のほほん丸の冒険
第1章112
新宿に戻っておじいさんやミチコに挨拶をしてから札幌に行ったので午後8時過ぎになったが、奥さんはごちそうを作って待っていてくれた。
お互い今までの情報交換をしたが、目立った動きはなかった。奥さんの話では、警察から捜査を続けているという連絡が一度来ただけだった。
「『どんな状況ですか』と聞いたのですが、『写真の風景もすべて確認して、それらしき場所で近所の人から話を聞いたのですが、人が出入りするのを見たことがないということだったので、さらに調べています』と木で鼻をくくる返事でしたね。それに、殺されていた二人の人間も佐々木やジェームス ミラーなのかも分からないようです」奥さんは悔しそうに言った。
「やはりスパイなので身元が分からないようにしているのでしょうか。でも、警察も国際的な協力機関があるので協力すればすぐ分かりそうなものですが」と奥さんに感想を言った。それから、奥さんの家の郵便受けに入れられていた写真から、トリカブトらしいものが見える別荘を見つけ、そこにあったスポーツ器具を追いかけていることを話した。
しかも、別荘の借り主は東京通商とその系列会社の菱和貿易という商社であることが分かったときは興奮したことを話した。「これでご主人やミチコの叔父さんをすぐに救いだせると確信しましたよ」
そして、別荘が解約されたことも知って、ぼくとしゃかりき丸は興奮しました。それは奥さんのご存じです。最初は三上さんや佐藤さんのおかげで漁通センターに運ばれたことが分かりました。それから、東京の町田に運ばれ、セイワ化学、関東実業とスクラップ会社をたらい回しされていくのです。今は関東実業から別の会社に行っているはずです。今考えれば、どんなことでも注意深く計画されているのかもしれません」
それを聞いていた奥さんは、「そうすると、東京通商や菱和貿易が主人たちを監禁した会社と言えるわけですか」と聞いた。
「ぼくも、最初そう思いました。しかし、世界的な商社がテロ組織を作ったり加担したりするとは考えられません」
「確かにそうですね」奥さんもうなずいた。
「それに誰が二人を殺したのかという大きな問題があります。警察も被害者が誰なのかもわからないそうですから、解決には相当時間がかかりそうです。
ただし、警察がご主人たちの行方が分かればすぐにでも助け出してくれるでしょう」
そして、奥さんに「しばらく佐々木が下りた場所を調べようと思いますが、警察はあのあたりを調べたのでしょうか」と聞いた。
「私は警察にちゃんと言いました。研究所に来ていた佐々木という男が下りたことは分かっていますからと。
警察の話では、佐々木らしき男を見たことがある人はいたようですが、それ以上は分からないと言っていました。それに、あの一帯は北海道でビジネスをしている外国人が多いらしいです」
「そうでしたか。先日ぼくもこれからどうしたいいのかと考えているときに、大雪山で知り合った人から電話がありました。
その人は山岡というおじいさんで昔理科の教師をしていたそうです。トリカブトのことをいろいろ教えてくれました。
それで、心配して電話をくれたようです。あのときは詳しいことは言わなかったのですが、もう少し話をしました。
すると、大人の助けがあるとはいえ、よくそこまで追いかけたなあとびっくりされました。
しかし、スポーツ器具が処分されたら今後どうしたらいいのか迷っているんです」と率直に聞きました。
先生は、自分は社会のこともよく分からないし、きみのような国際テロ事件のことなどは知らないけど、植物の研究などでは、楽しようと考えていると新しい発見はできないな。どうしてこうなったかを見つけるためには長い時間が必要だ。自分は横着者だから、一流の研究者になれなかったんだと笑っておられました。
きみがみんなのためにやつていることはすばらしいことだけど、ぼくが言えるのはそれくらいだ。
また北海道に来たら連絡してくれよ。一緒に話そうじゃないかと誘われたので、来たんですよ。確かにわからないことだらけですから」