだ。そう、リゲルに伝えてくれないか」ペルセウスは口を挟んだ。
カモメは飛びたったとき、鈍い音がして、波しぶきが立った。攻撃がはじまった。

「逃げろ!」オリオンが叫んだ。

オリオンの前に薄暗いライトがあった。「明るくなってくるぞ。みんな逃げろ!」必死で叫んだ。
しかし、誰も返事をしない。ヘリコプターや銃撃の音もない。どうしたんだろう?オリオンは、あたりを見まわした。
ようやく、「オリオン、気がついたか」という声がする。リゲルか、ミラか。暗闇を覗こうとすると、笑顔のニンゲンが、「ぼくだよ。マイクだ」と答えた。
「ああ、マイク。ここはどこですか」
「海洋研究所だ。きみは気を失っていたんだ」
オリオンは、思いだそうとしたが、頭が激しく傷む。
「大きなクジラがきみをどこかへ連れていこうとしたんだ。ようやく見つけて、引きはなそうとしたが、すごく抵抗したそうだ。心当たりあるか?」
「いや、わからないです」オリオンはすぐに答えた。マイクは信用できるニンゲンだが、今は黙っているほうがいいと思った。
そうだ、ミラがぼくを助けようとしてくれたのだ。何もなければいいが。
「クラーケンは来なかったが、今まで見たことがないほど巨大なシャチやサメがいたらしい。どうも、そいつらが海の兵隊を操っているようだ。それで、あいつらを捕まえたら、何かわかるだろうとみんな言っている。
ところで、きみを運ぶトラックを奪おうとした人間がいてね。今大騒ぎしているよ」
「えっ!」
「トラックを動かそうとしたとき、運転手をピストルで脅かして、外に出した。その間に、トラックを運転しようとした。
しかし、気がついた兵隊が、タイヤを撃って動かなくなったところを捕まえた」
「誰ですか?」
「白人の男だ。黙秘しているが、いずれわかるだろう。そして、どうしてこの作戦を知っていたのか調べたら、海の生物が暴れる理由が解明されるかもしれない」

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