ジャングル(1)
2017/08/15
今日も、ムーズが降りてきた~きみと漫才を~
「ほんとにヘンな童話100選」の(164)
「ジャングル」(1)
昔々まだ人間がこの世に出てきていないときのことです。まだ人間がいませんが、恐竜もいなくなり、今までこそこそ動いていた哺乳類の代表であるサル族が大手を振るようになっていました。
やがて、サル同士の権力争いが起こり、一番強いサルが天下を取るようになってきました。
戦いに負けたサルは服従したり、他のジャングルに移ったりして、とりあえずは平穏に住んでいました。
ある時、あるジャングルにとても強欲なサルがいました。ほしいものがあれば強引に自分のものし、相手が断ると、「月夜の晩だけじゃないぞ」と脅したり、「それなら、他のジャングルに行け」とか暴言を吐くのです。
やがて、ジャングルを自分のものだと公言するようなり、さらに、他のジャングルも自分のものにしたくてたまらなくなりました。
ただ、そのサルがいるジャングルには、穏やかな長老がいてみんなから尊敬されていました。
食べものが少ないときは、みんなで分けあうようにするだけでなく、近所のジャングルにも分け与えることもしました。
時々ジャングル間での戦いが起きることもあるのですが、このジャングルだけはどこからも襲われることもなく平和な毎日を送っていました。
力の強いサルはそれがおもしろくありません。力を持てあましているので酒を飲んでは喧嘩をしたり、また、メスのサルを襲ったり、時には、若いサルを集めては、「狙ったものを手に入れる方法は億万長者に聞け」というタイトルで話をしたりしました。
ある時、雷が落ちてジャングルの木が焼ける事件が起きました。
幸い半分ぐらいですんだので、どうにか食べる分には困りませんでしたが、昔の生活をなつかしく思う者もいました。
そのとき、あの強欲なサルが、「他のジャングルのものをいただこうじゃないか」と若いサルに言いました。
「どうするのですか?」と若いサルが聞きました。「攻め入っていただくのだ」「そんなことをして大丈夫ですか。足らないものをお互い融通しあうというのが長老の考えで、現に他のジャングルから援助してもらっています」
「援助?そんな貧乏くさいことは許さん!それに、毒を盛られていたらどうするんだ。戦って取るのが正義であり、おれたちの流儀だ」
「しかし・・・」若いサルはどうも納得できません。長老やその信奉者である自分たちの親はそんなことは認めないことわかっているからです。
「おれに任せておけ」ボスはそう言うと、ジャングルに住む者を集めました。
そして、「最近の暮らしぶりはどうだ?」と聞きました。
「そりゃ、苦しい。しかし、ジャングルの半分がやられたのだから仕方がない。時を待つしかない」と誰かが言いました。大勢の者がうなずきました。
「そんな呑気ことを言っている暇はないぞ。子供たちはどんどん大きくなる。
立派な大人になってもらいたんだろ?そのためにはたっぷり食わさなければならない。それなのに、わずかなものしか食べさせられないのは恥ずかしいだろう?」
「それなら、どうしろというのですか?」また誰かが言いました。
「よろしい。おれがその回答を教えてやる」力の強いサルは聴衆を見まわしました。