シーラじいさん見聞録
シーラじいさんはカモメからの報告を受け、みんなを集めた。「オリオンはまだ十分回復していないはずだが、クラーケンがまだいると見て、オリオンを使おうとしているのじゃろ」
「ぼくらも行ってもいいですか」リゲルが頼んだ。
「そうじゃな。ただし、ヘリコプターや船が騒がしくしている場所には近づくな。クラーケンがいるということじゃ」
「わかりました」リゲルは答えて、どうするか指示した。「オリオンがいる場所までは遠い。それで、しばらくは、距離を開けて進むことにする。もしクラーケンの部下などがいれば、すぐに連絡してくれ。それから、ミラは背後を守ってくれないか」
「よしきた。何かあったら、ぼくに連絡してくれ。クラーケンとニンゲンが戦っていれば、その隙にオリオンを助けるチャンスがあるかもしれないから」と言った。
「そうだな。それじゃ、行こう」リゲルが号令をかけた。。
カモメがホテルのベランダの窓から中に入ってきた。24時間少し開けているので、いつでも部屋に入れるようになっていた。
イリアスはすぐに気づいて、部屋の明かりをつけた。ほかの部屋にいる者も起きてきた。シーラじいさんの手紙を持っていなかったが、カモメの様子から何かあったなとわかった。アントニスとイリアスは、「オリオンが連れだされたのか」と聞いた。カモメはうなずいた。
「海へか」カモメはうなずいた。
みんなはすぐにベランダから外を見た。しかし、すでに時間が立っているためか、いつも同じ夜景が広がっていた。
「少し見てくるよ」ジムが言った。「ぼくも行く」イリアスもついていこうとした。
「二人ともやめなさい」ミセス・ジャイロが叫んだ。
「そうだ。今は目立つ行動は取らないほうがいいい」アントニスも冷静に言った。
「軍事が絡んでいる場合に捕まったりすると時間がかかるよ」新聞記者だったダニエルも忠告をした。
みんなに説得されて、ジムは、「悔しいなあ。もう少し早く知らせてほしかった」と言った。
「オリオンは大丈夫よ。クラーケンを捕まえるためとしても、ニンゲンはオリオンを絶対守らなければならないから。
それに、オリオンはあなたが知っているとおり、勇気と意思は、ニンゲンも含めて、地球上でかなうものはいないと言っているじゃないの」ミセス・ジャイロの言葉にジムは黙った。
「オリオンを早く助けるために、今はオリオンの帰りを待とうじゃないか」アントニスはジムを慰めた。
ペルセウスたちは急いだ。確かに船が増えている。しかも、このあたりで見たこともないほど大きな船もいる。いよいよニンゲンがクラーケン捕捉作戦をはじめたのだ。それにオリオンが使われている。何としても助けたい。ペルセウスの体は震えた。
「みんな、別れて進もう。カモメは、オリオンの船の上を飛んでいて、合図を送ってくれるはずだ。
しかし、ヘリコプターの音がうるさいので、鳴き声は聞こえにくいから、別れたほうが見つけやすい」
「了解」友だちとその仲間も飛びだした。
ペルセウスも、サウサンプトン水道のほうに急いだ。あちこちに船影は見えるが、オリオンがいる船とはちがうようだ。
ヘリコプターが増えている。ペルセウスはスピードを落とし、様子を見ながら進むことにした。
そのとき、「ペルセウス!」と誰かが呼んだ。「ここにいるぞ!」すぐに答えた。「船を見つけた」、「よし、そちらに行く」
声がするほうに急ぐと、友だちとその仲間が集まっていた。
「あそこだ」船影が重なっているのようだ。
「ヘリコプターをめざして一直線で来た。すると、きみが言っていたように、数隻の船に守られている船があった。それで、きみに見てもらおうと思って待っていたんだ」
「確かにそうだ。少し見てくるから、ここで待っていてくれないか」ペルセウスは、そう言って、一人で進んだ。
100メートルぐらいまで近づいたときに、4、5隻の船は一斉に止まった。
やがて、四角い箱が持ちあげられるのが見えた。そして、それはすぐに下された。
今度は、檻のようなものが吊るされたまま、どんどん伸びてきた。船の外10メートルぐらいになると、それが、海に下された。上部は海面の上にあるが、ほとんど見えなくなった。
檻の下部は見えなくなっている。多分、水が溜まるようになっているのだろう。
あそこにオリオンがいるのかと思い、もう少し近づこうとしたが、船が動きだした。
すぐに行こうと思ったが、何か仕掛けがあるかもしれないと思った。
リゲルは、カメラというものが海の中を映していると言っていた。クラーケンを捕まえようとしているのだから、カメラがあるにちがいない。
ペルセウスはしばらく考えた。ニンゲンは、クラーケンというものは海の底から突然襲ってくると思っているだろう。
それなら、カメラは海の底を向いているにちがいない。よし、できるだけ海面を進んで、檻の上に登ることにした。
幸い海面は真っ暗だ。しかし、、用心に越したことはない。波を立てないように進んだ。
檻に触れる場所まできた。そこで、少しジャンプして檻の上に乗った。
体に力を入れて、その反動で少しずつ前に行った。真ん中には、船と結びついているものある。そして、そこは少しくびれている。
ペルセウスは、そのくぼみに入りこんだ。そして、「オリオン!」と小さな声で言った。