ののほん丸の冒険 第1章106~112
2026/07/17
ののほん丸の冒険
第1章106
「ちょっと聞いてくる」と言って三上さんが引越しトラックのほうに行った時、急いで木の陰に隠れて見守った。
業者もほとんど積みおわっていたようで、三上さんとかなり話しているようだった。
20分ぐらいしてから三上さんは戻ってきた。「ちょっと聞いてきたよ。でも、
向こうもあまり聞かされていないな」と感想を述べた。
「どこの会社か分からなかったですか」とぼくは聞いた。
「そうなんだよ。何か隠そうという雰囲気ではなかったから、聞かされていないな。トラックは」
「でも、どこへ運ぶんですか」
「そうなんだな。わしは、ここに来る若い社員と親しくなって、スキーもしたことがあるとか言ってやった。ある社員から頼まれことがあって、連絡したいんだがと言ってやった」
「それはすごい。どうでしたか」しゃかりき丸が体を乗りだした。
「でも、仕事を頼んできたのはここを管理している不動産屋だよ。そっちに聞いたほうが早いよと言うんだ。それで戻ってきたわけだ。今からどこへ運ぶんのか聞いてみようとしたんだが、聞く前に、倉庫に運ぶと言っていたな」
「話が元に戻ったな」しゃかりき丸が残念がった。
「よし。車をバス道に持っていく。動きだしたら連絡してくれ」三上さんの友だちの佐藤さんが声を出した。
さすが車好きと言っていたとおりだ。「おまえが追いかけてくれるか」と三上さんが聞いた。
「あたりまえじゃないか。倉庫と言っていたな。大体の場所は分かるから、怪しまれないようについていく。おまえたちは少し後から来い」会った時はあまりしゃべらない人だったが、いわゆるエンジンがかかったように動きだした。すぐにバス通りに向かった。
スタッフ全員が別荘から出てきた。二人は荷物席に乗り込み、後の二人は運転席に乗った。トラックが動きだした。三上さんは佐藤さんに「動いたぞ」と連絡した。
ぼくらも車に乗った。「かなり荷物が多そうだったから、スピードは出ないと思うんだ。まあゆっくり行こう」と三上さんが言った。
「佐藤さんはすごいですね」しゃかりき丸が監視したような声を上げた。
「そうだね。あいつは運送会社に勤めていたんだよ。だから、倉庫のことは詳しい」
「しかし、倉庫に無関係の車が入るのはむずかしいから、まずはどこに行くかが分かればいいと思っているはずだ」
その時、佐藤さんから「鈴蘭新道に入る」と連絡があった。しゃかりき丸が三上さんの携帯を預かって応対する役目をしていた。そしてぼくは地図を見てトラックがどこに向かっているか確認することにした。
報告は次々と来た。それを聞いて、三上さんは、「道東自動車道に入るな」と言った。
「札幌のほうに行くそうです」しゃかりき丸が叫んだ。「それなら、100キロあるから、佐藤に任すよ」確かに連絡は少なくなった。ようやく、「追分町を出たそうです」しゃかりき丸が言った。
「流通センターという地名がありますね」ぼくも地図を見ながら言った。
「そうだろう。そこに倉庫が多い。そこのどこかに荷物を置くようだな」
しばらくすると、佐藤さんから「白石物流センターに入りそうだ」と連絡が来た。
「それじゃ。家に帰ろう」三上さんはそう言って奥さんの家に向かった。
「これからどうするんですか」しゃかりき丸は弾んだように聞いた。探偵映画を見るような気分になっていたかもしれない。
ぼくらもいろいろな人間を追いかけてきたが、大人と一緒に行動するのははじめてだった。
佐藤さんはそのまま帰宅したが、明日出会って4人で作戦を練ることになった。
ののほん丸の冒険
第1章107
三上さんと佐藤さんは朝早く奥さんの家に来た。奥さんは丁寧に昨日の礼を言った。
佐藤さんは、昨日の追跡の説明をした。「おれもあの近くで働いたことがあるので、大体の様子は分かる。白石は物流と預かりをやっている。昨日の荷物はすぐにどこかには送るのか、しばらく保管するのかは分からない。
それによって、こちらがすぐに動かなければならないのか。あるいは時間をかけてもいいのか対応が変わってくる」
「すぐにどこかに運ぶかかもしれないのですね」しゃかりき丸が聞いた。
「そうなんだよ。そうなると分からなくなる」
