ユキ物語(24)

   

今日も、ムーズが降りてきた~きみと漫才を~
「ほんとにヘンな童話100選」の(238)
「ユキ物語」(24)
おれは足が痛くてこれ以上我慢できなかったのでウサギを連れてどこかでひっくりたかった。
しかし、老人が頭を下げるのでそうするわけには行かない。こちらもきっちりと立って頭を下げた。
それにしても、ここまで来るまでの間、枝つきは仲間同士ではキーン、キーンなどという声で話をしていたから、どうようにおれとこいつらは意思疎通ができるのかと思ったが、老人が言っているのがちゃんと分かったのには驚いた。
しかし、おれが言うことが通じるかどうかはわからないので黙っていた。疲れてていることもあったが。
とにかく、こっちへ行けとかそこを下りろとか言ってくれれば、それでいいのだ。指示どおり行ってから、ウサギと休むことにしよう。
その時、「それでは、こちらに」にいうようにおれたちを案内するような声が聞こえた。
帰らしてくれないのか。おれは内心有難迷惑だと思ったが仕方がない。ついてきたおれたちが悪いのだ。
すると、低い木に囲まれた寝室のような場所に案内された。屋根までついていた。ここなら、ウサギは空から襲撃されることはない。それに晩餐付きだ。
ウサギはそれに一目散に走っていってがつがつ食べつづけた。何かの木の実だろうが、よほど腹が減っていたと見える。
おれに用意されていたのは、何かの肉のようだ。おれたちは急に来たのだから、日頃から用意されているものか。
おれも腹が減っていたが、とりあえず臭いを嗅いだ。腐ったりはしていない。
おれは少しずつ食べた。初めての味だ。まずくはないが、なかなかひきちぎれない。しかし、ありがたい。ウサギはと言えばまだ食べている。
今日はここで休むことにある。明日は山を下りよう。ゆっくりしていけと老人が言っても断ろう。そう決めると一気に眠たくなったようで意識がなくなった。
寒くなって目が覚めた。しかし、頭がぼっーとしていたので、どうしてこんなところにいるのか昨日のことを思いだした。徐々に思いだした。そうか。足が痛いのはそのためだったのか。
しかし、そんなことを言っておれない。今日はウサギの親を探してから町に帰る。
おれは外に出てみた。まだ薄暗い。遠くの山は雲のようなもので覆われている。雨か。しばらく見ていると、山の上が赤く染まってきた。
「これは太陽だな。すると雨が降ることはないな。でも、きれいなものだ。ウサギにみせたやりたいな」そう思っていると、がさがさと音がしたので振り返ると、ウサギが近づいてきた。
おれは、「ちょうどよいところにきた。そこを見てみろ。雲が真っ赤に染まっている。きれいだろ?」と大きな声で言った。
ウサギはと言えば、しばらく見ていたが、そう驚くような様子を見せていなかった。こんな光景は見なれているためか、それとも、自分の目が赤いために世の中がいつも赤く見えるためか分からなかったが、おれのそばでじっとしていた。
太陽はいつもの色になりはじめていた。その色を見ると、現実が頭に戻ってきた。「ウサギよ。今日からいよいよ山を下りるぞ。おまえの親も心配しているはずだから、がんばろうな」と声をかけた。
「ここにいましたか?」老人の世話をするものがあらわれた。
「朝日がきれいなので見ていたんですよ」おれは挨拶した。「そうでしたか。今日はいい天気ですよ。朝食の準備ができていますのでどうぞ」
おれは礼を言って寝室に戻った。そこには昨日以上に木の実や肉が用意されていた。おれたちが食べおわったとき、例の老人があらわれた。

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