シーラじいさん見聞録
ベラがすぐにシーラじいさんを呼びに行った。
シーラじいさんは上がってくると、みんなも集まった。ミラはすぐに今見てきたきたことを話した。
ミラが話しおえると、リゲルが、「何か起きているのでしょうか?」と聞いた。
「敵を攻撃しているのならたいへんじゃが、演習の可能性もあるぞ」
「演習ですか?」
「そうじゃ。訓練をすることじゃ。いざというときのために、ミサイルなどの性能の確認と、兵隊の技術の向上のために定期的やるようじゃ。もちろん、相手への威嚇もあるじゃろな」
「そうでしたか。遠くから見るかぎりでは、ミサイルを続けて発射したり、船から戦闘機が飛びだしたりしていました」
「向こうからはミサイルなどは来なかったか?」
「それはなかったですね。もう少し様子を見たらよかったですが」
「「もしほんとの戦闘なら、アメリアとチャイアの間で行われているのですか」またリゲルが聞いた。
「そうじゃ」
「シーラじいさんは今は冷戦の時代じゃと言っていましたね?」
「そうじゃ。今はどの国も核兵器をもいっているので、そうそう簡単に戦争をしない。もし核兵器が使われたら、お互いの破滅を招くことになるからな。
昔も、アメリアとソフィアの間に冷戦があって核戦争寸前まで行ったことがある。その後、ソファアが崩壊したが、チャイアがアメリアに対抗する国になった。
しかし、当時の冷戦は資本主義と共産主義の覇権争いじゃったが、今は資源の奪いあいになっている。
海底にある資源の調査を終わって、後は採掘するだけだが、クラーケンのためにそれができないわけじゃ。
それで、アフリカの資源ほしさに、アメリア陣営とそれに反対するチャイア陣営がアフリカの国を自分のほうに取りこもうとしている。
どの国も、化石燃料や海の食料は不足している。そんなときに戦争を起こそうと考える国はないはずじゃが」
「オリオンは生物兵器だと思われているのですね」
「うむ。クラーケンそのものがそうと考えられている」
「どうしてそう思うのでしょうか?」
「わしもずっと考えておったが、多分、お互いの陣営が海洋資源を取らさないようにこういうことをしていると判断しているのではないか」
「でも、世界中の海にクラーケンが出没しています」
「そうじゃ。今はどう考えたららいいのか混乱しているじゃろ。もし、もしじゃが、ミラが見てきたことがほんとの戦いなら、そういうフラストレーションが溜まっているからかもしれん」
その時、いつの間にか下りてきていたカモメ3羽が、「わしらが見てきましょうか?」と声をかけてきた。
「お願いしたのですが、向こうのほうは忙しくないですか?」リゲルが言った。
「仲間が増えていますから大丈です。それに、オリオンを助けるためのきっかけがつかめるかもしれないぞ」
「そうですね。それじゃお願いします」
3羽のカモメは、ミラから攻撃があったらしい方角を聞いて飛んでいった。
4,5時間するとヘリコプターの音がしてきた。
「あそこだ」
「おい、あちこちから煙が出ているぞ。急ごう」
ヘリコプターだけでなく、あちこちから船が集まっていた。完全に破壊されている船も見える。ニンゲンが他の船に乗りうつっている。
「これは演習じゃないな」
「それなら戦争か」
「核兵器が使われると、おれたちも絶滅するらしいぞ」
「どうして?」
「空気に体の悪いものが入るので、それを吸うと死ぬのだ」
「シーラじいさんに頼んでどうしてもやめさせなければ」
「まずオリオンを助けることを考えなくてはいけない」
「確かにそうだ。オリオンはニンゲンを助けるために捕らわれている」
「それじゃ戻ろう」
カモメは夜遅く帰ってきた。そして、報告した。
リゲルは、「やはりそうだったか。シーラじいさん、いよいよ戦争がはじまるのですか」
「そんなことはない。攻撃したら、必ず報復されるのはわかっているから、いかにメンツを保ってこれ以上深追いはしないとおもうが」と言ってから、「すまんが、アントニスに手紙を渡してくださらんか?」とカモメに頼んだ。
カモメは、「わかりました」と答えたので、ベラは、シーラじいさんから内容を聞くと、すぐに潜った。
アントニスたちも、すでにテレビの臨時ニュースでこのことは知っていた。
「まずいな、これは」
「戦争にならなけれがいいが」全員心配しながらテレビを見続けた。しかし、まだ事件の経過を報道するだけで、その後の状況はわからなかった
「友だちに連絡する」ダニエルは電話をかけた。