ピノールの一生(31)
今日も、ムーズが降りてきた~きみと漫才を~
「ほんとにヘンな童話100選」の(143)
「ピノールの一生」(31)
船に乗ると3人は大歓迎を受けました。ある紳士が来て、「いや、ありがとう。ほんとに助かったよ。この船には避暑に行く家族連れがも多いので、もしあいつらが人間を人質にすればパニックになるところだった。
きみらがさっさと片付けてくれたので、何事も起きなかった。ロボットを取りしまる法律はもっと早く作るべきだったなあ」と声をかけてきました。
しかし、「あなた。この人たちもロボットですよ」と奥さんに注意されると、顔を赤くして「いや、いや。悪いロボットという意味だよ」と弁解する始末です。
「そうだ、悪いのはロボットにも、人間にもいますからね」紳士の友だちがその場を取り繕いました、
ロボットは眠る必要がないので、裕福な家族に付き添っているロボットでも、夜間は船底の部屋にいなければならないのですが、船長は、3人にを見晴らしのいい部屋をあてがいました。
ピノールは、「みんなと一緒の部屋にしてくれませんか」と頼みました。しかし、船長は、「乗客のみなさんが感謝の気持ちから、ぜひそうしてくれと言われるのだから、遠慮しないでゆっくりしなさい」と言いました。
パーティには必ず3人が招かれました。「あなたたちがいてくれたから、楽しい休暇が送れそうだわ」、「おいしい料理を楽しんでくれ。あっ!きみらは食べなくてもよかっただな。何かほしいものがあれば遠慮なくいってくれたまえ」
大人も子供も次々と3人に声をかけてきました。
食事が終わると、今度はダンスの時間です。3人は、見よう見まねで覚えて、遅くまで相手をしました。
3人が踊っている間、3人に冷たい視線を送るものがいました。給仕をしているロボットたちです。「どうしてこいつらだけがちやほやされるのだ」と思っているのです。
ピノールも、ロボットのウエイターがわざとぶつかったりしてくるのが分かっていました。
中には、「同じロボットの裏切ったな」と耳元で言うのもいました。
3人になると、ピノールは、「もうパーティに出るのはよそう」と言いました。
「どうしてだい?」相棒のティートが聞きました。ピノールは説明しました。
「気にするなよ。あいつらが人間に減に危害を加えようとしていたからだよ。人間は感謝している。遠慮なく好意を受けたらいいのだ」
「『襲ってきたロボットも、人間に抗議したいだけであって、危害を加えるつもりはなかっただけなのだ』というウエイターもいたのが気になっているのだ。
ぼくらも抗議したけど、言う勇気がないと思うと、頭が混乱してくる」
エトーレは、「ピノールは何をするためにここにいるんだ?」と聞きました。
「もちろん、モイラを助けるためだ
「そうだろう。それなら、このチャンスを生かして、情報を集めるべきだよ」と言いました。
「わかった。ありがとう」
「後二日でヘブン島に着く。これから、ヘブン島の情報を分析して作戦を立てよう」兵士だったエトーレは提案しました。
3人は、それぞれ人間から聞いたヘブン島の情報を発表しました。
それによると、ヘブン島は、有数の避暑地なので、世界の富豪が集まっている。しかも、そう大きな島ではないので、新しい別荘を作ることはできない。
つまり、人間だけじゃなくて、ロボットも顔なじみで、見知らぬ人間とロボットはすぐに分かるというのです。
「ケイロンはいるのだろうか?」
「それもそうだが、ぼくらも目立つな」
そのとき、船内放送がありました。「ヘブン島でロボットが暴れていると」という内容でした。
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「ほんとにヘンな童話100選」の(144)
「ピノールの一生」(32)
「ロボットが暴れている?どういうことだ。あそこにいるロボットは裕福な人間が連れてきたものだから、そんなことはしないはずだ」ピノールが叫びました。
「それなら、ケイロンたちの仕業か」相棒のチィートが答えました。
「ケイロンは隠れていたいのに、わざわざそんことをするだろうか」以前ケイロンの家来だったエトーレは疑問的な答えです。
そのとき、ノックがしました。この船の船長が慌てて入ってきました。「今、聞いたでしょう?ヘブン島で大勢のロボットが暴れているようです」白いひげの船長はピノールたちに丁寧に言いました。ピノールたちが人間を助けたので信頼しているのです。
「そうらしいですね。今どんな状況ですか?」ピノールが聞きました。
「人質を取っているようです」
「そんなことを!」
「自分の飛行機やヘリコプターで避難する人間もいます。ほら!ヘリコプターの音がしているでしょう?『この船に降りてもいいか』という連絡が来るのですが、個人の飛行機やヘリコプターは禁止されているので断っています」
「操縦に慣れていない人間は、夜間は危ないな」
「海に降りる装置はついていると思いますが、とにかく島のことが心配です」
「わかりました。ぼくらもこんなことははじめてですが、できるだけのことはしますので、上陸させてください」
「今待機命令が出ているので、これ以上近づけません。もしロボットがこちらに飛んで来たらと思うと生きた心地がしません」
「子供も多いから心配ですね。それじゃ、ボートを貸してください」
「それはいいですが大丈夫ですか。かなりのロボットが暴れているということですから」
「同じロボットですから、何かできるかもしれません」
3人はボートに乗り込みました。島まで10キロ以上ありそうです。
空には飛行機やヘリコプターが飛びまわっています。海面に降りた飛行機やヘリコプターのライトが見えます。
その間を通って猛スピードで進みました。2キロまで近づくと止まりました。あちこちで大きな音がします。警察がロボットを攻撃しているのでしょう。
しかし、ここに来ているロボットは従順な召使いとして設計されているので、ロボットを破壊するような武器は用意されていないはずです。
「それじゃ上陸して音がするほうに行ってみよう」ピノールが提案しました。
「少し遠回りして行ったほうがいい。警察に見つかると厄介だからな」戦術にたけているエトーレが忠告しました。
3人は注意しながら上陸しました。それから、音がする場所から遠く離れたほうに行き、それから警戒しながらその場所をめざしました。
ところどころ警察の車が止まっていました。ただ、あちこちで音がしていますから、1か所にいる警察官の数はそう多くはないでしょう。
かなり近くまで近づきました。警察が、「人間を解放せよ!」と叫んでいます。
しかし、中からは何の反応もありません。
ロボットの体は頑丈©普通のピストルぐらいでは弾を跳ね返してしまうし、食べることも眠ることも必要がないので、警察として厄介です。
人質なのでしょうか、幼い女の子の泣き声がします。「早く助けないとたいへんなことになる。ぼくが行ってくる」ピノールが言いました。
「3人で行くより1人のほうが相手は興奮しないだろう。それなら、もし警察に見つかった場合は、陽動作戦でぼくらが警察の注意を引くから」エトーレが声をかけました。
ピノールは体をかがめて家の背後に近づきました。やはり見つかったようです。「いたぞ!」という声がしました。
すると、エトーレとチィートは大きな音を立てて走りだしました。「待て!」という声がすると、二人を追いかけました。
ピノールは、その間にカーテンが下りている窓を激しく叩きました。
そして、「おーい。開けてくれ。ぼくもロボットだ」と叫びました。