ピノールの一生(17)

   

今日も、ムーズが降りてきた~きみと漫才を~
「ほんとにヘンな童話100選」の(127)
「ピノールの一生」(17)
20分ほどすると、大きな影と、その3倍も大きい影があらわれました。2人は立ちあがり、二つの影を迎えました。
「今、息子から聞きました。困ったことになりましたね。先を急いでおられると言うことですから、わしの背中でお運びします」親のクジラはやさし言いました。
「ありがとうございます。もうだめかと思いましたが、息子がさんが見つけてくれました」ピノールが答えました。
「一人でうろうろするなと注意していますが、お役に立つこともあるんですな。それじゃ、わしの背中にお乗りなさい」
2人は山の頂上のそばまで来てくれたクジラの背中につかまりました。
クジラはゆっくり動きだしました。子供のほうは2人が落ちないか見るためか、後ろからついてきました。
ぐんぐん上に上がりました。2,30分ほどすると、海は明るくなってきました。
親のほうが、「もうすぐ海面に着きますが、どこに行けばいいのでしょう。近くには島はありません。船を探しましょうか」と聞きました。
そうだった。どうしよう?2人は顔を見合わせました。すぐに返事がないのを知ると、親のクジラは、「それなら、陸が見える場所までお送りしましょう。わしらはこんな体ですので、近くまではいけませんが」
「そうしてもらえるとありがたいですが、島があればそれでもかまいません」
「わかりました」
クジラの親子は2人のロボットを乗せてどんどん進みました。しかしどこまで行っても海以外見えません。
申しわけない気持ちがしましたが、2人にどうしようもありません。しかも、ピノールの体がどんどん錆びできました。相棒が一生懸命錆を取ってやりましたが追いつきません。
しまいには体が動かなくなってきました。
「ぼくを海に捨ててくれたまえ。きみがモイラを守ってくれないか」とピノールは弱々しい声で頼みました。
「何を言っているんだ!ぼくは君の足を借りている。ぼくらは、2人で1人前のロボットだ。
それに、クジラの親子がぼくらを助けようとしている。ここでがんばらなくては、ゼペールじいさんに作ってもらった甲斐がないよ」相棒はピノールを励ましました。
「ピノールさん。わしらもがんばりますから、もう少しの辛抱ですよ」、「パパに任せたら大丈夫だよ。パパは世界中の海を回っているんだ。もうすぐ、また旅に出るから、ぼくも、今のうちにいろいろ教えてもらっているんだ」親子のクジラはピノールに声をかけました。
ピノールは泣きそうになりました。ロボットが泣くなんてみっともないと思って、「みんな、ありがとう」と笑顔で答えました。
そのとき、どこからクジラがあわてた様子で近づいてきました。ここの子供ぐらいです。
そして、「友だちがシャチに襲われているんです。すぐに助けてください」と叫びました。
「よし、連れていけ」父親は叫びました。「そうだ。お二人は息子の背中にいてください。すぐに戻ってきますから」そう言って、どこかの子供と急いで行きました。
そちらを見ていると、何やら近づいてきます。あっ、こちらに来ている!子供が叫びました。
子供のクジラを、5,6頭のシャチが追いかけてきました。ピノールたちの近くまで来たとき、1頭のシャチが子供を襲いはじめました。
ピノールは思わずその大きな口めがけて飛びこみました。
それに驚いたのか、他のシャチは逃げてしまいました。すると、ピノールを口にいれたままのシャチも仲間の後を追いかけました。

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