いたずら(2)
今日も、ムーズが降りてきた~きみと漫才を~
ほんとにヘンな童話100選」の
「いたずら」(2)
二人の子供たちは状況が飲めないようでしたが、立ったままテレビを見ていました。画面はスタジオに変わり、アナウンサーが大きな声で叫んでいます。
「お姉ちゃん、何これ?」と弟が聞きました。
「よくわかんない。でも、大変なことが起こりそうだわ」姉がそう答えたとき、電話が鳴りました。
「ああ。ママ、どうしたの?」姉は、しばらく母親の話を聞いていましたが、「分かったわ」と答えました。
「どうしたの?」
「ママが戦争起きるかもしれないから、おやつを食べて家にいなさい。できるだけ早く帰ると言っているわ。それから、絶対外に出かけてはいけませんだって」
「えーっ。ケンちゃんちへ行く約束していたのに。でも、戦争が起きたらどうなるの?」
「よく知らないわ。多分大勢の人が死んでしまうらしいわ」
「パパやママも。それから、お姉ちゃんも」
「それもよく分からないわ。みんなじゃないと思うけど、大勢なの。向こうでおやつを食べましょう、ママはおいしいパンケーキがあるって言っていた」
二人はテレビを消して出ていきました。
「今のこと、おれたちにも関係あるのか?」どこかの時計が聞きました。
「そりゃ、そうだろう。核爆弾が破裂したら、おれたちも木っ端みじんだ」
「でも、このあたりは攻撃されないだろう。もしそうなら、もっと前から騒いでいるはずだ。そうですよねえ、おじいさん?」
柱時計のおじいさんは、ボーンと鳴ると、「そうじゃな。でも、直接攻撃されなくても、今は国際化といって、経済でも、政治でも世界が結びついている。もしどこかで戦争が起こって、核兵器が使われたら世界がマヒしてしまうかもしれん」と答えました。
「そうなんですか!どうしたらいいんですか?おれたちにはどうすることもできません」
「確かに、これは人間同士が話しあって解決しなければならない問題じゃな」
それから、居間にあった6個の時計が大声で自分の考えを話しだしました。
「みんな、聞いてちょうだい!」本棚の上にいた瀬戸物で作られた花時計が叫びました。「今朝、時間を狂わせてここの人をからかったでしょう?それを使えないかしら」
「どういうこと?」
花時計は、世界の時計を止めたり狂わせたりして、戦争を止めることはできないかと提案したのです。
その可能性を聞かれた柱時計のおじいさんは、「それはいいところに気がついたな。インターネットの中にも時計がいるから、世界中の時計とはすぐに連絡がつくが、こちらの考えを理解してくれかどうかだけじゃな」
「ここの子供たちだけでなく、世界中の子供たちも元気でいてもらいたいものな」
「そうだ、そうだ。いたずらをする相手がいなくなるのはさびしいよ」
「よし、やってみよう」
それから、インターネットの中にいる時計を通じて、近所の家の時計に呼びかけました。
「今テレビを見ている。ここの人はパニックを起しているから、どうしたらいいものかと話していたところだ」という時計もいましたが、「時計は正確な時間をあらわすのが仕事だから、そんなことはできない」と断る時計もいました。
しかし、5時間後には、世界中の時計が賛同をして、止まったり、急いだり遅れたりしました。
それで、忠実に時間をあらわす時計も、それが正確かどうか人間には分からなくなりました。
結局戦争は起きませんでした。敵味方とも混乱が収まりそうになかったからです。
世界中の人間は、時間が分からなくなったので困りましたが、とにかく戦争が起きなかったことを喜びました。
しかし、次こんなことが起きたら、時計が助けてくれるかどうかはわかりません。