シーラじいさん見聞録
「オリオン。とりあえず水槽から出ることになったぞ」所長は小さな声で言った。オリオンは小さくうなずいた。
水槽は静かに海面に着いた。オリオンはゆっくり水槽から出た。
所長や船長、兵士たちも見ていた。「オリオンは大丈夫ですか」と船長が聞いた。
「大丈夫だ。事情が事情だから仕方がないが、オリオンを早くインド洋に行かせなければならない。とにかく急いでくれよ」所長は念を押した。
「私からも急がせますから」船長は約束した。
クレーンが元に戻ると、所長は、オリオンに、「戻らなくてはならない。明日また来るけど、気をつけるんだよ」と声をかけた。オリオンはうなずいた。
海軍の船は岸に向かった。所長はオリオンを見ていた。オリオンも見ていた。
それから、なるべく他の船がいないほうに行った。
イリアスは、「オリオンがいつも我慢しなければならないのはかわいそうだ」と不満を漏らした。
「ニンゲンのために命を懸けているのに、ニンゲンに邪魔をされてばかりだ」ジムも同意した。
「でも、オリオンのことを理解するニンゲンも増えてきたのも確かよ」ミセス・ジャイロが言った。
「それはそうだが」ジムが答えた。
「オリオンは、どんなときでも、恨み言を言わないし、あきらめることもしない。ぼくらも見習わなくてはならない」アントニスが言った。
「ぼくらは、オリオンに助けてもらったのに、そのお返しがまだできていない」ジムは悔しそうに言った。
「いや。きみらがここにいるだけでもオリオンとって心強いと思うよ」ダニエルが言った。
「ほんとか?」ジムが怪訝そうに聞いた。
「そうだよ。所長やアムンセン教授は、きみらからオリオンのほんとの姿を知ったのだ。そして、仲間になったのだ。きみらは決して、何もしていないわけじゃないんだ」
「オリオンはもうすぐインド洋に戻り、大きな仕事をする。ぼくらはここでできることをしようじゃないか」アントニスは言った。
翌朝、モーターボートに猛スピードで来た。オリオンは急いで近づいた。オルコット所長だ。オリオンは、「所長、おはようございます」と挨拶した。
「オリオン、おはよう。何もかわったことはなかったかい?」
「ええ。何もありません。所長はお疲れではないですか?」
「ぼくも大丈夫だよ。そんなことより、すぐにインド洋につれていくと約束したのに、こんなことになって申しわけないな」
「所長の責任じゃないですよ。それに、いつまでも小競り合いが続くことはありませんから」
「ありがとう。また明日来るからな」船の往来が激しいので、所長はすぐに帰っていった。
「無理しないでください」所長は毎日来たが、進展はなかった。
そのことは、所長からマイクに連絡が行き、シーラじいさんにも連絡が行っていた。
しかし、5日目、所長が来たとき、動きがあった。「オリオン、いよいよだぞ」と叫んだ。
「連絡がきたのですか?」オリオンも大きな声で聞いた。
「そうだ。いよいよ明日飛行場に行き、そこからすぐに飛行機でマダガスカルに行くことが決まった。ほんとは、そこから、別の飛行機で近くまで行くようになっていたんだが、危険な状況が続いているので、そこまでしか行けないと言うんだが、かまわないか」
「かまいません。急いで行きますから大丈夫です。それに、カモメなどの仲間がいますから」
「すまないな」
「時間は決まっているのですか?」
「決まっている。明日午前8時に海軍の船が来るから、この前水槽を降ろした場所に来てくれないか」
「わかりました」
「トラックに乗れば、ぼくはもうついていくことができない。きみのことはよく頼んでおくから気をつけていくんだ」
「今までありがとうございました」
「それじゃ。明日の朝8時に迎えに来るから」
そのことも、所長はみんなにすぐ連絡をした。「所長、やりましたね」電話でマイクが言った。
「いや。オリオンの健気な様子を見ていると、いつまでも待たせられないと思ってね。毎日、海軍に連絡したよ。それで、空軍も動いてくれた」
「よかったです」
「ただし、マダガスカルまでしか行けないので、そこからはオリオンが泳いでいかなければならない」
「わかりました。こちらから、そのことをシーラじいさんに伝えます。すぐにカモメがリゲルたちに言ってくれるでしょう」
「これで、ぼくも仲間に入れてくれるかね」
