ののほん丸の冒険 第1章71~75

   

ののほん丸の冒険

第1章71
ミチコは、「詳しいことは帰ってから話します」と言って電話を切った。
次の晩かかってきた電話では、「ご主人が行方不明になる1か月ほど前に、叔父が言われたような話があったと奥様が思いだしてくれました」と切り出した。
『主人から聞いたのですが、誰かが研究所に来て、ある研究所で自由に研究しませんか』と言われたそうです。
ご主人は誰からも制約されずに研究したいと言って大学をやめたそうですから、奥様は、そんな誘いを聞いても絶対受けないだろうと思っていたので、『断ったの』と軽く聞いたそうです。
『大学は雑用が多いから辞めたんだが、話では、そこは民間の研究所で、予算はいくらでも出すと言っているんだよ』と少し迷っているようにも見えたそうです。
ご主人は一度決めたら絶対考えを変えない性格だそうで、奥様は何も言わなかったら、ご主人は、『日本ではないらしいけど、契約は3年で、それがすんだら日本に戻ってもいいらしいよ』と、奥様の考えを求めるような雰囲気で聞いてきたそうです。
それで、『大丈夫なの。研究が戦争とかに使われたりしないの』と聞くと、『それはないそうだよ。もう少し詳しく聞いてみるけど』で話は終ったそうです。
それからは何も言わなくなったので、奥様もその話はすっかり忘れていたらしいけど、私が、『行方不明の前に何か心当たりはありませんでしたか』と聞いてたので、思いだしたようです。
それから1か月ぐらいして、ご主人が、突然行方不明になったんです」
「ほんとに叔父さんの場合とよく似ていますね。誰が誘ったのか分からないですか」とぼくは聞いた。
「それも聞いたのですが、ちゃんと聞いていなかったと言っておられました」
「名刺などは残っていないのでしょうか」
「行方不明になってから、気が動転して警察に行ったり、知りあいに聞いたりしたので、どこからか連絡がないか家で待っていたようです。
それで、叔父もまだ見つかっていませんが、メモで叔父を誘ったかもしれない会社の連絡先があったので、今調べているところですと言いました。
それに、私の場合は、研究論文が入ったバッグを取ろうとする男に誘拐されてしまったのですが、直前にバッグを預けた少年に私も監禁された家から助けだしてもらったことも説明しました。
お互いあきらめずにがんばりましょうと言うと、奥様は泣きだされて、何度も
頭を下げられました。
それで、幸い研究所には誰も入った様子はないようなので、名刺があるかもしれないと言うと、『一緒に探してくれませんか』と頼まれましたが、どうしましょうか」
ぼくは、「一緒に探してください。おじいさんのことを心配されているようですが大丈夫ですよ。
テツやリュウだけでなく他の人も来ておじいさんの世話をしています。
ぼくとしゃかりき丸は少しずつ料理もしています。おじいさんも、うまいと言ってくれています。もっとも、おじいさんが、うまいと言うのは、デパートの割引弁当を食べた時だとテツに言われましたが」と言った。
翌日の夕方、ミチコが帰ってきた。「ありがとうございました」とおじいさんやぼくらにお礼を言って、すぐ片付けなどをした。それから、近所のカフェに行くことにした。
「それらしき名刺がありました」とミチコが言った。ぼくとしゃかりき丸は、思わず、「えっ!」と叫んだ。
ミチコは、「部屋の中はかなり乱雑になっていたので、二人で3時間以上かけて片付けて、ようやく名刺箱を見つけました」そこまで言ってから、あたりをチラッと見て、1枚の名刺を取り出した。そこには、「藤沢健人 モンド商事名古屋支店」と書かれていた。
「こいつがその人を誘ったのですか」しゃかりき丸が聞いた。
「確かではないですが、お土産に持っていった味噌煮込みうどんから名古屋付近の会社ではないかと思って、名古屋の別の貿易会社にいる知りあいに連絡した時にも、この会社の名前が出ていました。
他にも10件近くの会社がありますが、同じ行方不明の人の研究所にもあったのですから、とりあえず調べなければならないかと思いました」
「そうですね。ぼくらを監禁したものと関係があるかどうかですね」と僕が答えると、しゃかりき丸が、「こりゃ。おもしろくなってきたぞ」と小さな声で叫んだ。
「奥様とも常に連絡を取りましょうと約束してきました」ミチコも力強く言った。

