王国

   

今日も、ムーズが降りてきた~きみと漫才を~
「ほんとにヘンな童話100選」の(150)
「王国」
「帰ってきた!」という声が聞こえました。その声は森中に響くほど大きかったので、探していたものは声が聞こえるほうに集まってきました。
「やあ、みんないたのか」と言いながら一匹のスカンクが姿をあらわしました。
その姿を見て大勢の仲間がほっとしましたが、一匹が、「いたのかじゃないよ。どこに行っていたんだ?」と聞きました。、
「おれはもう少しで殺されそうになったんだ。キツネの野郎と鉢合わせして、思わず逃げたとき大きな木に頭を打って気絶したんだ。
もう少しで食べられそうになった。ほれ、ここ。やつがガブリとしやがった」そのスカンクは前足をみんなに見せました。確かにべっとりと血がついています。
「でも、それで気がついて1発お見舞いしてやったので、やっこさん、のたうちまわっていた」
「でも、帰ってくるのが、遅かったじゃないか」
「足をやられたから歩けなかったんだ。木の洞(ほら)を見つけて休んでいたんだ」
「わかった。それで一件落着としようじゃないか」探していた仲間は帰ろうとしました。
そのとき、行方不明になっていたスカンクが、「ちょっと話を聞いてくれ」とみんなを止めました。
みんなが戻ってきました。「木の洞で休んでいるとき、おれは考えたんだ」
「何を?」
「おれたちはこんなにちっぽけだけど、みんなで力を合わせれば、森の王様になれるんじゃないかと」
「王様!王様になってどうするんだ」
「王様になったら、象やライオンなどもおれたちにかしずくようになる。今でも99%のものがおれたちの毒ガスを恐れて襲ってこないが、後1%を制圧すれば、みんなで王様になれるじゃないか」
「でも、おれたちの天敵は空から来るぞ」
「大丈夫だ。おれたちが王様だということが分かったら襲ってこないし、、万が一に備えて、家来がおれたちを守ってくれる」
「そんなにうまくいくのか。のんびり暮らすのが一番いいよ」そう言って、ほとんどのものが帰っていきました。
残ったものは、「どうしたら王様になれるのか教えてくれよ」と近寄ってきました。
「まあ、待て。ゆっくり話してやるから」そのスカンクは得意そうにみんなを見ました。
それから、王様にあこがれたスカンク12匹は、毎日穴を掘りつづけました。
話を伝え聞いた近隣に住むスカンクも手伝うようになりました。夢に賛同したものもいましたが、多くものは暇つぶしだと言っていました。
そして、3年後、象が落ちてもおかしくないほど大きな穴ができました。
大勢集まってきて見学しました。リーダーのスカンクは、「これだけでは王様になれない。後はおれたちの勇気が試される」と演説しました。
つまり、おびきよせなければならないのです。相手が近づいてきても、最終兵器の毒ガスを封印して、穴の上に誘導しなければならないのです。
しかし、大きな穴を掘ったという自信がみんなの心に生まれていました。
「おれがやる」、「おれがやる」とみんなが手を挙げました。
そこで、3匹を選んで、穴のすぐそばにいるように言いました。
すると、いつもなら襲ってこないものが襲ってきたのです。、、
キツネやイノシシ、トラが穴に落ちてしまいました。やがて死んでしまいました。
その噂は、身の中に広がり、スカンクを見ると、みんな逃げてしましました。
フクロウなども、何か新しいことをやるんじゃないかと不安になって、それ以後襲ってくることはなくなりました。
「スカンク王国の誕生だ。みんなよくやった。そして、みんなが王様だ」とリーダーのスカンクが叫びました。
「王様は一人だろう?きみが王様だ」
「いや、いや。みんなで協力したから、王国ができたのだ。おれはそんな男じゃない」と言いました。
王国では多くのスカンクが幸福に暮らしました。「スカンク王国は永
遠に続く」誰もそう思いました。
ある時、リーダーのスカンクが王国を歩いているとき、フクロウの子供がリーダ-を襲いました。リーダーは空に持ちあげられ、すぐに食べられてしまいました。王国のスカンクは全員ちりぢり逃げましたとさ。

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