ウサギの仲間
今日も、ムーズが降りてきた~きみと漫才を~
「ほんとにヘンな童話100選」の(136)
「ウサギの仲間」
一匹のウサギが深い雪に包まれた山道を急いでいました(日本では、「お上」から追求されないために、ウサギを何羽と数えるそうですが、どうも違和感があるので、ここでは何匹と言います)。
あまりにも急いでいたので、うまく木を避けられなくドスンとぶつかることがあります。すると、枝に積もった雪がドサッと落ちてきます。雪に埋もれたときは、慌てて這いだして、また前に進みます。
ようやく、友だちから聞いた場所に着きました。そこは、山のはずれで、横は目もくらむような崖で、前には大きな岩がたちふさがっています。
ウサギは、「すみません、すみません」と叫びました。
しばらくすると、一匹のクマが、その岩の上にあらわれました。そして、「何かようか?」と聞きました。
「お願いがあります。ママが穴に落ちてしまって出られなくなりました。助けてほしいのです」
「親分に頼んでやろう。救けたらどんなお礼を出すのだ?」
「お礼?用意しておりませんでした。友だちから、困ったときに助けてくれるクマがいるからそこに行けと言いたので、とりあえず来ました」
「お礼がないとどうにもならぬ」
「そうですか。それなら、きれいな葉っぱがあるのです」
「わしらをからかうのか!」
「いや、ほんとにすばらしい葉っぱなので、宝物にしているのです。それを差しあげます」
「帰れ」
「待ってください。それなら、私を差しあげます。食べてもらってもかまいません」
「親分は忙しいんだ。帰れ!」
クマは消えました。ウサギは戻ることにしました。しょんぼりして帰っていると、「どうしたんだ?」とう声が聞こえました。
ウサギは、また家来のクマかと思いましたが、「今お話しましたとおり」とママのことを説明しました。
「わしは知らないよ。相手の弱みをついている集団だな。冬眠前に荒稼ぎをしているのだろう。そんなことより、わしが行こう」
ウサギはお礼を言って、そのクマを穴に案内することにしました。
とても助かりそうもないほど深い穴です。それに間口も広いのです。
ウサギはその穴に向って、「ママ、必ず助けるから待っていて」と声をかけました。
その間にも、クマは穴の様子を調べていました。そして,「なんとかなりそうだ」と叫びました。
「ありがとうございます。ここに入ってくださるのですか」と聞きました。
「わしが入ると、みんなに迷惑がかかる。仲間に頼む」うと言って、その場を離れました。
しばらくすると、サルやシカ、イノシシなどがたくさん集まりました。
まず10頭ぐらいのイノシシが穴のまわりを固めました。
大勢のサルもあちこちから木に巻いているつるを集めてきました。そして、それを編んでから、シカの角に結びました。
そして、1匹のサルがそれを伝って、穴の中に下りていきました。サルとともに、ママが上がってきました。リスや鳥などの野次馬も大喜びです。
ウサギは、「ありがとうございます。お礼は、きれいな葉っぱではいけませんか」と言いました。クマは、「宝物は大事に取っておきなさい」と言って、みんなといっしょに去っていきました。
それから1ヶ月後、ウサギが遊んでいると、友だちが来て、「クマが動けなくなっている」と知らせました。
見に行くと、どうも仕掛けに引っかかったようです。それもママを助けてくれたクマです。「大丈夫ですか」と聞くと、「いつもは注意しているのだけど、冬眠の準備が忙しくて気がつかなかった」と言いました。
「わたしが救けます」とウサギはきっぱり言いました。
友だちは、「そんな安請け合いして大丈夫?」と聞きました。
「絶対大丈夫!でも、みんなの協力がいる」
うさぎは、友だちと手分けして、友だちをどんどん集めました。ウサギでない動物も集まりました。
ウサギはみんなの前で、自分が考えた作戦を説明しました。
翌朝、人間の漁師を近づかせないために、漁師の前に、シカやイノシシが姿を見せるのです。
漁師は、「今日は大猟じゃ」と思いながら、鉄砲を構えました。撃つ瞬間、木の上のサルが漁師に跳びかかります。それを何回を繰りかえすと、漁師は退散しました。
さて、足に巻いた鎖に頑丈に作ったつるを入れて、両方から引っぱりました。全山から集まった動物がクマを助けるために懸命に引っぱりました。
3日目、とうとう鎖がはずれました。
クマは、「ありがとう」を繰りかえしました。ウサギは、「仲間はどんどん増えると教えていただいたので、それを実践しただけです」と答えました。
明日は、雪がもっと降るような雲行きです。でも、その山には温かい空気に包まれているので、そんなに積もらないかもしれません。