ハロウィン
今日も、ムーズが降りてきた~きみと漫才を~
「ハロウィン」
―――おや、向こうから来るのは喜ぃさんちがうか。どないしたんやろ
―――喜ぃさん、これ、喜ぃさん
―――これは、これは大家さん。どないしましたん?えらい辛気くさい顔して
―――こっちが聞きたいわ。おまはんこそ眉間に皺寄せて歩いているさかいに、何かあったんやないか心配しとるんやないか
―――別に何もおまへん。どこぞで酒飲ませてくれるところないかいなと考えていましたんや
―――それならよかった。怖い顔してるさかいに、奥さんにでも何かあったんやないか思うたわ
―――それははばかりさんです。かかは、あいかわらず起きては食い、寝ては食いの、いたってヘルシーな生活を送っています
―――せやけど、おまはん、なんで怖い顔しとるんや
―――ああ、これでっかいな。大家さんは知りまへんのか。今、怖い顔がはやってまんねんや
―――聞いたことないなあ
―――デパートでもコンビニでも行ってみなはれ。怖い顔をしたもんを吊ってますわ。
それを見た子供が喜んでいます
―――はっはあ~、それはハロウィンや
―――ハロウィン?新しいウイロウで
―――ちがうがな。外国から入ったお祭りの一種で、かぼちゃに細工をしたもんをもったり、仮装をしたりして町を練りあるくんや。魔除けの風習らしい。なんでも、ケーキを売るために日本でもやるようになったらしいな
―――日本は、昔からクリスマスでもなんでも、商売に使うんですな
―――そうじゃ。土用の丑(うし)の日に,鰻を食べるのも、夏に鰻を売れないのを何とかしようと思った鰻屋が、平賀源内ゆうえらい人に相談したところ、「本日丑の日」と書くように勧めたからやそうな
―――それはどうして
―――丑の日には、「う」のつくものを食べたら、健康になるという言い伝えがあったんや
な
―――「ゆるキャラ」もそうですか
―――よう似た動機やろな。町の名前を売るんや
―――それでわかりましたわ。わざわざあんなもんを作らんでも、呆けた顔をしたもん、なんぼでも歩いてとるのにと思てましたんや
―――そこまでゆわんでもよろしい。おまはんも、昼から酒なんか飲まんと、少しは賢いこと考えたらどうや
―――わては、最近、人生について考えてまんのや。人生は一度や。金儲けで貴重な時間をつぶすのはもったいないと思えるようになりましたんや
―――おまはんから高僧の教えを聞くとは思わなんだ
―――こうそう、ああしよう
―――茶化すもんやない
―――今日も、ホテルが食材の偽装したゆうて謝ってますやないか。あの人らは、個人としてはどう思っているのか気になりますな
―――なるほど、なるほど。どうや。立ち話もなんやから、ちょっと家に寄らへんか
―――それじゃ、一杯だけ
―――呑む気やな。しゃあない、ちょっとだけやで
―――これはうまい。さすが大家さんや。
―――どこへ行っても、そんなべんちゃらゆうとんのやろ。
―――最近は、喜びそうなところでしか言いません
―――ったく
―――この世は金を追いかけ、金に足をすくわれて、自分を見失うものがあまりにも多すぎます。人生の何たるかを考えようとしないからでございます
―――もう酔うとるんかいな。お寺に入ったら、酒飲まれへんで。朝も2時3時起きて修―――行の毎日や。それでええんやな
―――えっ、ほんまですか。わては低血圧ですわ
―――まずは奥さん孝行しなはれ。おまはんは腕のええ大工や
―――わかりました。今日は、かぼちゃのお化けを被ってかりますわ
―――なんでや
―――実は、さっき稼ぎが悪いやつは出ていけゆわれましてん。お化けなら、仲間や思うて中に入れてくれるかもしれん