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復活ノート

「見る」
焼肉屋でユッケを食べた人が亡くなっています。まだ入院している人も何十人もいるという重大事件です。
報道では、生肉というのは、売るほうも食べるほうも危ない橋を渡る食べものだったようです。
最近こそあまり行かなくなりましたが、客にごちそうをする場合は、人気のある焼肉店に連れていったものです。もちろん、生レバー(レバ刺し)、ユッケはなくてはならないものでした。
そういうことにならなったのは、自分の体力、あるいはそういう店に行かなかったという幸運にめぐまれていただけかもしれません。
生肉用の肉は厳しい審査がいるようなので、加熱用の肉をユッケにしていたのは業界の慣習だったとのことです。
そういえば、つい最近も、並ロースはもも肉、上ロースでやっとロース肉というのがありましたが、それも戦後からの慣習と言われています。
社長は土下座をしていますが、その姿に自分を重ねている人も多いかもしれません(思いすごしかもしれませんが、私を浮かべた元従業員もいるかもしれないと思いました)。
新聞の報道によれば、あの社長は、バイトから脱サラをして成功したようです。
ワンマンで社員の話を聞かない、菌が付着している肉の表面を取りのぞくトリミングという作業をさせない(もったいないので)などとのことですが、それがかなり似ているのです(私は、育児や介護のサービス会社でしたが)。
私の推測では(以前のことを思いだしながら言えば)、日本地図を広げて、今後どう店を展開していくかを考えることが至福のときだったのでないでしょうか。
北陸から、横浜に入ったようですから、そこを攻めて首都圏の本丸に向う。そして、名古屋や大阪へも触手を伸ばす。全国制覇も近いぞ。そして、自分ほど経営能力があるものはいないと思うようになります。私も、織田信長、徳川家康気分でした。
あの社長に、大きな夢を見ていましたが、それに気を取られて、大事なものを見ていませんでした(それも私たちに似ています)。
まず、飲食店は食中毒を起してはならないということです。これまでも、かなりクレームがあったようですが、それを無視しています(各店舗に細菌検査を義務づけておけばすんだことです)。
また、業者を見なければなりません。業者は、飛ぶ鳥落とす勢いの会社に売りこみをします。利益のためには、安い仕入れ価格は渡りに船と思ったのでしょう。
事件が起きるとすぐに、「国の基準があいまいだ」とインタビューに答えたり、従業員に、「違反はしていないからね」というメールを送ったそうですが、この業界の慣習に甘えていたのでしょう。それなら、そこを突く商法もあったと思います。
また、急激に大きくなった会社は、まちがいなく組織ができあがっていません。人を見るという手強い能力もいります。
復活をめざす経営者がまた仲間入りしたという思いですが、まず、丸裸になってでも、被害者の補償をしっかりしてほしいと思います。
「見ていない」という初心者にありがちな失敗をどう生かすかを考えつづけていけば、復活は必ずできます。