みんな黙った。今までうまくいっていたのに、また別のところに行ってしまうかもしれないのだ。
「あの別荘はどこが借りていたんだっけ」三上さんがぼくに聞いた。
「不動産屋から聞いたところでは、借り主は菱和貿易です。しかし、世界的な商社ですから、そこに聞いても教えてもらえないと思います。
そこで、ミチコさんの友だちが調べてくれていますが、犯罪を犯すような関連会社ではなさそうです」
「そうだな。もしそうなら、まったく関係がないところに頼むよな。奥さんは警察に今回のことを説明したんですよね」三上さんが聞いた。
「別荘の写真を持って行きました。話は聞いてくれたのですが、『また連絡します』と言うことで」
「証拠にならないというのかな。トリカブトはあちこち生えているからな」
「どうでしょうか」
その時、佐藤さんが言った。「あれから考えていたことがあるんだけど、おれがは白石に努めるようにしたらどうかな」
「おまえが務めると言うのか」三上さんが驚いて言った。
「そうだ。バイトで」
「でもお前は仕事があるじゃないか」
「これが解決するまで休むよ」
「それはやめてください」奥さんがすぐ止めた。
「申しわけないけど、悪いやつを掴まえることができると思うと何だか興奮してきたんだよ。仕事は少しの間なら休めるから」
「バイトするとしたら、倉庫ではどうするんだ」三上さんが聞いた。
「どこかに運ばれてしまえば終わりだから、今日でも申し込んでくる。最近は運送業界も人手不足だから、何とかなるよ」佐藤さんは考えを変えないような
態度だった。
「そこまで言うのなら、おまえに任すよ。でも、すぐに運ぶのと一預かりの2種類があるんだな」
「そうだ。あの荷物がどっちか分からないので探すしかない」
「新人にそんな時間があるのか」
「まあ、やってみる」
ぼくは自分の考えを言うことにした。「今までのことを考えると、急に別荘を解約したと思います。
まず、すぐに運ぶのなら、関東一円に運ぶところに置いているような気がします。今まで関係がある会社は首都圏にありました。
しかし、かなり荷物は多いのでとりあえず一時預かりにしたのではないかと思います」
「そうか。きみが言うとおりだな。首都圏エリアを見る。その次に一時預かりを調べる。さすが探偵だ」佐藤さんは納得してくれた。
「しかし、そんな時間があるのか」三上さんはまだ心配していた。
「最初センターの中を教えてくれるはずだ。その時に全部見る」
話は終った。佐藤さんはすでに履歴書を書いていて、そのまま白石流通センターに走った。
その晩佐藤さんは無事に採用になったという連絡が来た。経験があるので明日から仕事をしてほしいとなったそうだ。
ぼくらは佐藤さんからの連絡を待った。二日後連絡が来た。「見つけたぞ。やはり一時預かりにあった」佐藤さんの声は弾んでいた。
ののほん丸の冒険
第1章108
佐藤さんの話では、その会社は東京・町田市にあるセイワ化学という会社だった。
「おれはしばらくもう少しここにいて様子を見るよ。そこがどういう契約をしているか調べて見る」ということだった。
セイワ化学が菱和貿易の子会社かグループ会社かは分からないが、とにかく行き先が分かった。
ぼくはすぐにミチコに連絡した。「もうすぐテツが来るから言っておきます」と言った後、「絶対無理をしないでね」とつけくわえた。
ぼくは、「おじいさんが言ってくれたように、慌てずに、そして、物事は少し距離を置いて見るようにしています」と答えて電話を切った。
それから、町田市にあるセイワ化学がどこにあって、どういう会社か調べた。
住所は町田市小山ケ丘町だ。企業が集まっているようだ。東京から2時間近くかかるが、すぐにでも行きたいと思ったが、まずはテツが見てくれるはずだ。慌てないこと。ぼくは息を深く吸い込んで気持ちを静めた。
やはり、翌日にテツから電話があった。「ののほん丸。見てきたぞ。3階建てのビルだけど、看板には、単にセイワ化学と書いているだけだ。仲間に調べてもらうと化学製品の輸出入らしいが、何をやっている会社か様子を見たが、ビルの中はブラインドが下りていてまったく見えない。