ののほん丸の冒険

第1章72
ミチコが札幌にいる間に、奥さんに、ようやく見つけた名刺の相手に連絡しましょうかと聞くと、奥さんは、「もう少し調べてから私から電話します」と答えたようだ。
研究者の主人が行方不明になったことと名古屋の会社の名刺があることは関係がないかもしれないので、奥さんが、もう少し調べます、もう少し待ちますと答えたのは正しいことだと思ったミチコは、「何か困ったら連絡してください」と言って帰ってきたのだ。
数日後、奥さんから電話があった。ミチコの話では、奥さんは、同じ階にある三つの会社に出向いて、事情を話して何か知らないかを聞いた。
ご主人はつきあいをしないほうなので、どの会社も分からないと答えたが、ある会社の女性社員が、共同給湯室に行ったとき、日本人と外国人の二人が研究所に入るのを見たと言った。それは行方不明になる1か月ぐらい前で、しかも、
同じ日本人と外国人を1週間後ぐらいにもう一度見たそうだ。
それで、奥さんは名刺の電話番号に思いきって電話した。すると、用件を聞いた担当者は、「確かに藤沢健人は在籍していますが、今はハンブルグに転勤になったという返事だった。
仕方がないので、奥さんは、「どういことで来られたのか分かりますか」と聞くと、「本人でなければ分かりません」というばかりで、「外国人を連れてこられていましたが」と聞いても、「そういうこともあります」とつれない返事だったそうだ。
ぼくとしゃかりき丸はじっと聞いていたが、奥さんが気の毒になった。
ぼくは、「ミチコさんの話を聞いて、自分も何とかしようと考えたんですね」と言った。
ミチコは、「いいえ。私の場合は、あなたたち二人が助けてくれたから、今日までやってこられました。
それは奥様にも言いました。『みんなで助け合っていきましょう。そうすれば奇跡が起きるかもしれませんから』と」と慌てて言った。
「おれたちは何でもしますよ。でも、もう少しとっかかりがほしいなあ」としゃかりき丸が悔しそうに言った。
「名古屋の知りあいに、この会社のことを聞くつもりです」ミチコが答えた。
しばらく、北海道からも名古屋からも連絡が来ず、3人は、お爺さんの世話などを黙々と続けた。
ただ、ミチコは、ぼくらに、「自分の将来を考えてくださいよ。おじいさんも一人前の大人になるように願っているのですから」と言うことがあった。
自分たちのことで大切な時間を台無しにしてほしくないのだろうと思うが、今目にある問題の解き方はどの学校に行っても教えてもらえないはずだ。しかもこの問題には、多くのことが絡みなっているので、それらを一つ一つほどいていかなければならないのだ。
これはミチコには言えないけど、学校よりよほどおもしろいし、よほど役に立つ。
昔、施設にいた時、「学校の勉強は社会で役に立つのか」と言う勉強嫌いがいたけど、学校の勉強より役に立つことはあるような気がする。それに、ミチコがぼくのほんとのママかどうかもまだ謎のままだ。
テツが、ぼくらのことを心配して、「今どうなっているんだ」と聞いてきたことがある。ぼくらは、札幌のことも含めて説明した。
数日後、テツが、「じいさんが話があると言っている」と呼んだ。
3人でおじいさんのところに行った。おじいさんは体を起こしてぼくらを待っていた。
「ミチコさん。いつもうまいものを作ってくれてありがとうな」と言った。
「テツから聞いたが、北海道にも行方不明になった人がいるそうじゃな。
ミチコさんは叔父さんのこともあるのに、その奥さんのために北海道にも行ったと聞いている。
苦しい毎日を送っていることと思う。ただ、物事が進展しないと誰もがやきもきするものであるが、それを無駄な時間だと思うことはない。
この世に存在するものは、途方もない時間をかけて今のような形になっている。物事もしかり。時間をかけて動く。
そのときのために、今日何をすべきか考えることじゃ」おじいさんはぼくらにそう教えてくれた。それから数日後、物事が動いた。

