今日も、ムーズが降りてきた~きみと漫才を~

「夢」
この前親戚が集まった。最近は冠婚葬祭がようあって、別にめずらしいことでない(女房側の親戚で、ぼくのほうは壊滅状態や)。
女房は4人兄妹で、家(うち)に子供が4人いるもんやから、多少張りあう気持ちがあってか、それぞれ4人いる。
親の人生が一段落すると、今度は子供のことが出てくる。
自分の子供は頭一つ抜けた思う親は自慢話をせんでも、みんなの親=祖母を介在して、親戚中に伝わる(祖母にとっては、みんな孫やからな)。
それで、ボストン美術館のインターン、ロシアで活動しているバレリーナなどになっている甥や姪がいることは知っているが、こっちは、父親であるぼくが倒産するわ、二人の息子が仕事はしているが家から出てゆかんわなどの悲惨な状況なので、ぼくにはあまり子供のことをゆわんような気がする(僻みやろか)。
義父には出世頭とゆわれたこともあったのに、こんなことになったもんやから、ほんまはいややけど、しぶしぶ顔を出す。
出したからにはがんばります。顔で笑って、心で泣いて、今日も見せます、へんなおっちゃんぶりを。
「東京で役者やっているらしいな?」
「でも、舞台やテレビの仕事はまだ少ないから、バイトが多いねん」
「どんなん?」
「この前、賢島の温泉レポーターをやってきた」
「『撮影のためにバスタオルを着用しています』ちゅうやつか」
「そうです。その下は水着」
「そうか。早うタオルを取って水着の写真で売れるようにならんと」
「やらしいわ」
「あほか。一流とゆわれている女優は、みんな水着も取っているんやで」
「・・・」
「関根恵子も、今は高橋恵子か、湖ですっぽんぽんになったし、宮沢りえ、左下腹に大きなホクロがある樋口可南子、みんなそうやろ。最近はバレリーナの草刈民代のヌード写真が新聞に載っていたやろ。
そうそう、マドンナも売れる前にヌードになっていて、その写真が「プレイボーイ」に載って、興奮したもんや。
日本でも、淡谷のり子が歌手になる前に絵のヌードモデルをしたんやで。その写真は見たことないし、あってもあんまり見たくないけどな。
水着になってとゆわれたら、おっちゃんがプロダクションを作ったるわ。そうやな、『イエローキャブ』の向こうを張って、『イエローちゃぼ』はどうや」
「お義兄さん、もうやめてよ。その気になったらたいへんやから」
ぼくと仲がええ義妹は、自分の娘のためにぼくを制したけど、これから、かわいい姪のために大事な話をしようとしたんやけどなあ。
夢が叶う人間なんて、何十万人に1人ぐらいやないか。つまり、ほとんどのもんは夢破れた人生を送るわけや。
もっとわかりやすくゆえば、温泉で水着を脱いでとゆわれるスターも、自分で脱いで温泉に入る素人も、見た目はいっしょでも、本人の心はだいぶちがうとゆいたいわけや(まだゆうか。それに、ややこしくなっているし)。
つまり、人生では、夢をあきらめた後に、どう生きるかが大事になってくる。その夢に命を賭けていた人ほど(昔からどうゆうことか疑問に思うているが)、やけくそになったり、僻みっぽくなったりすることがあるかもしれん。
子供には、とりあえず夢に向ってがんばってもらいたいが、親は、子供が夢をあきらめたときにどうアドバイスをするかを考えておくことが大事や。
ぼくの場合、この年で見果てぬ夢を追いかけていることと、30過ぎの長男と次男に、結婚する夢をもてとゆわんとあかんのは恥ずかしいけどな。

 -