「もちろんです」
「オリオン。とりあえず水槽から出ることになったぞ」所長は小さな声で言った。オリオンは小さくうなずいた。
水槽は静かに海面に着いた。オリオンはゆっくり水槽から出た。
所長や船長、兵士たちも見ていた。「オリオンは大丈夫ですか」と船長が聞いた。
「大丈夫だ。事情が事情だから仕方がないが、オリオンを早くインド洋に行かせなければならない。とにかく急いでくれよ」所長は念を押した。
「私からも急がせますから」船長は約束した。
クレーンが元に戻ると、所長は、オリオンに、「戻らなくてはならない。明日また来るけど、気をつけるんだよ」と声をかけた。オリオンはうなずいた。
海軍の船は岸に向かった。所長はオリオンを見ていた。オリオンも見ていた。
それから、なるべく他の船がいないほうに行った。
イリアスは、「オリオンがいつも我慢しなければならないのはかわいそうだ」と不満を漏らした。
「ニンゲンのために命を懸けているのに、ニンゲンに邪魔をされてばかりだ」ジムも同意した。
「でも、オリオンのことを理解するニンゲンも増えてきたのも確かよ」ミセス・ジャイロが言った。
「それはそうだが」ジムが答えた。
「オリオンは、どんなときでも、恨み言を言わないし、あきらめることもしない。ぼくらも見習わなくてはならない」アントニスが言った。
「ぼくらは、オリオンに助けてもらったのに、そのお返しがまだできていない」ジムは悔しそうに言った。
「いや。きみらがここにいるだけでもオリオンとって心強いと思うよ」ダニエルが言った。
「ほんとか?」ジムが怪訝そうに聞いた。
「そうだよ。所長やアムンセン教授は、きみらからオリオンのほんとの姿を知ったのだ。そして、仲間になったのだ。きみらは決して、何もしていないわけじゃないんだ」
「オリオンはもうすぐインド洋に戻り、大きな仕事をする。ぼくらはここでできることをしようじゃないか」アントニスは言った。
翌朝、モーターボートに猛スピードで来た。オリオンは急いで近づいた。オルコット所長だ。オリオンは、「所長、おはようございます」と挨拶した。
「オリオン、おはよう。何もかわったことはなかったかい?」
「ええ。何もありません。所長はお疲れではないですか?」
「ぼくも大丈夫だよ。そんなことより、すぐにインド洋につれていくと約束したのに、こんなことになって申しわけないな」
「所長の責任じゃないですよ。それに、いつまでも小競り合いが続くことはありませんから」
「ありがとう。また明日来るからな」船の往来が激しいので、所長はすぐに帰っていった。
「無理しないでください」所長は毎日来たが、進展はなかった。
そのことは、所長からマイクに連絡が行き、シーラじいさんにも連絡が行っていた。
しかし、5日目、所長が来たとき、動きがあった。「オリオン、いよいよだぞ」と叫んだ。
「連絡がきたのですか?」オリオンも大きな声で聞いた。
「そうだ。いよいよ明日飛行場に行き、そこからすぐに飛行機でマダガスカルに行くことが決まった。ほんとは、そこから、別の飛行機で近くまで行くようになっていたんだが、危険な状況が続いているので、そこまでしか行けないと言うんだが、かまわないか」
「かまいません。急いで行きますから大丈夫です。それに、カモメなどの仲間がいますから」
「すまないな」
「時間は決まっているのですか?」
「決まっている。明日午前8時に海軍の船が来るから、この前水槽を降ろした場所に来てくれないか」
「わかりました」
「トラックに乗れば、ぼくはもうついていくことができない。きみのことはよく頼んでおくから気をつけていくんだ」
「今までありがとうございました」
「それじゃ。明日の朝8時に迎えに来るから」
そのことも、所長はみんなにすぐ連絡をした。「所長、やりましたね」電話でマイクが言った。
「いや。オリオンの健気な様子を見ていると、いつまでも待たせられないと思ってね。毎日、海軍に連絡したよ。それで、空軍も動いてくれた」
「よかったです」
「ただし、マダガスカルまでしか行けないので、そこからはオリオンが泳いでいかなければならない」
「わかりました。こちらから、そのことをシーラじいさんに伝えます。すぐにカモメがリゲルたちに言ってくれるでしょう」
「これで、ぼくも仲間に入れてくれるかね」
「もちろんです」