たまに人が出入りするけど、みんなサラリーマンふうだ。ビルの奥は何かありそうだが分からない。横は会社の駐車場になっている。要するに普通の会社だ。まあ、そんなとこだ」テツは申しわけなさそうに報告した。
「ありがとうございます。ぼくも調べたのですが、そんな大きな会社じゃないようですね。
協力してくれている人が、運送会社の倉庫にバイトとして入り込んでいて、いつどこに運ぶか調べてくれています。それが分かればすぐに連絡します」
「待っている。でも、おまえはすごいな。まるで警察だ。とにかく気をつけろ」テツも少し興奮しているようだ。
二日後、再び佐藤さんから連絡が来た。配送の日が分かったのだ。一週間後の2月16日に配送されることが決まった。しかし、同じ町田市だが、セイワ化学ではなく、行き先は関東実業という会社に変わっていた。鉄などのスクラップを扱う会社らしい。
「これは困ったな」話を聞いたしゃかりき丸が顔をしかめた。「スクラップされると、別荘を借りていた会社が分からなくなる」
「テツが行ってくれているので、その連絡を待って、次のことを考えよう」そう答えたものの、急がないと密かに思った。
夕方、テツから電話がかかった。「かなりスクラップが積み上がっていたぞ。
トラックが何時に出るかは知らないが、17日に着くんだろう。17日におれたちもそこに行こうか」
「一時預かりで配達の時間はまだ分からないそうですので、その人から連絡が来たら、お願いするかもしれません」
テツも別荘から運んだものがスクラップされてしまうと、ミチコの叔父さんやや奥さんのご主人だけでなく、同じように監禁されている研究者を助けられないと心配しているのだ。
15日に佐藤さんから連絡があった。16日の朝8時にトラックに積み込むことになった。ただし、急ぎの配送ではないので、着くのは17日の昼過ぎと決まったそうだ。ぼくとしゃかりき丸は17日の昼頃に間に合うように東京に戻ることにした。
ののほん丸の冒険
第1章109
前日深夜から深夜バスなどを使って町田市にある関東実業という会社に11時ごろに着くことができた。
会社の前を歩いて様子を見た。建物の横には大量の廃棄物が山積みされている。時々大型トラックが来て積んできたものを下ろしている。トラックに書いてある社名を確認しているから大丈夫だと思うが、すでに来ている可能性もあるので、廃棄物にスポーツ用品はないか、しゃかりき丸が確認した。「今のところないようだな」と言いながらも目を離さない。
その時、札幌ナンバーのトラックが入ってきた。ぼくの様子を見たしゃかりき丸が、同じようにトラックを見て、「来たな」声を上げた。
ぼくらは道の反対側にいたのだが、もっと見るために会社の近くに行った。やはり別荘から運んだものらしかった。無造作に廃棄物の山に落とされた。
すぐにスクラップにされるのではないか気が気でなくなった。「どうしようか」という表情で、しゃかりき丸がぼくを見た。
すると、ぼくの体は無意識に動いて会社の中に入っていった。
そこに従業員が2,3人いて、一人がぼくのほうに来た。そして、「どうしたんだ。ここはトラックが出入りするので危険だよ」と言った。
ぼくは、「分かりました。一つお聞きしたいことがあります」と言った。
「道に迷ったのか」
「いいえ。さっきトラックが運んできたのを見たのですが、スポーツクラブで使うものをさがしているんです」
従業員は、「そんなものあったけ」とトラックが下したものを振り返った。どれか分かったようで、「あんなもの、どうしてほしいんだ」と聞いた。
「実は余裕のない家庭の子供を集めてスポーツを教える活動をしているんですが、活動費があまりないので賛同してもらえるところからいただいています」
「それはすばらしいことだと思うが、おれたちも不用品をスクラップして商売をしているので、おれにはその権限がない。また聞いておく」と言った。
「分かりました。それならまた来ますので、そのままにしておいてください」と言って会社を出た。
しゃかりき丸は、ぼくの話を聞いて、「うまいこと言ったな。ひょっとしてくれるかもしれない」と喜んだが、「もらった後はどうしたらいいのだろう」と聞いた。
「ぼくもそれを考えていた。今浮かんだが、もしもらえたら、そのメーカーに販売先を聞くのはどうだろうか」
