神と3人の娘

   

今日も、ムーズが降りてきた~きみと漫才を~

「ほんとはヘンな童話100選」の(6)
「神と3人の娘」
人間を作った神は頭を痛めていました。最近、人間は好き勝手なことをしはじめて、収拾がつかなくなっていたからです。みんなで決めたことを守らなかったり、人間を助けるための動物を殺したりしていたのです。
そこで、自分の娘3人を人間に嫁入りさせることにしました。娘それぞれに、子供ができれば、人間とはどういうものか、どう生きるべきかを教えることができると考えたからです。
神は、娘たちを前に言いました。
「人間を、わしらとよく似た形に作ったが、心まで考えなかった。そこで、おまえたちは、わしが選んだ人間と結婚してもらいたい。そうすれば、人間はよくなると思う。
ついては、嫁入り道具として、相手の心がわかる能力をやろうと思うがどうじゃ?」
長女のアレクは喜びました。「お父様、それはとてもありがたいですわ。私たちに似ているとはいえ、高貴な心は持っていないでしょう。下劣なことを考えていることがわかれば、前もってその場を離れることができますもの」
次女のメガイラも答えました。「お父様、わたしには、半分の能力にしてください。全部わかるとおもしろくありませんもの」
三女のアストレアは最後に言いました。「お父様、わたしには、そのような能力がいりません」
神は、「大丈夫か?」と思わず聞きました。
「大丈夫です。全部でも、半分でも、相手のことを先に知ってしまうのは失礼だと思いますから」
そうして、3人の娘は、父親が決めた人間に嫁ぎました。
10年立つと、父親は、娘たちに一度帰ってくるように言いました。話を聞きたかったのです。
長女は、「夫の考えていることがみんなわかるので、夫も、お付きのものも、よくできた嫁だと思っているでしょうが、退屈で仕方がありません」
「メガイラはどうじゃ」
「半分はわかりますが、後の半分がわからなくて、いらいらします。それで、最近は頭痛がひどくなりました」
「アストレアはどうかな?」
「夫が何を考えているか悩むことがありますが、夫も、困るとわたしに相談してくれるのでうれしく思います」
「そうか。人間は思ったよりうまくできているかもしれないな」
長女のアレクはあわてて言いました。「でも、人間は退屈すぎますわ。何でもまわりのものがしてくれるので、何もすることがありませんもの。それで、夫は、退屈しのぎに戦争でもするかと考えることがあります」
「それは困った。どうしたらいいのじゃろな?」
「山羊や羊のように、一日中食べて、糞をするように作りかえてはいかがでしょう。それなら、退屈はしないでしょう」
「まあ、お姉様ったら、お下品ねえ!そんなことになったら、文明なんかできませんよ」次女のメガイラが反対しました。
三女のアストレアも言いました。「夫は、朝早くから夜遅くまで働いています。退屈になったことはありません」
「それよ。退屈だから仕事をしているのよ。忙しかったら、仕事などするものですか。
アストレア、それより、夫が何考えているかわからないって疑心暗鬼になったりしないの?」長女が三女にたずねました。
「そうそう、歯がゆいわ」次女も言いました。
「お姉様方、心配ありませんよ。夫と愛で結ばれているから、ひどいことを考えるようなことはないと信じていますから」
「ばかばかしいわ。愛って、お互いが相手の考えていることがわかるから生まれるのよ」
「まあまあ。おまえたちの話を聞いて、よけいにわからなくなった。すまないが、もう少し様子を見てきてくれないか」
神は、そう言って、3人の娘をまた地上に戻しました。

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