「オリオン。とりあえず水槽から出ることになったぞ」所長は小さな声で言った。オリオンは小さくうなずいた。
水槽は静かに海面に着いた。オリオンはゆっくり水槽から出た。
所長や船長、兵士たちも見ていた。「オリオンは大丈夫ですか」と船長が聞いた。
「大丈夫だ。事情が事情だから仕方がないが、オリオンを早くインド洋に行かせなければならない。とにかく急いでくれよ」所長は念を押した。
「私からも急がせますから」船長は約束した。
クレーンが元に戻ると、所長は、オリオンに、「戻らなくてはならない。明日また来るけど、気をつけるんだよ」と声をかけた。オリオンはうなずいた。
海軍の船は岸に向かった。所長はオリオンを見ていた。オリオンも見ていた。
それから、なるべく他の船がいないほうに行った。
イリアスは、「オリオンがいつも我慢しなければならないのはかわいそうだ」と不満を漏らした。
「ニンゲンのために命を懸けているのに、ニンゲンに邪魔をされてばかりだ」ジムも同意した。
「でも、オリオンのことを理解するニンゲンも増えてきたのも確かよ」ミセス・ジャイロが言った。
「それはそうだが」ジムが答えた。
「オリオンは、どんなときでも、恨み言を言わないし、あきらめることもしない。ぼくらも見習わなくてはならない」アントニスが言った。
「ぼくらは、オリオンに助けてもらったのに、そのお返しがまだできていない」ジムは悔しそうに言った。
「いや。きみらがここにいるだけでもオリオンとって心強いと思うよ」ダニエルが言った。
「ほんとか?」ジムが怪訝そうに聞いた。
「そうだよ。所長やアムンセン教授は、きみらからオリオンのほんとの姿を知ったのだ。そして、仲間になったのだ。きみらは決して、何もしていないわけじゃないんだ」
「オリオンはもうすぐインド洋に戻り、大きな仕事をする。ぼくらはここでできることをしようじゃないか」アントニスは言った。
翌朝、モーターボートに猛スピードで来た。オリオンは急いで近づいた。オルコット所長だ。オリオンは、「所長、おはようございます」と挨拶した。
「オリオン、おはよう。何もかわったことはなかったかい?」
「ええ。何もありません。所長はお疲れではないですか?」
「ぼくも大丈夫だよ。そんなことより、すぐにインド洋につれていくと約束したのに、こんなことになって申しわけないな」
「所長の責任じゃないですよ。それに、いつまでも小競り合いが続くことはありませんから」
「ありがとう。また明日来るからな」船の往来が激しいので、所長はすぐに帰っていった。
「無理しないでください」所長は毎日来たが、進展はなかった。
そのことは、所長からマイクに連絡が行き、シーラじいさんにも連絡が行っていた。
しかし、5日目、所長が来たとき、動きがあった。「オリオン、いよいよだぞ」と叫んだ。
「連絡がきたのですか?」オリオンも大きな声で聞いた。
「そうだ。いよいよ明日飛行場に行き、そこからすぐに飛行機でマダガスカルに行くことが決まった。ほんとは、そこから、別の飛行機で近くまで行くようになっていたんだが、危険な状況が続いているので、そこまでしか行けないと言うんだが、かまわないか」
「かまいません。急いで行きますから大丈夫です。それに、カモメなどの仲間がいますから」
「すまないな」
「時間は決まっているのですか?」
「決まっている。明日午前8時に海軍の船が来るから、この前水槽を降ろした場所に来てくれないか」
「わかりました」
「トラックに乗れば、ぼくはもうついていくことができない。きみのことはよく頼んでおくから気をつけていくんだ」
「今までありがとうございました」
「それじゃ。明日の朝8時に迎えに来るから」
そのことも、所長はみんなにすぐ連絡をした。「所長、やりましたね」電話でマイクが言った。
「いや。オリオンの健気な様子を見ていると、いつまでも待たせられないと思ってね。毎日、海軍に連絡したよ。それで、空軍も動いてくれた」
「よかったです」
「ただし、マダガスカルまでしか行けないので、そこからはオリオンが泳いでいかなければならない」
「わかりました。こちらから、そのことをシーラじいさんに伝えます。すぐにカモメがリゲルたちに言ってくれるでしょう」
「これで、ぼくも仲間に入れてくれるかね」
「もちろんです」