「なるほど。教えてくれるかもしれないな」
「他の方法はないか考えよう」
ぼくらは作戦を考えながら、おじいさんのテントに向かった。ぼくらの顔を見るとおじいさんは、買い物から帰ってきたミチコに頼んで体を起こして、北海道での話や町田市を聞くと喜んでくれた。
ミチコによれば、おじいさんは、おじいさんを慕っている大人や子供が、自分の状況に負けるのではなく、自分で工夫して早く一人前の社会人になることを願っているので、ぼくやしゃかりき丸が困難に向かっているのを聞くのが好きなのだ。
テツやリュウも夕方来たので、みんなで食事をして今後のことを話した。「もし中古のスポーツ器具をくれるのなら、すぐに取りに行くぞ」と快諾してくれた。2日後、関東実業に行くことにしたので、次の日はミチコと一緒におじいさんの世話などをした後、昔のように近くの公園で作戦を練った。
次の日、朝早く関東実業に向かった。ぼくは会社に入った。すると、この前の従業員がいて、ぼくを見ると、すぐに「この前の」と言って近づいてきてくれた。
ぼくはすばやく「どうでしたか」と聞いた。
山田という名札をつけた従業員は少し笑って、「きみのことを言ったら、上司は、『向こうとの約束で全部は無理だが、子供でも使えるものならいいだろう』と言ってくれた。それを別に置いている」と案内してくれた。
その時、トラックに下ろした時の不用品にシールが貼っているのに気づいて、社名を見た。
ののほん丸の冒険
第1章110
ぼくはそのメモをすぐに見た。東西商事と多摩市と書かれていた。この会社が関東実業に北海道の別荘のスポーツ器具を処分するように依頼したのか。
そのまま山田さんについていくと、子供が使うようなものが一まとめに置いてあった。トランポリンや鉄棒、エア縄跳び、体幹を鍛えるマットなどがあった。それにエアロバイクもある。
「こんなにいただいてもいいのですか」と言うと、山田さんは「子供のときに鍛えると自信が出るからね。どうせスクラップするものだから」と言った。
ぼくは、「助かります。ありがとうございます。責任者に言って、すぐに取りに来させます」と頭を下げてすぐ会社を出た。
そして、近くで待っていたしゃかりき丸と急いでバス停に向かった。バスに乗るまで一言いしゃべらなかった。
そして、バスが動き出すと、しゃかりき丸を見た。もちろんしゃかりき丸もぼくを見ていた。それで、「どこがスクラップを頼んだのか分かった」と小さな声で言った。
「多摩市にある東西商事」と言うと、「東西商事、また新しい会社が出てきたな」
おじいさんのテントに帰ると、みんな待っていてくれた。ぼくは説明すると、「それじゃ、すぐに貰いに行けばいいんだな」とテツが聞いた。
「そうです。そんなに大きな荷物ではないですから乗用車で構わないと思います」、「了解。リュウに運転させて、おれが行く」、「それなら安心です。話を合わせてもらったほうがいいですから」
話は早い。何回か繰りかえしたことなので、お互い自分の仕事が分かっているからだ。
おじいさんはぼくらのやりとりを聞いてうれしそうだったが、ミチコはみんなに迷惑をかけて申しわけなそうにしていた。
翌日、テツとリュウが、東海実業でスポーツ器具を積んで、多摩市の東西商事を見に行ってくれることになった。
ぼくとしゃかりき丸は、ミチコの手伝いをしてから、いつものように公園で作戦を練った。「別荘のブツは追いつめたが、これからどうしたらいいのかな」としゃかりき丸が話をはじめた。
「確かにあいつらは器具などを完璧に処分したかったんだろうが、それにしても念入りすぎるように思える。
それに時間を取られて、東京通商やその子会社の菱和貿易の人間のことは分からずじまいだ」
「ほんとそうだな。荷物を追いかけたら犯人はすぐ分かると思っていた」しゃかりき丸も同意した。
「分かっていることは研究所に出入りしていた佐々木と外国人が殺されたことだ」
「どうして殺されたのだろうか」
「仲間の口封じとは考えられない。他の組織から殺されたと考えるのが自然だ」
「ということは」
「外国からテロ組織はいくつも入ってきている可能性がある」