ののほん丸の冒険

第1章73
ミチコは、名古屋の商社にいる知りあいからが驚くべき情報を聞いたのだ。
それによると、摘発されたドイツのテロ組織に関係している者が日本に来ているのではないかというのだ。
会社の上司の話では、東京本社に警察から電話があってあるドイツ人を知らないかと聞いてきたそうだ。その時、警察はドイツのテロ組織の関係者だと言ったようだ。
しかし、名古屋支社は国際取引はあまりしていないので、そう大きな話題にはならなかった。
だから、上司は、名前などの具体的なことは言わなかったので、知りあいもそれ以上は分からないとのことだった。
しゃかりき丸とぼくは、遠くで起きていることが突然目の前にあらわれたような気持ちになった。
「どうして日本に来たのだろう」しゃかりき丸が聞いた。
「何か急ぐ理由があるはずだ」ぼくもそうとしか言えなかった。
「そうそう。偽名を使っているとか言っていましたね」ミチコが言った。
「最近はテロ組織の記事は少なくなってきているんですか」とぼくはミチコに聞いた。
「そうですね。私は英語も分かりませんから、日本の新聞をいくつかホテルで見るのですが、最近はあまりありません。
知りあいは英語が堪能ですから、聞いてみたいのですが、そうそう連絡もできませんので困っていました。
その話が本当なら、どうして日本に来たのか知りたいですね」
「そうだよな。日本はテロとはあまり関係ないし、それにドイツ人なら日本では目立ってしまう。それが分かっていてなぜ日本に来たのか」しゃかりき丸は推理をはじめた。
「わかったぞ。ミチコさんの叔父さんも北海道の研究者もまだ日本のどこかにいるということだ」
「つまり」とぼくが聞いた。
「つまりだ。ドイツのアジトはなくなったので、今日本のどこかで監禁している二人、あるいはそれ以上の研究者を新しいアジトに連れていくために来たのだ」
「それは考えられるな」ぼくはしゃかりき丸の推理に驚いた。絵に描いたような流れだったからだ。
「そうだろう」しゃかりき丸は得意そうに言った。
「日本の警察がそのテロリストを捕まえて、すべて白状したら、全員解放されるはずだ」
「でも、うまくいくかどうか。テロリストは厳格な訓練を受けていると聞いたことがある。捕まったとしても、そう簡単には自供しないだろう。
しかし、ドイツから連絡が来たのだろうが、そのドイツ人がテロリストだと分かったのはすごいことだ」
その夜、北海道の奥さんから、また驚くべき情報が来た。見知らぬ外国人が家に来て、片言の日本語で、「ご主人はどこにいますか」と聞いたそうだ。
奥さんが、「いませんが、あなたは誰ですか」と聞くと、「ジェームズ・ミラーと言います。
大学の用事で札幌に来たので、研究所に寄ってみました。しかし、留守なので、ご自宅にお邪魔しました」と言った。
奥さんは少し迷ったが、主人のことで何か情報を持っているかもしれないと思って、1か月以上行方不明であることを伝えた。
それを聞いたジェームズ・ミラーと名乗る男はひどく動揺したそうだ。
ようやく、自分のほうでも調べてから、あさってもう一度来ると言って帰っていった。
「自分らで誘拐したのではなかったのか。それとも芝居をしているのか」しゃかりき丸も不思議がった。
遠く外国で起きていた事件が急に目の前に来たようだった。
「自分らが誘拐していたのなら、わざわざ家まで来ないような気がしますね。
それとも、何か探(さぐ)っているのだろうか」ぼくは自分の考えを言った。
「どんなことを」
「たとえば、警察が捜査しているのかどうか」
「なるほどね。警察が捜査していないのなら動きやすくなるな。とにかく、あさってもう一度来るらしい」
「よし。明日北海道へ行こう」ぼくは二人に言った。

