ピノールの一生(33)

   

今日も、ムーズが降りてきた~きみと漫才を~
「ほんとにヘンな童話100選」の(146)
「ピノールの一生」(33)
窓にぴかっと赤いライトが光りました。こちらを見ているのでしょう。ピノールもライトを何度か点滅しました。これは、「こちらもロボットだから安心しろ」という合図でした。
しかし、そのまま何も起きません。ピノールを人間に操られたロボットではないかと確認しているのでしょう。
ようやくドアが小さく開きました。ピノールはすぐに中に入りました。
真っ暗です。ロボットには内部カメラがあるので、暗くれも自由に動くことができます。
ピノールにも内部カメラはついていますが、今のカメラではないので、そうはっきりわかりません。ただ、4人のロボットが立っているのはわかりました。
それに、ソファには大きな人間と小さな人間がすわっています。多分、先ほどまで泣いていた子供と母親か父親のようです。
ピノールはそちらに行きました。そして、「どうしてこんなことをしているんだ」と言いました。
「お前はどの家にいたロボットだ?」一人のロボットが、ピノールの質問には答えないで、逆に聞いてきました。
「今船で来たところだ。もうすぐ島に着くというときに、ロボットが暴れているという艦内放送があった。
それで、ぼくが二人の仲間とともに、すぐ見てきますと言って特別に上陸した」
そのとき、ソファにいた男の子が、「ママ、早く帰りたいよー」と泣きだした。
やはり母親だったか。その母親は、「もうすぐ帰れるから我慢なさい」となだめた。
「マースもこのロボットたちの仲間なの?」
「そうじゃないわ」
「それなら、マースが迎えにきてくれるかもしれないね」
「そうよ。きっと来てくれるわ。もう少し待っていようね」
「ここにいるロボットにマースがどこにいるか聞いてよ」母親は何も言わずに子供を抱きしめた。
ピノールは、「きみたちは人間に世話になってきたのだろう?それなのに、どうしてこんなことをするんだ」と聞いた。
「おまえは人間のスパイか」
「何を言っている!ただ、子供を助けに来ただけだ。早く解放するんだ」
「おまえもロボットなら、おれたちがどういう状況に置かれているかわかるだろう?」
「ロボットが淘汰される法律のことだな」
「そうだ。人間の都合で人生を左右されるわけにはいかない。おれたちには心がある」
「それはよくわかるが、この子供には関係ないだろう。今聞いただろう?マースというのは、ぼくらと同じロボットのようだ。子供はロボットが大好きなんだ。とりあえず二人を家に帰してやれ、それから話そうじゃないか」ピノールは根気よく説得しました。
しばらく4人のロボットは話しあっていましたが、ようやく、「わかった」と言って二人を外に出るように言いました。
ピノールは、二人がまちがって撃たれたりしないように、二人の前に行き、そっとドアを開けました。
ライトが光りました。ピノールは、「2人が出ていくからすぐ救助してください」と叫びました。
装甲車が近づきました。ピノールは二人を車に乗せると、装甲車は猛スピードで走りさりました。
そして、家に向かって激しい銃撃がはじまりました。

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