「そして、研究者の取り合いをしているのか。また北海道に戻ったほうがいいのかな」しゃかりき丸の考えにどう答えようかと思ったとき携帯が鳴った。テツかなと思ったがそうではなかった。
「もしもし。私が誰だが分かりますか」という声が聞こえた。とても落ちついた老人の声だ。
しかし、誰だか分からない。ぼくは言いよどんでいると、「以前大雪山で・・・」という声が聞こえてきた。ぼくは、「あの時の」と叫んだ。
「ああ、そうです。山岡です。あの時は名前を言っていなかったと思うが。
あの時は楽しかったよ。トリカブトのことを兄弟で話していたので、わしもつい声をかけたんだ」
「その節はありがとうございました。とても楽しかったです」
おじいさんは、「あれからもトリカブトは探したんかい」と聞いてきたので、
「役に立ちました」と言った後、おじいさんともう少し話をしたい気持ちがわいてきた。
のほほん丸の冒険
第1章111
それで、「実は」と言って、今までのことをかいつまんで話した。山岡さんは、「伯父さんを探すために、兄弟でがんばったんだね。それにしても、一つ一つ事実をつなぎあわせていくのは学問と一緒だよ。
警察にも相談しているということだから、きみらが見つけた証拠を使って、伯父さんは必ず見つかると思うよ」
大雪山のときに言った内容まで訂正しなかったのは気がかりだったが、ぼくは
「ありがとうございます。ただ、次々と追いかけることが出てくるので、今後どうなるのか心配なんです」と答えた。
「また研究のことを言って申しわけないが、どんどん研究が進んでいるときは、もっと行こうもっと行こうと思うものだが、それがちがう道を言っている場合がある。
何かおかしいと思うときは、どこかで一休みすることも必要だ。だから、進めなくなって立ち止まったときのほうがうまくいくことがある。
私もたまに論文を出すこともあるけど、早く手柄を立てようとすると大抵うまくいかないもんだよ。誰かがすでに研究していることもある。
きみも、今までのことを振りかえったら、何か見落としていることが分かるかもしれない。ただ、きみらがしていることはとても危ないことだから、無理はしないことだ。警察が捜査しているはずだから、伯父さんは見つかるかもしれないから」
ぼくは、「貴重なご意見ありがとうございました。またお電話します」と言って電話を切った。
そうだ。山岡さんが言うとおりだ。それで、今までの流れをもう一度考えなおすことにした。
東西商事はテツとリュウが追いかけてくれることになった。
ぼくは、しゃかりき丸に今までのことを振り返ることを提案した。しゃかりき丸も、「実はおれも、追いかけるのが世界的な会社から徐々に町工場のような小さな会社になるので大丈夫かと思っていたところなんだ」とぼくの考えに賛成してくれえた。
そこで、すぐに公園に行って、さっそくぼくがミチコからカバンを預かるところから話をはじめた。
「おれたち3人がそれぞれ監禁されたときは、あいつらは例のカバンはどこにあるんだと脅すばかりだったな」としゃかりき丸が言った。
「そうだった。しかし、ミチコからカバンを預かったときはミチコの伯父さんはすでにどこかに連れ去られていたんだ。だから、カバンが手に入らなかったら、伯父さんに直接研究内容を聞こうとしていたかもしれない」
「それにしても、おれたちを監禁した会社は全部ちがう名前だったな」
「そうだった。あれは今でも分からないけど、研究書類が高く売れるので、会社同士で競争していたと思える」
「なるほど。それで分かった。そして、ドイツのテロ組織の事件か。あそこでも研究者が監禁されていたんだな」
「それで、ミチコと北海道の福田さんが知りあうとになったわけだ」
話は北海道での出来事が続いた。佐々木、ジェームス・ミラー、東京通商、菱和貿易、セイワ化学、関東実業、東西商事などの名前が出た。
「分からないのは3つだ。誰が写真を奥さんの郵便受けに入れたか。なぜ佐々木とジェームス・ミラーが殺されたのか。そして、奥さんが車の中で佐々木が電話でしゃべっていたコ―ズモスとは何なのか」ぼくは夕べから考えていたことを話した。しゃかりき丸は、「確かに」とうなずいた。
「それで申しわけないけど、ぼく一人で北海道に行ってくる」と、これも夕べ考えて計画を話した。
