久しぶりのチュー吉たち

   

今日も、ムーズが降りてきた~きみと漫才を~
「ほんとにヘンな童話100選」の(93)

「久しぶりのチュー吉たち」
♪ありのままで~・・・♪「誰か歌っている」、「うまいじゃないか」
「あの声はチュー吉じゃないのか」、「まさか。おれたちのリーダーだぜ」
「やっぱりチュー吉だ。ほら!」いつもの仲間のネズミが噂していると、♪レリゴー レリゴー♪とチュー吉が歌いながら天井裏に戻ってきました。
「どうした、チュー吉、楽しそうじゃないか」チュー作が声をかけました。
「何が?」
「今歌っていたじゃないか?」
「そうか。気がつかなかった!」チュー吉は顔を赤くして言いました。
「冷静沈着なチュー吉でも、我を忘れることがあるんだ」チュー造も驚きました。
「よほど感動したと見える」チュー太郎も同感したようです。
「そうそう、この前アナ雪のDVDが発売されたんだな」弟のチュー次郎が思いだしました。
「どこの家でもみんな観ているよ。それも、何回も。だから、おれたちもゆっくりごちそうを失敬できるってわけさ」
「チュー吉も観てきたんだろ?」
「まあそんなとこだ」チュー吉も認めざるをえませんでした。
「でも、チュー助。あれは我らがライバルのディズニーが作ったものだろう?」チュー造は、森羅万象に通じるチュー助に聞きました。
「そうだ。売り上げも半端じゃないそうだ。3月からの興業収入が200億円を超えているし、DVD売り上げも、すでに100万枚を突破した」
「すごいもんだ。歌が先行しているけど、あらすじを教えてくれないか。チュー吉」
みんな、ここぞとばかりチュー吉をからかいました。「おれはいいよ。チュー助、頼むよ」
チュー助は、どこで知ったのか知りませんが、あらすじを話しはじめました。
さすがに「映画を観なくても感動する」と言われている話しぶりですので、みんなはじっと聞き入っていました。
「なるほどな。ディズニーらしい映画だ」
「おれたちをモデルにしたミッキーマウスに人気があって、おれたち自身は嫌われているという状況を変えようと立ちあがったわけだが、まだ道半ばだ。彼我との差は開くばかりだけど、どうしてだろう?」
「それは4Kだからだ」
「最新のテレビか」
「ちがう。きたない、くさい、きみがわるい、菌をもっているの4つだ」笑い声が起きました。
「自虐では何も解決しないよ。それに、無理に数合わせしている感じがする。
ハツカネズミはペットとして人気があるし、おれたちの仲間であるカピバラも冬には温泉に入っているニュースが流れるほどだ」チュー吉は、ここぞとばかりに持論を展開しました。
「そうだな。大きさではないんだ。要は花があるかどうかだ」
「人間が、カピバラはネズミだと知っていないからかもしれないが、おれたちも、人間の前にもっと姿をあらわしたほうがいいかもしれないな」
「人間の役にも立っている。以前チュー助から聞いたSTAP細胞でも、おれたちの仲間が使われたじゃないか」
「責任を問われると、当事者はおれたちの責任にしていた。おれたちがまちがっていたとか」
「それはちょっとちがう。仲間は同じだが、そこから取り出した細胞を以前からあるES細胞に変えたかどうかが焦点になっているんだ」チュー助が訂正しました。
「どちらにしても、おれたちの仲間が犠牲になったんだ。みんなで黙祷しようじゃないか」
チュー吉の提案で、STAP細胞をはじめ、人間のために犠牲になった仲間のネズミのために1分間の黙祷をしました。
それが終わったとき、どこからか、女の怒鳴り声が聞こえました。
「また夫婦喧嘩か。あんなものの犬でも食わないぞ。ほっておけ」
「子供の泣き声もする。虐待かもしれない。おれたちが見てくる」と言って、チュー作、チュー造、チュー太郎、チュー次郎が急ぎました。
2.30分して帰って来ました。チュー吉が聞くと、「天井からのぞくと、例のアナ雪を何回も見ようとする娘に母親が怒鳴りつけていたんだ。
それで、天井を走りまわってやった。すると、娘が、ママ、恐いとか言って、ビデオをあきらめた。また、子供に嫌われたわけだ」チュー作が報告した。
「まあ、いいじゃないか。親の役には立ったわけだから」チュー吉が慰めました。
「♪雨は、夜更け過ぎに大雨へと変わるだろう♪ってか」突然、チュー造が歌いはじめました。
「今度はチュー造か。確かに今年の雨はすごいな」
「そういえばビニール傘はどうしたんだろう」
「今ごろは困っているんじゃないか。こんなにすごい台風が来て」
「また、乗せてもらって夜景を楽しみたいもんだ」
その頃、ビニール傘たちはもめていました。

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