おばけカフェ
今日も、ムーズが降りてきた~きみと漫才を~
「ほんとにヘンな童話100選」の(149)
「おばけカフェ」
「まみちゃん。どうしたんだ?、まだ仕事中だろう」マネージャーが、控室に来たまみに聞きました。
「マネージャー。帰っていいですか」
「また喧嘩したのか。おまえは自分の意見を押しとおすからな」
「いいえ。ちがうんです」
「それなら、客にいやなことをされたのか?」
「お客さんのことですが、お店に入ってきたのが元カレなんで」
「昔のことなんだろう?わかりっこないよ」
「でも、横について話をしていると、切なくなりますから」
「じゃあ。別の子に相手させるよ。それに、うちはキャバクラじゃないんで、注文を聞くだけで何もしなくていいじゃないか」
「お店にいるというだけで、辛いんです」
「おまえは、元カレに振られて自殺したのか」
「いいえ。確かに死にたいとは思いましたが、すぐに病気が見つかって死にました」
マネージャーは、「わかった、わかった。それじゃ、明日の休みを今日と変更するということに、明日は出勤だぞ」
「ありがとうございます」まみは、そういうと急いで帰りました。
すぐに、スタッフ主任の沙織ちゃんが来たので、「まみのことか?」と聞きました。
「いや、ちがうんです。客が『責任者を出せ』と騒いでいるんです」
マネージャーが、店内に行くと、沙織ちゃんが教えた客に近づきました。40代の男がソファにすわっていました。
マネージャーは、「いらっしゃいませ。私が責任者です」と挨拶しました。堂々と対応するのが一番大事だと先輩のマネージャーから教えられているので、相手の目を見て、大きな声で言いました。
男は、「ここはおばけカフェだな」と聞きました。
「そうです。それが何か?」
「今、何とかカフェとかいうのが流行っているから、それに便乗しただけじゃないのか。しかも、おばけというのは詐欺じゃないのか」
「お客さん、カフェに便乗はしましたが、詐欺ではありません。みんな正真正銘のおばけです」
「正真正銘?証拠見せろよ」
「証拠ですか。みんな一度死んでから、また働けるようになったということですかね。あなたも一度死んだらわかると思います」
「馬鹿なこと言うな。こんな店二度と来るか!」男は、ドアをばたんと閉めて出ていきました。
「じゃあ。後を頼むよ」マネージャーは、沙織ちゃんに言って、控室に戻りました。
「もう死にたいよ」薄暗い店のどこかで声が聞こえてきました。
「お客さん、そんなこと考えないでください。死んだら終わりじゃないけど、次の人生では後悔しなから過ごさなくてはなりませんから、今全力を尽くすのだ大事ですよ」声をひそめていますが副主任の久美ちゃんのようです。
しばらくすると、またノックがしました。スタッフ主任の沙織ちゃんです。
「今日は忙しいな。今度は何だい?」マネージャーが聞きました。
「バイトをしたいう女の子が来ています」
「勘違いしてきたんだな。呼んでくれ」
すぐに二十歳前後の女の子が入ってきました。少し緊張していますが、穏やかな様子です。
マネージャーは、「バイトをしたんだって」と聞きました。
「そうです。人生について学べると聞いたものですから」
「でも、きみはこの世で生きているじゃないか」
「もちろんですです」
「それじゃ、だめだ。死んでいなければならない」
「死んだら終わりじゃないですか!」女の子は少し興奮して言った。
「まあ、そう思うだろうな。ぼくも生きているときはそう思った」
「ちがうんですか?」
「一度死んだらわかる。ただ、死んだときの年から次がはじまるけど、ここでバイトできるかはわからないよ。ここは25才までの年令制限があるから」