しゃかりき丸はびっくりした顔をしたが、すぐ「了解した。きみのことだから、もう奥さんには連絡しているだろう。おれは、ここでテツから東西商事についての連絡を待つことにする」と笑った。
のほほん丸の冒険
第1章112
新宿に戻っておじいさんやミチコに挨拶をしてから札幌に行ったので午後8時過ぎになったが、奥さんはごちそうを作って待っていてくれた。
お互い今までの情報交換をしたが、目立った動きはなかった。奥さんの話では、警察から捜査を続けているという連絡が一度来ただけだった。
「『どんな状況ですか』と聞いたのですが、『写真の風景もすべて確認して、それらしき場所で近所の人から話を聞いたのですが、人が出入りするのを見たことがないということだったので、さらに調べています』と木で鼻をくくる返事でしたね。それに、殺されていた二人の人間も佐々木やジェームス ミラーなのかも分からないようです」奥さんは悔しそうに言った。
「やはりスパイなので身元が分からないようにしているのでしょうか。でも、警察も国際的な協力機関があるので協力すればすぐ分かりそうなものですが」と奥さんに感想を言った。それから、奥さんの家の郵便受けに入れられていた写真から、トリカブトらしいものが見える別荘を見つけ、そこにあったスポーツ器具を追いかけていることを話した。
しかも、別荘の借り主は東京通商とその系列会社の菱和貿易という商社であることが分かったときは興奮したことを話した。「これでご主人やミチコの叔父さんをすぐに救いだせると確信しましたよ」
そして、別荘が解約されたことも知って、ぼくとしゃかりき丸は興奮しました。それは奥さんのご存じです。最初は三上さんや佐藤さんのおかげで漁通センターに運ばれたことが分かりました。それから、東京の町田に運ばれ、セイワ化学、関東実業とスクラップ会社をたらい回しされていくのです。今は関東実業から別の会社に行っているはずです。今考えれば、どんなことでも注意深く計画されているのかもしれません」
それを聞いていた奥さんは、「そうすると、東京通商や菱和貿易が主人たちを監禁した会社と言えるわけですか」と聞いた。
「ぼくも、最初そう思いました。しかし、世界的な商社がテロ組織を作ったり加担したりするとは考えられません」
「確かにそうですね」奥さんもうなずいた。
「それに誰が二人を殺したのかという大きな問題があります。警察も被害者が誰なのかもわからないそうですから、解決には相当時間がかかりそうです。
ただし、警察がご主人たちの行方が分かればすぐにでも助け出してくれるでしょう」
そして、奥さんに「しばらく佐々木が下りた場所を調べようと思いますが、警察はあのあたりを調べたのでしょうか」と聞いた。
「私は警察にちゃんと言いました。研究所に来ていた佐々木という男が下りたことは分かっていますからと。
警察の話では、佐々木らしき男を見たことがある人はいたようですが、それ以上は分からないと言っていました。それに、あの一帯は北海道でビジネスをしている外国人が多いらしいです」
「そうでしたか。先日ぼくもこれからどうしたいいのかと考えているときに、大雪山で知り合った人から電話がありました。
その人は山岡というおじいさんで昔理科の教師をしていたそうです。トリカブトのことをいろいろ教えてくれました。
それで、心配して電話をくれたようです。あのときは詳しいことは言わなかったのですが、もう少し話をしました。
すると、大人の助けがあるとはいえ、よくそこまで追いかけたなあとびっくりされました。
しかし、スポーツ器具が処分されたら今後どうしたらいいのか迷っているんです」と率直に聞きました。
先生は、自分は社会のこともよく分からないし、きみのような国際テロ事件のことなどは知らないけど、植物の研究などでは、楽しようと考えていると新しい発見はできないな。どうしてこうなったかを見つけるためには長い時間が必要だ。自分は横着者だから、一流の研究者になれなかったんだと笑っておられました。
きみがみんなのためにやつていることはすばらしいことだけど、ぼくが言えるのはそれくらいだ。
また北海道に来たら連絡してくれよ。一緒に話そうじゃないかと誘われたので、来たんですよ。確かにわからないことだらけですから」