ののほん丸の冒険

第1章74
ぼくが、「明日北海道へ行こう」と言うと、しゃかりき丸は、すぐさま「賛成。おれもそう思っていたんだ」と大きな声で言った。
しゃかりき丸がそう言うのは予想していたが、ミチコにぼくらが北海道でとんでもないことをしでかすのではないかという心配を払拭させなければならない。
それで、「待てば海路の日和ありという言葉あるけど、今チャンスが来たと思うんだ」ぼくは、ミチコを見ながら言った。
「それはどういう意味だ」案の定、しゃかりき丸が聞いてくれた。
「意味はよくわからないが、この前、おじいさんが言っていた。多分何事もあせるな。待っていれば必ずチャンスがあるという意味だと思うけど、そのチャンスが今なんだ。だから、今急がなければならないんだ。そうですよね、ミチコさん」
ミチコは、「意味はそうだと思います」と認めざるをえなかった。
ミチコの後押しで、ぼくは話を続けた。「ミチコさんは奥さんにぼくらが行くことを連絡しておいてくれますか。そして、成功するためのは多くの情報を集めることが必要ですから、いろいろ聞きたいことがあります」
ミチコから、研究所の場所や自宅など聞いてから、ありとあらゆることを想定して作戦を練った。
「何人いるのだろうか」
「警察も追っているから、そんなに人数はいないだろう」
「でも、元々日本の研究者を集めていたなら、そういう連絡場所もあるはずだから、人数もある程度いるだろう」
「肝心なことは何しに来るのかということだ」
「ドイツのアジトが摘発されたので、ドイツか他の国にあるアジトに連れていくのだ」
「それじゃ。叔父さんやご主人は日本のどこにいるかもしれない」
「それより、そのテロリストが叔父さんたちの居場所が分かっていたら、研究所や自宅に行くのはおかしくないか」
「なるほど。分からないから来ているのか」
「うーん。何が起きているのか。まったく予想がつかないない。ミチコさんはどう思いますか」
「研究所の中は誰かが入った様子はないと奥さんは言っていましたね。すると、監禁場所は分かっているかもしれませんね」
「今回はぼくらが子供であることが有利に働くかもしれないな」
「それは言える。ただし、ぼくらを監禁したものと関係がなかったらの話だけど」
「それは言える」
「一つ気になるのだけど、警察に連絡しなくてもいいのかしら」
「ぼくも、それをちらっと考えましたけど、警察が追ってるというテロリストと奥さんの家に来た外国人が同一人物か分かりませんから、それを確認できるまで時間がかかります。
明後日その外国人が来るのですから時間がありません。とにかく調べなければなりません。
もちろん同一人物なら警察でないと逮捕できませんから、すぐに警察に連絡をするつもりです。それで、ミチコさんお願いがあります。このまま北海道に行きますから、後を頼みます」ぼくはミチコに頼んだ。
ミチコはぼくの勢いに押されて、「分かりました。おじいさんには私から言っておきます。とにかく無理をしないで」と答えた。
ぼくとしゃかりき丸は急いで羽田空港に向かった。ようやく羽田空港に着いたが、今度は飛行機のチケットを買わなければならない。まずここで子供であることを利用することにした。
案内所に行って、「出張先のパパが危篤になったので急いで札幌に行きたいのですが、チケットの買い方がわかりません。千歳空港にはママが待っていてくれます。何とかなりませんか」と頼むことにした。
スタッフはあちこち電話してすぐ出発する飛行機を調べてくれた。チケットもすぐに買うことができた。
出発時間は10分遅れたが、2時間後には新千歳空港に着いた。急いで到着ゲートを出ると、年輩の女の人が近づいてきた。

