いたずら(1)

   

今日も、ムーズが降りてきた~きみと漫才を~
「ほんとにヘンな童話100選」の(142)
「いたずら」(1)
「うまくいったな」誰かが言いました。
「そうだな。今頃はみんなあわてているだろう」別の誰かがうれしそうに答えました。
また別のものが、「家族は、『あれ、どうしたんだろう?家にあるものだけでなく、テレビでも確認したのになあ』と頭がこんがらがったかもしれない」と笑いが止まらないようでした。
しかし、一人の女性が、「そうしろと言われたからしたけど、なんだかかわいそうじゃない?あまりやりたくないわ」と言いました。
「そう言うなよ」
「だって、パパが大事なお客様と会うことになっていたら大変なことになるし、ママも学校の先生だから授業に遅れるわ。それに、子供たちも、入学試験の日なら、人生を狂わすかもしれないのよ」
「わかったよ。今度からは、家族の誰にも特別な用事がないことを確認してからやろう」と誰かが提案しました。
しばらくすると、「時間というものは人間が発明したもののか?」という声が聞こえました。
「むずかしいことを聞くなあ。そんなことは柱時計のおじいさんに聞いてみよう」という声がしました。
「おじいさん、さっきぼくらこの家にある時計12個が結託して、いつもゆっくり進むおじいさんの時間に合わせて、ここの家族にいたずらをしました。ごめんなさい。
ところで、今お聞きだったと思いますが、時間は人間が発明したものですか?教えてください」テーブルに置かれていた目覚まし時計が壁にかかっている柱時計に聞きました。
柱時計のおじいさんは、ボーンという音を鳴らすと話しだしました。「時間は人間が発明したものではない。時間は、人間が生まれるはるか以前よりあってずっと進んでいる。ただし、この世ができたときからじゃが」
「この世ができる前には時間はなかったのですか?」
「そのようじゃ。だから、この世が終われば時間も止まる」
「へえ。それなら、人間は時間をどうしたんですか?自分が見つけたように思っていますが」
「ニュートンとかアインシュタインという天才が、時間とはどういうものか見つけたのじゃ」
「それで、ぼくらが作られたのですね」
「そうじゃ。4,500年前に考えられた日時計から、水時計、砂時計、あるいは振り子時計、それから、おまえたちのようなクォーツ時計や電波時計が作られた。
ただし、わしはここの先祖の形見で、ぜんまい仕掛けで動いている。昔のことはよく覚えているが、そんなことを話してもつまらないじゃろ」
「わたしたちは故障すればお払い箱ですが、おじいさんは大事にされているのですね」
「時代遅れのおんぼろじゃ。でも、おまえたちは、他の時計と同期することができる。羨ましいことじゃ」
「それを使って、今度のいたずらをしたのです」
「まあ、度を過ぎぬようにな」
そのとき、子供たちが帰ってきました。小学5年の女の子と小学2年の男の子です。
「お姉ちゃん、今日はびっくりしたな。なんでこんなことになっちゃたんだろう?」
「わからないわ。時計をちゃんと確認してから家を出たはずよ」
弟はテレビをつけました。「今4時30分だよ。それなら、家の時計全部確認しよう」二人は置時計や柱時計だけでなく、携帯電話の時計から、机についている時計、冷蔵庫や電子レンジなどついている時計なども全部調べました。
しかし、全部一緒の時刻を示しています。二人はまだ不思議がっています。
そのとき、テレビで、「明日の朝までに国際紛争が解決しなければ、戦争が起きる恐れがあります」という緊急ニュースが流れました。
その場にいた時計も緊張して見ていました。

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