ジャングル(2)
今日も、ムーズが降りてきた~きみと漫才を~
「ほんとにヘンな童話100選」の(165)
「ジャングル」(2)
そして、力の強いサルは話しはじめました。「おれは自分のジャングルをどこよりも大事に考えている。だから、自分のジャングルをナンバーワンにしたいのだ。
しかし、火事で多くの木が焼けてしまった。このままでは他のジャングルに負ける一方だ。
それなのに、まだ他のジャングルを助けている。そんな馬鹿なことがあるか!そんなことは自分たちに余裕ができてからしたらいいのだ」
「でも、それは以前からの約束があるからじゃないですか。それに、災害が起きてから、向こうは当分いらないと言っているそうですが、小さなジャングルでわずかな量ですから渡しているようです。
しかし、近隣のジャングルからは、見舞いとしていっぱい食料をもらっています。
自分たちがひもじいときでも、助けたからこそ、今助けてくれていると思いますが」若いサルが言った。
「それは認める。しかし、それがいつまで続くかだ。おれたちがそれに頼って、食料を集めることをしなくなったら、困るのはおれたちだぞ。
今まで助けたのだから、おれたちをもっと助けろと言うのか!
そんなプライドを捨てるようなことして、ナンバーワンになれると思うのか。どうだ?みんな」力の強いサルを聴衆に叫びました。
「そうだ、そうだ」という声がジャングルに響きました。
「それに、余裕のある時にためておけば、困ったときにはそれを食べればいいのだ。他人をあてにすると禄なことはない。
他のジャングルのことはほっておいて、いつも自分のジャングルのことだけを考えておけばいいのだ」
「そうだ、そうだ」という声が起きました。
「自分たちのことを考えるのがナンバーワンになる第一歩だということがわかってくれたと思う。
さて、今の状況はどうだ?自分の子供に思う存分食べさすことができているか」聴衆は首を振った。
「親なら、自分は食べないでも子供に食べさせたいものだ。それもできないのに、どこかのジャングルに分け与えている。何という愚かなことだ!それでは、どうするべきか?」聴衆は次を聞きたくて、体を前に動かした。
「食料がたっぷりあるジャングルへ行って、そこの食料をいただく」
「そんなことをしてもいいのですか?」別の若いサルが驚いて声を上げました。
「構わない。それが愛国者のすべきことだ」力の強いサルはきっぱり言いました。
そのとき、長老の世話をしているサルが来て、「長老が呼んでいます」と言いました。
「こちらから行こうと思っていたところだ。すぐ行く」力の強いサルは使いのサルに答えました。そして、聴衆に、「今のことをみんなで話しあっておけ。すぐに戻ってくるから」と言い残して出かけました。
長老は待っていました。力の強いサルは、「何か,ご用で?」と言いました。
長老は、「おまえは今何をしていた?」と聞きました。
「はい。みんなと話しあっていました」
「おまえはわしらが培ってきた信頼というものを壊すつもりか?」
「滅相もございません。長老のお考えをみんなで引き継ごうとしているだけです」
「でたらめを言うな!おまえの思想は危険じゃ。世界中に戦いが起きて、多くの者の命が奪われる。そして、憎悪と不信がはびこるだけじゃ」
「お言葉ですが、長老」力の強いサルは落ちついて言いました。「どうするかはこのジャングルに住んでいる者に決めさせましょう」
「よかろう」長老も静かに答えました。