近所づきあい

   

今日も、ムーズが降りてきた~きみと漫才を~
「ほんとにヘンな童話100選」の(151)

「近所づきあい」
「奥様、おはようございます。ちょっとお聞きしたいことがありますけど、よろしいですか」
「おはようございます。何でしょうか?」
「ここのごみの日は火曜と金曜ですよね?」
「あら、お聞きじゃないの?先週から月曜と木曜に変わりましたのよ。だから、みんな他の場所に行っていますよ」
「そうでしたか。だから、誰もいないのですね」
「先日お宅のご主人をお見かけしまたから、そのことをお伝えしたのんですよ」
「それは失礼しました。主人が言い忘れていたのですね。最近こんなことがよくありましてね。いくら注意しましても、『わかった、わかった』と言うばかりで」
「お忙しいのでしょう」
「親から甘やかされて育ったから、何でもまわりがしてくれると思っているんでしょう。もうあきらめていますけどね」
「でも、ご主人は物知りで、うちの子供たちも、『おじさん、おじさん』と声をかけると、よく遊んでくださいますわ。それに、物知りだから、子供たちも感心しています」
「確かに妙なことはよく知っていますね」
「今はどんなことを研究されていますか」
「研究だなんて。ただ、近所の長老と一日中話をしているだけですわ。そうですね。今は迷信に興味があるみたいですね」
「迷信?」
「ええ。科学的なことだけでは充実した生活はできないとか言って」
「迷信なんて今では無意味なことだと思いがちですが、そこには先祖の知恵がありますから、もっと大事にすべきかもしれませんね」
「奥様まで!」
「たとえばどんなこと?」
「『夜カラス泣くと、誰が死ぬ』とか」
「昔おばあさんが聞いたことがあるわ。おばあさんは怒っていたけど、黒というのは喪をあらわしますから仕方がないわね。それから?」
「四葉のクローバーは幸運をもたらすというのは誰でも知っていますけど、『蓮の葉は不幸を幸福に変える』ですって」
「ほんとに!いいことを聞いたわ。叔父が病気勝ち出ですから、蓮の葉をもっていってやりましょう。あっ、誰か呼んでいるわ」
「町会長さんのようですね」
「女で初めて町会長になったので張り切っているのよ。掘りだしものをゲットしたようね」
「うちのような家にはありがたいわ」
「それはいいんだけど、少しヒステリーだから注意しないとね。あっ、声が大きくなってきた。早くいきましょう」
2羽のカラスは、カーカーと鳴きながら声のほうに急ぎました。

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