新しい国(2)
今日も、ムーズが降りてきた~きみと漫才を~
「ほんとにヘンな童話100選」の(153)
「新しい国」(2)
10日後、主都ムバブルの中央ホールで代議員100人が集まって定例会議が開催されることになりました。
定例会議は3月と9月の年2回開催されることになっています。
もっとも国ができてまだ3年ですので、定例会議はまだ10回も開かれていません。
前回ケンをサポ―トするジョンが言っていたように、すぐには深刻ではなくとも、ほっておくといつか国の存続を左右する議題ですから、3月の開催月を2か月前倒しし、1月に開催することになったのです。
それを、代議員や国民に審議してもらおうというわけです。、
定例会議は国民が選んだ100人の代議員が議題を審議しますが、自分たちが国の政策を直接決めるということが国民はうれしくてたまりません。
だから、評判のミュージカルの開演日を待つような気分で定例会議を待っています。
そして、国民は、「ケンの顔を見たい」とか「ケンの考えを聞きたい」とまるで、世界から来るスターのように自分の国のリーダーのことを思っています。
リーダーと呼ばれることをケンは嫌がっていますが、とりあえずこの国を作ったのは自分だから、今は仕方がないと考えています。ただ、絶対に大統領と呼ばせることは認めないと言っています。
いよいよ定例会議の当日です。代議員は、開演の、いや、開始時刻の午前10時の3,4時前からホールに行きました。
会議員でない国民もホール前の広場に詰めかけました。ホールには代議員だけでなく、1000人の国民も入れるのですが、広場で抽選が行われるのです。、抽選にもれた国民は広場に設置された大型テレビで定例会議の様子を見ることができます。
10時のちょうどに定例会議が開かれました。
ケンを中心に、ケンをサポートするスタッフ30人が舞台に上がると、大きな拍手や歓声で迎えられました。
司会はジョンです。ジョンは、「それでは、2055年3月の定例会議を今日1月20に開催します」と宣言しました。また拍手が起きました。
「といって、そう緊急かつ深刻な議題はありませんが、このままでは、我々スタッフが家庭不和を起こしますので、ぜひみなさんに助けてほしいと思って、会議を前倒しすることになりました」と代議員、そしてバックにいる国民を笑わせました。
それから、彼らの国である「キネトピア」への移住希望者が10億人を超したことを、噂はありましたが正式に発表しました。
「人口の余裕は後2000人しかありません。さらに増やすためには、みなさんに、生まれた国に帰ってもらうしかありません」と笑わせました。
「それは冗談として、このままは追っておくと、世界から反発を招くおそれがあります。この数字を世界に公表する前に、何とかしなければなりません」
「ケンの考えを聞きたい」代議員の一人が発言しました。
ジョンはケンを見て、前に出るように促しました。ケンは立ちあがりました。
すると、さらに大きな拍手が起きました。
ケンは、代議員を見て、「今日はありがとう。今ジョンが説明したように、とにかく世界に何か説明しなくてはならないようです。
しかし、この天文学的数字を言うだけで、世界が納得するか不安です。
それで、みんなの意見を聞きたくて、ここに来てもらったのです」と言った。
「確かにジョンたちは残業しなければならないな」代議員の一人が言った。
「どうしたらいいのだろ?」ケンが聞いた。
しばらく沈黙が続いた。すると、若い女性代議員が発言を求めた。
「これはその場しのぎで切ることではないと思います。移住希望者には、もちろん全員というわけにはいきませんが、キネトピアに招待して、実際の国や生活を見てもらうのです。
すると、国や生活を理解できるので、反感をもたれることはないと思います」
「確かにそうだ。それはグッドアイデアだ」ケンは叫んだ。
「さらに言えば、ケンが考えていたように、キネトピアにふさわしいように、どこかへ行きましょう!その都度、近くの国の人々を招待してキネトピアを見てもらいのです」
「きみがキネトピアのボスに決定だ」ケンは若い女性を抱きしめました。ホールは割れんばかりの拍手に包まれました。