ののほん丸の冒険

第1章75
おばあさんと言ってもいい女の人が小走りで目の前にあらわれた。「ののほん丸としゃかりき丸ですか」と笑顔で聞いた。
「そうです。おれがしゃかりき丸で、こっちがののほん丸です」としゃかりき丸が答えた。
女の人は笑顔のままで、「わざわざ来てくれてありがとうございます。ミチコさんからはお二人のことをはよく聞いています。あっ、私は福田芳子です。よろしくお願いします」と言ってから、「ここでは何ですから、どこかで話しましょう。何しろ、私たちはお尋ね者ですからね」と笑った。
そこで、空港の端にあるカフェで話をすることになった。ぼくらは、改めて挨拶したが、明日の昼にはテロリストかもしれない外国人がもう一度家に来るということが三人の頭に浮かんで緊張した雰囲気になった。
ぼくは小さな声で、午前中、ミチコさんと話しあったことを佐々木さんに説明した。
そして、「どんな外国人でしたか」と聞いた。
「男は40才前後で、ジェームズ・ミラーと自己紹介して、『アメリカ人です』と言っていました。日本語は上手でしたので、主人がいなくなったことを話しました。ひじょうにびっくりしていましたが、『警察に届けたか』を何回も言っていましたので、私は事件かどうか分からないので警察は受けつけてくれないと答えました。今考えたら、どうして警察のことを何回も聞いたのか不思議に思いますけど」
「そこなんですよ。警察は慎重ですから、あの外国人はテロリストかもしれないと言っても、警察はすぐには動いてくれないと思うんです。まずそこをぼくらでやろうと思うんです」
「ミチコさんから聞いていたとおりですね」福田さんは目をきらきらさせて言った。
「あなたたちは、監禁された時も、相手を翻弄して逃げたそうですね。そして、ミチコさんも見つけ出して助けたのね。
ミチコさんはほんとに感謝していました。それで、あなたたちのことを聞いたとき、主人を助けてもらえるかもしれないと期待しました。
でも、テロリストと聞くと、お二人にそんな恐ろしい目に合わせたくないからお断りしたほうがいのではないかと思うようになっているんです」
「もしテロリストなら問答無用で目的を達成するイメージがありますから、心配しますよね。
ぼくらが監禁された時も殺されるのではないかとびくびくしていました。しばらくして、相手はなぜぼくを監禁したのか考えるようになって、それをうまく使ったら殺されたりはしないと気がついたんです。そして、相手の隙を見つけて逃げることができたわけです。
おじいさんに、あっ、ミチコさんが世話をしているおじいさんに言われたことですが、そのおじいさんに、『おまえは、敵を知り己を知れば百戦危うからずという孫子の教訓を生かしたんじゃ』と言われました」
「おじいさんのことはミチコさんから聞いていますよ。早く一人前になるようにおじいさんがつけた名前でしか呼ばせないようにしているのよね」
しゃかりき丸が口を挟んだ。「そうです。『早く親がつけた名前で生きていけるように苦労せよ』ということです。
おれは親の顔をあまり覚えていませんけどね。とにかく、ご主人を救えるチャンスをつぶさないようにしようと二人で決めているので安心してください」
「ありがとうございます。それで聞きたいのだけど、ジェームズ・ミラーがテロリストとして指名手配されているのに、どうして主人に会いに来たのでしょうか」
「そこです。ドイツのアジトは摘発されたけど、別のアジトに連れていこうとしているのではないかと3人で話していたんです」
「アジトは日本にもあるのでしょう」
「いや。それはわかりません。外国に連れて行かれたら探すのはちょっと無理かもしれません。
それに、ぼくが思うには、ご主人は今どこにいるのかは分かりませんが、何かの研究させるつもりですから丁寧に扱っているはずです」
「安心しました。お二人はほんとによく現実を見ていますね」奥さんは感心して言った。
「ののほん丸がいるから、おれもがむしゃらに行けるんですよ」
「それじゃ。明日私はどうしましょうか」奥さんは力強く言った。

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