かぐや姫ふたたび
今日も、ムーズが降りてきた~きみと漫才を~
「ほんとにヘンな童話100選」の(34)
「かぐや姫ふたたび」
昔、ある家で、若い男が4,5人寝転がったりしながら、楽しく話していました。
ようやく話も途切れたとき、1人が思いだしたかのように、「おい、聞いたか?」と聞きました。
「何を?」1人が言いました。
「最近、このあたりで、あまり見かけないものが、しかも、妙な格好をして、人を探しているらしいな」
「聞いた。聞いた。3,4人いるらしいな」
「そうそう、『かぐや姫は何処にいるか教えてくださらぬか』とか聞くらしいぞ」
「なんだい、そのかぐや姫てのは?」
「知らないよ」
「どこからか迷いこむやつはいるけど、人を探すとはめずらしい」
「それじゃ、暇つぶしに、そいつらを見学に行こうぜ」
仲間は、連れたって外に出ました。そして、一気に飛びあがりました。
どこへでも、すぐに飛んでいけるのですが、山が多いので、上からは見つけにくいこともあって、なかなかわかりせん。
ようやく、3、4人が木の下で休んでいるのを見つけました。
「あいつらか」、「そうだ。あいつらにちがいない。だぼだぼの服を着て、頭にへんなものを被っている」、「あれで飛ぶのだろうか」、「いや、いつも歩いているらしいから、飛べないかも知れない」「せっかくだから、近くまで行こう」
若い男たちは、用心のために、100メートルぐらい前で降りて、歩いて近づきました。
その時、向こうからは走ってくるものがいました。
はあはあ息を切らしながら、「ちょうどよかった。我ら、知らぬ土地で難渋しておる。早速ながら、かぐや姫という美しいお方を知らぬか」と言いました。
若い男たちは、相手のへんてこりんの格好にクスクス笑いながら、「そういうものは知りませんが、どういうものですか」と聞いた。
やがて、へんてこりんは4人全員揃った。そして、かぐや姫の話をはじめた。それは、3時間も続いた。
やがて、若い男の1人が、「おい、それはグレムリュプリのことじゃないか」と言った。
「そうか。家出を繰りかえすので、親が手を焼いて、それほど外が好きなら、どこかへ行けと飛ばしたんだろう」
「うわさでは、着いたところで、妙な服を着せられて退屈な生活をだったらしいぜ。
親は、モテモテだったと言っていたが、みんなどうだかと笑っていた」
「まだ2才になっていないのに、そんなことあるものか!」
「ただ、親が、グレムリュプリを外に出さないから、ほんとのことはわからないけど」
「そ、その方は、どこにおられる!」1人のへんてこりんが口を挟みました。
「ここから3時間ほどかかるよ。みんな飛べるの?」
「飛ぶ?そんなことはできるわけがない。鳥じゃあるまいし」
「ところで、あんたたち、どうしてここへきたの?帝(みかど)が、かぐや姫を忘れられないので、その思いを伝えるために、ここに来たことは聞いたけどさ」
「かぐや姫が月に戻ってから1年後、夜中にまた、光る乗り物があらわれたので、かぐや姫が戻ってきてくれたと都中が喜んだが、乗り物の中は空っぽでござった。
どうも段取りが悪く、二重手間になったようじゃ。
それを聞いた帝は、さらに体が悪くなったので、我らが、帝の気持ちを伝えるべく、その乗り物に乗ってきたというわけじゃ」
「それなら、親に聞いてきてやる。ここで待っていろ」
若い男たちは、グレムリュプリの家に着きました。そして、親に、今聞いてきたことを話しました。
親は、「最初はおとなしくしていたけど、最近、またいらいらしている。きみらの顔を見たら気がおさまるかもしれない」と言って、中に入れてくれました。
グレムリュプリは、同級生を見ると、たいそう喜びました。
学校の思い出などを話した後、誰かが、「おまえに会いたがっている者が来ているよ」と言いました。
「誰?」
「帝とか何とか言っているよ」
「えっー!」グレムリュプリは素っ頓狂な声を上げました。
「会ってやれよ」
「嫌よ。あそこは思いだすだけでもうんざりよ。みんな真面目というかしつこいというか。
とにかく、波長が合わないのよ」
その頃、待っていた帝の家来は、「どうも、話を聞いていると、ここの者の1才は、10年のようじゃな」などと話しあっていました。
親も、グレムリュプリに、わざわざ来たのだから一度会ったらと言ったのですが、強情なグレムリュプリは会おうとしませんでした。
やがて次の乗り物が出る日が来たので、家来たちは仕方なしに月を離れることになりました。
家来たちは、乗り物の中で、「愛とは誤解でできているものじゃ」と納得しました。
そして、帝には、かぐや姫は、月の世界で毎日泣いて暮らしていたと言うことにしました。そして、『またお会いしたく存じます。それまでご無事で』という手紙も作りました。