オニロの長い夢1-59
オニロの長い夢
1-59
「それにしても、この島の下には神がいるという言い伝えはほんとだったのだな。
おれは平気でこの近くを通っていたが、今までは何もなかったので安心していた。これからは通らないようにしよう」
リビアックはそう言って、「この島の向こうにおれの島があるんだ」と教えてくれました。
オニロは、「神様は普段は海底で寝ているが、怒ると嵐を起こすと聞いたことがある」と答えました。
「そうだった。そうだった。おばあさんが、『おまえは悪いことをしているから、いつか神様にひどい目に会わされる』と言っていたことを思い出した。おれは全然気にしていなかったが」
「それなら、おばあさんに顔を見せに行ったらどうか」とオニロは提案しました。
リビアックはしばらく黙っていましたが、「そうか。それから、薬草を探しにいこうか」と、リビアックはすっかりオニロの弟子になったように言いました。
船は先ほどの島からかなり離れてから前に進みました。嵐の後なのに、海は何事もなかったように穏やかです。
さらに行くと遠くに島が三つありました。よく見ると、左奥は陸がありそうです。
「あの陸は元々島に住んでいる人がいたのだ。おれに家族もあそこで生まれたそうだ。
しかし、漁のためにこの三つの島の誰かに移ってきたのだ。おれに島は真ん中の一番大きい島だ」リビアックは懐かしそうに言った。
「船もあちこちいる。きっと漁をしているんだな。すばらしい風景だ」オニロは大きな声で言いました。
リビアックは、「景色はいいんだけど、ずっといると飽きるよ。それに、おれは、魚釣りはあんまり好きじゃないからな。おやじにはよく怒られたけど」
「おばあさんといるんだな」
「そうだ。もう1年ぐらい会っていないけど」
「心配だろう」
「親父が死んで、数年後におふくろも死んだので、おばあさんはおれのためによく働いてくれたのは感謝している」
「それじゃ、早く会いに行こう」二人はおばあさんがいる島に向かいました。
港に着いたので、端のほうに船をつないで陸に上がりました。港から少し坂を上ったところに家があると言います。坂道を上っていると、向こうから誰か来ました。すると、「リビアックか。おまえのばあさんは死んだぞ。みんな、おまえの帰りを待っていたんだが、帰ってこないので葬式はすませた。早く家に帰ってみろ!」と叫びました。
リビアックは、「わかりました」と言って走り出しました。オニロもついていきました。
数分すると、リビアックはレンガ造りのみすぼらしい家に飛びこみ、「あばあさん、おばあさん」と叫び、大きな声で泣いているのが聞こえました。
オニロはその声を聞いて胸を締めつけられました。リビアックは両親を亡くして、おばあさんだけになったのに、そのおばあさんも亡くなってしまったのだと思うと、オニロも、おばあさんに会いたいという思いが止まらなくなりました。
その後、何も音がしなくなりましたが、しばらくしてドアがなく布が下がっているだけの部屋から、リビアックが出てきました。
目を真っ赤にしています。オニロは声をかけることができませんでした。
リビアックは、「時間を取らせたな。裏山で薬草をさがそうじゃないか。名前は何だっけ」と笑顔で聞きました。
「大丈夫か。ノソスグラティという名前だ」
「近所のばあさんに聞いてみるよ。ノソスグラティがあれば、きみもすぐに家に帰れるじゃないか」
「それならありがたい」オニロは心が弾むようでした。「ノソスグラティを持ってかえれば、ぼくのように同時にパパとママをなくすような不幸な子供はいなくなるし、ぼくもおばあさんの役に立つためにがんばることができる」
二人は、ピストスを連れて坂道を上っていきました。時々、リビアックの家と同じような小さなが家があります。
リビアックは一軒一軒に声をかけて、おばあさんのことで世話になったことを詫びてから、「ノソスグラティという薬草を知らないか」と聞いて回ってくれました。