天職

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復活ノート

「天職」
先日、借りているビルの公共部分を直す工事があり、大勢の職人が出入りしました。
もちろん、大家から受注した工務店の下請けでしょうが、その仕事ぶりをつぶさに見ることができました。
最後には「元受け」の工務店の検査を受けて「工事完了」ですが、職人は、老いも若きもまじめです。そして、楽しそうです。
ゼネコンのJVのように、ばらし、タイルの張替え、シャッターの新調などの職人がいますが、あちこちの現場で顔なじみのようで、仕事中も、近況報告、自分のこと、あるいは、互いのしりあいの消息などを話していますが、さぼっているという雰囲気はなく、手や足は忙しく動いています。
そして、自分の仕事に自負をもっています。
私の店のドアが開きにくくなっていたので、忙しいところすまないが、どうにかならないかと聞いてみますと、すぐに脚立に上り、調べてくれました。
「これが原因だ。こうすればなおるよ」とアドバイスをしてくれました。
礼を言おうとすると、素人に任せられないと思ったのか、「じゃ、なおそか」と言って、ボンドをもってきて、2,30秒ほどで、軸が外れないないようにしてくれました。
そして、このボンドはどういうもので、なぜこれを使うかを10分以上聞かされました。
また、2台の車の調子がいよいよ悪くなって買いかえどきと判断しました(1台はエンジンが製材所に入りこんだような音がし、もう1台も朝エンジンがかからないだけでなく、ドアのキーが全部つぶれた)
以前から、道の脇にある中古車を見ていました。ただし、ときどき行く街の展示場は、地代が高いこともあって、有名なチェーンがほとんどですが、郊外では、人家もないような場所に中古車が所狭しと並んでいます。
町の展示場にある中古車は参考にするだけです。有名なチェーン店は、「高年式で無事故の車」などと謳っていますが、値段が高いのです。
確かに仕入れも他と比べて高いのでしょうが、法外な口銭もつけています(いや、「3年間保証です」などと言うでしょうが、業界では、100万円の口銭をホームランと呼んでいるようです。
私は、1500万円の車を、3年乗って350万円で売った経験があります。それを、800万円で売っていましたから、中古車を買うときは注意してください)。
それで、郊外の中古車屋を綿密に調べました。
社員でも、1人で経営している場合でも、若い人ほど、親身に相談に乗ってくれました。そして、車のことをよく知っています。エンジンなどの動力系だけでなく、塗装の色の性質までも教えてくれます。
結局、「よそ行き」の車と配達用の車を、別々の店で買うことにしました。
どちらも、10~15年落ちですので、なんとか手が届きました(特に配達用の「軽」は、13万キロで9万円でした)。
どちらの青年も、「故障をしたら、できるだけのことはします」と口約束してくれています(売ったら終わりという雰囲気が全然ありません)
気に入った仕事を一生続けられることほど幸福なことはありません。
自分の才能を伸ばすことができ、人を喜ばす満足感で人生が豊かになるのですから(過度に利益を優先するようになると歯車が狂うことは、私のような失敗した経営者が経験したとおりです)。
今回の地震や津波、原発事故で、大勢の人が、3代、4代続いた農業、漁業をあきらめざるをえないということですが、ほんとに辛いことだと思います(放射能が少なくなくなれば、すぐにでも米や野菜を作りたい、津波は怖いけど、また海の近くに住んで、漁に出たいという思いを語る人がいっぱいいます。そういう人は、他にすることができないからなどと言っていますが、自分の仕事に自負心があるはずです)。
被災者には、そういう補償を考えていただきたいですが、そうではない経営者は、目先のことに気を取られがちですが、自分と自分の仕事について考えることも忘れないでください。