熱中症

   

今日も、ムーズが降りてきた~きみと漫才を~

「熱中症」
今、この辺りは、都市ガスの配管工事の真っ最中や。長年、「人口増加率日本一」の町やったから、当然ニュータウンは都市ガスやけど、郊外は今なんや。
店の前も、熱中症が頻発しているときに工事をした。
見るとはなしに見ていると、まず舗装をカットする線をつけて掘る。小さいクレーンで土をすくい、ダンプカーで運ぶ。そして、配管の段取りをして埋める。
バンバンと土をならして、アスファルトをはる。そして、消えてしまった「止まれ」などの字や、ガス管があることなどスプレーで書く(今度は、別の業者が全体を舗装するのか)。
国道の裏道やけど、通学路になっているから、人も車も多い。道の両側に家や店があるから、人や車の出入りもある。交通整理員も10人ぐらいいる。
とにかく、手際のよさはほれぼれするようやった。今までは、道路工事に遭遇すると、邪魔になる、この・・・めとか思うたけど、ぼくがこうゆうことになって、作業をしているもんが気になるようになった。
それどころか、顔馴染みまでできて、どこかの現場で会うと、待つ間に一言、二言話をすることもある。
昔、近所で道路工事があると、背中を押されたら穴に落ちるぐらいのところで、ずっと作業を見ているおじいがいたけど、どんどん仕事が進んでいるのが楽しかったのやろな。
隣の化粧品屋のママに、「うるさいやろ」とゆうと、「ときどきドアから見ているけど、ほんまに感心する」ゆうていた。
思うように商売が進まない人、人生でつまづいた人、やりのこしたものがある人は、道路工事を見ると、元気が出るのやないか(「キッザニア」ではなくて、「アダルタニア」や)。
事業をやめざるをえなくなったとき、自分を責める気持ちから、自分を恥ずかしい目に合わすために(もちろん収入もいる)、交通整理員をしようと考えた(映画「剣岳」の監督したカメラマンも一時そう考えたらしい。黒沢明に信頼されたカメラマンも、キャメラマンとゆうけど、時節柄、仕事がないらしいな)。
腰まで毛ぃを伸ばしているおっさん、150キロはあるおっさんやおばはん、「こまどり姉妹」のような化粧をしているおばはんなど、いろいろいる。
そして、大概のもんが、日焼けでえらいことになっている(今年ほど黒くなっている年はない。黒を通りこして、インディアンのように赤黒くなっているもんもいる。皮膚がんが心配や)。
そして、車から、「早よ行かさんかい、ぼけ」ゆわれることもあるやろ。事故でも起きると、またややこしいことになるやろな。
多分、会社でも、どこでも、一番初めにはじかれた人生を送ってきたかもしれんが、何をゆわれても、じっと我慢しているはずや。
ぼくはでけん。緊張しいやから、5分おきにおしっこに行きたくなる。どなられたら、まちがいなくつかみかかる。今までばかにしてきたけど、がんばっている姿を見ると、何だが出るときがある。
数日前、廃品回収のチラシが入っていたから、使わないバイク1台、自転車2台を頼んだ。二十歳前後の男の子が軽トラで来た。礼儀正しくて、汗ぶるぶるで、ジュースをやったら喜んでいた。耳に補聴器をつけていた。涙が出た。
知的障害や、重い病気の子供をいっぱい知っているが、どの親も、自分の子供が仕事をすることなど考えられないようで、「子供が行っている施設で、お菓子を作るようになったら」というのがせいぜいや。
廃品回収の男の子は、がんばっているのやから、ぼくが泣くことはない。別に哀れんでいるわけではない(ひょっとして、小遣い稼ぎをしている大学生かもしれんしな)。
いや、少しは哀れんでいるかもしれん。親はどう思うているのやろかということもある。
暑さにも、他人の目にも耐えている、同世代の交通整理員を見ても、補聴器をつけた廃品回収の男の子を見ても、そして、自分のことを見ても(人には言えんけど)、涙が出る。
すぐ涙が出る、そして、その理由が絡みあっているのは、熱中症の症状やろか。
涼しくなったらわかるやろけど。

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