シーラじいさん見聞録
「シーラじいさんはどこだ!」オリオンが思わず大きな声を上げた。
「みんなといっしょにいる。そして、きみたちが帰ってくるのを待っているぜ」
ミラは、オリオンとリゲルを安心させた。オリオンとリゲルはうれしそうにお互いを見た。
ミラは続けた。「お兄さんをつれてかえってから、おれは、きみらを迎えに行く前にシーラじいさんを探そうと決めた。
しかし、どうしても見つからずに途方にくれているときに、あのカモメが下りてきて、シーラじいさんでしょと声をかけてくれた。
それによると、刻々と状況が変わってきたので、どうしたらいいのかわからなくなって、みんなでシーラじいさんに相談することを決めた。
みんなで探して、ようやく海面にいるシーラじいさんを見つけたので、その状況を説明したそうだ。
そして、シーラじいさんの考えどおりに行動した。
カモメの話では、顔を出していた海の真下に岩場があって、そこにいるとのことだったので、おれは、すぐに潜っていって探したよ。
信号を送りながら、岩の間を丹念に探すと、青く光っている2つのものを見つけことができた。シーラじいさんだ。おれは近づいた。
シーラじいさんは出てきて、『ミラ、ご苦労じゃったな。おまえのお陰でみんな助かった』と言ってくれた。
それで、おれは、知っているかぎりのことを話した。
シーラじいさんは、カモメたちに、おれたちの上を飛ばないように言ったそうだけど、その理由はわからないんだ。その理由を聞こうとしたときに、きみたちを迎えにいってくれるかと言ったので、すぐに探しにいったってわけさ」
「そうか。やはりシーラじいさんは動いていたんだな。シーラじいさんならどうするだろうと知りたかったけど、心配しなくてもよかった」オリオンは安心した。
そして、「それじゃ、みんなが待っている場所に急ごう。ミラ、もう一度波を頼むよ」とミラに言った。ミラは動きだした。
ミラが起こす波に勢いが出るまで、オリオンはリゲルを押した。やがてリゲルは波に乗っ進むことができた。
2日後、ミラは止まると、「みんなはもう少し向こうにいる。そして、シーラじいさんはこの下にいるよ。おれが呼んでくるから、少し待っていてくれないか」と言うと、すぐに潜った。
やがて、海が高くなり、ミラの背中が海面にあらわれてきたと思っていると、すぐ横で、「よく帰ってきたな」というシーラじいさんの声が聞こえた。
「シーラじいさん!」2人は同時に声を上げた。
「ご苦労じゃった。ミラから聞いたが、リゲルがけがをしたそうじゃが、大丈夫か?」と心配して言った。
「大丈夫です。オリオンがいてくれたので帰ってこられました」とリゲルは恐縮して答えた。
「いや、カモメたちがうまくやってくれたので、何事もなくお兄さんをつれてかえることができました」オリオンも報告した。
近くまできていたミラも、「そうだ。カモメたちはおれたちがいる場所から離れて、ちがう場所を飛んだそうだ。さもそこにおれたちがいるかのように見せかけるためにね。他の者は、おれの背中に止まって警戒してくれていた」と続けた。
そのとき、カモメが下りてくると、「それはわたしたちが考えたことじゃないの。わたしたちも困って、シーラじいさんに相談したのよ。
というのは、やつらの上にいたわたしたちの仲間が他の鳥の集団に襲われるようになったの。
空にいる者は、みんなあなたたちの味方だったはずなのに、どうしてこんなことになったのかわからなかったの。
襲った鳥に話をしようと思ったのだけど、その鳥たちはすぐに見えなくなったと聞いたから、それはあきらめて、シーラじいさんに相談しようと思ったの。
シーラじいさんは、わたしたちの話をじっと聞いていたけど、まずおまえたちはミラたちの上を飛ぶことをやめて、やつらを他の方向に行くように仕向けてくれるかということだったので、わたしたちはすぐに動いたわ。
やつらはまんまと引っかかって、別の方向に来たわ。そのうち、お兄さんは安全な場所の近くまできたことを聞いて、ばらばらに分かれたの。
そして、しばらくこの場所から離れなければならなかったので、あなたたちが心配だったけど、探しにいけなかったのよ」カモメはリゲルとオリオンを気づかった。
「そうそう、ミラが、あなたたちを探しにいっている間に起きたことを報告するわね。
お兄さんは無事に安全な場所に入ることができたけど、パパとママがみんなの了解を得るまでたいへんだったわ。
そこは、赤ん坊をみんなで育てるための場所だから、お兄さんのような者が入って、もし赤ん坊に何かあったらどうするんだと反対されたのよ。
赤ん坊が半年ぐらいで一人前に行動できるように厳しく躾をするらしいの。赤ん坊の親でも、しばらくは入れないほど厳しい場所なのよ。
パパとママも、みんなの反対に納得して、家族でお兄さんを守ろうと決心したわ。
ところが、ある長老がそのことを聞いて、パパとママに会いに来てくれたの」
そして、どこからか来た者に洗脳されて、わしらの子供や孫がわしらの言うことを聞かずに困っている。もし、もっとよそからくるようになったらどうするのか。
わしらの場所を守ろうとした者を助けるのは当たり前じゃとみんなに掛けあってくれたの。それでお兄さんは安全な場所で養生をできるようになった。それはつい今しがたなの」