ののほん丸の冒険 第1章66~70
ののほん丸の冒険
第1章66
翌日、ミチコはおじいさんの世話が一段落すると、「公園に行きましょう」とぼくらを誘った。
「夕べ、五大物産にいる知りあいから電話があっていろいろ教えてくれました」とミチコが話しはじめた。
「部長の話では、どこの商社も防衛用の部品などを扱っているそうです。それを製造している軍需企業に売るわけです。
だから、商社が研究者を求めることはありません。それに、あなたの叔父さんは戦闘機とか戦車とかを研究しているわけではなく、核融合を研究しているので、どこかの大学や企業に頼まれたかもしれないとのことでしたね」。
「それなら、商社じゃなかったかもしれないわけですね」ぼくは言った。
「そうかもしれませんね。そのときのことをもう少し思い出すようにします」ミチコは申しわけなさそうに言った。
「叔父さんは外国に行くなどとは言っておられなかったのですか」しゃかりき丸が聞いた。
「ああ。そうですね。その時は聞いていなかったと思いますが、いつか「外国で研究したいと言うことはありましたね。『おまえも秘書としてついてきてくれるか』とか」
「ミチコさんはどう答えたのですか」ぼくが聞いた。
「『しばらくならいいですよ』と答えた気がします」
「日本にいるのか外国にいるのか分かったら動けるのになあ」しゃかりき丸が大きく出た。
「ミチコさんの叔父さんは味噌うどんが好きなことを知っていたということは研究室に何回も顔を見せているということになりませんか」ぼくは聞いた。
「そうですね。もう一度自分のメモを見たいです」
「それはどこにあるのですか」
「私の自宅です。でも、危険なので行けないんです」
「それはおれたちが得意とする分野ですよ。行きましょう」
「逃げてからかなり日数が立っていますから大丈夫ですよ」
「ありがとうございます。今まで友だちにお金を借りたりしていましたから、通帳を取りに自宅に帰らなくてはと思っているのですが」
「それなら、早く帰りましょう」
「そうですね。おじいさんの世話の間に帰ります」
翌日ミチコは、「こんな記事を見つけました」と言って新聞を見せてくれた。
そこには、「ドイツ警察は、ベルヒテスガーデンで国際テロ組織のアジトを見つけた」と書いてあった。何でもかつてないほどの広大な武器の製造工場があったそうだ。
しかも、そこでは小型の核兵器が作られていて、最終段階まで行っていたそうだ。さらに驚くべきことに世界中から大勢の研究者が集まっていて、アジア系の人間も3人いたと書かれていた。
「アジア系の人間の名前はまだ出ていませんが、ちょっと心配になっています」とミチコは言った。
「テロ組織って何だい」としゃかりき丸が聞いた。
「ぼくもよくわからないけど、密かに国内や外国で破壊活動をして、相手を混乱させる組織じゃないかな」
「じゃ、それを核兵器でしようとしていたのか」
「多分そうだ。そんなことが起きたら、社会はとんでもないことになる」
「でも、そんな組織にミチコさんの叔父さんがいるわけないぜ」
「そう思いたいです」
「叔父さんの研究は核兵器に関係することだったのですか」ぼくは尋ねた。
「詳しいことは分かりませんが、石油などの化石燃料を使わずに電力を作る研究だと言っていました。
ただ、『恐ろしいものができたけど、誰にも言わないことにする』と小さな声で言っていたことを思い出しました。
しかし、叔父は天才ですから、私が聞いても分からないので、どんなことかは聞きませんでした。
それに、もしアジア人の中に叔父がいたら、逮捕されるでしょうから、いずれ日本に帰ってくるかもしれないと思います」
ぼくは、ミチコはぼくらを安心させるためそう言ったと思った。しかし、違ったのだ。
ののほん丸の冒険
第1章67
ドイツで摘発された国際テロ組織のニュースは毎日流れた。ミチコはホテルのテレビを見るだけでなく、テントに来るときに新聞を買ってきた。
ぼくらはそれを隅から隅まで読んだが、組織そのものについては新しく分かったことは書かれていたが、そこにいる研究員のことはまだ捜査中なのか新しいことは書かれていなかった。
三日後、世界から10人の研究員がいたことが報道された。アジア人は3人で、中国人、インド人、日本人それぞれ一人ずつだった。しかし、3人とも名前はなく、年令だけで、日本人は36才だった。ミチコの叔父さんは68才なので、本人とはちがうようだ。
ぼくらはミチコにどういう言葉をかけたらいいのか分からなかったが、まだ新しいことが出てくるはずだから待っているしかないのだ。
その晩夢を見た。ぼくはミチコ二人でドイツにいた。どこかの街からバスに乗った。車内はもちろん外国人ばかりでほぼ満員だった。みんな楽しそうにしゃべっているので、それとなく見ると、どこかに観光に行く団体のようだった。
ぼくらも、登山をする恰好をしていたので、親子で山に行くのだろうと思われているはずだ。ただ、ぼくとミチコだけが黙って前を向いている。
バスは郊外に出て、住宅地から広々とした平野を走った。遠くに山が見える。それに向かって走り続けている。
やがてバスは曲がりくねった坂を上りはじめた。いつの間にか森の間を進んだ。
バスの中が静かにになったので、ちらっと見ると、みんな寝ているようだ。
「この山の中にあるのでしょうか」とぼくは小さな声でミチコに聞いた。
「多分そうね」ミチコも小さい声で答えた。
ミチコと二人でドイツにあるアジトに向かっているのだ。名古屋にある商社の知りあいから電話があり、摘発されたアジトからかなり離れた場所にも核兵器の研究所があると車内でうわさになっていると言うのだ。
もし中心の研究所が見つかっても、予備のための研究所を作っているらしい。
そこに連れてこられた研究者がいれば、叔父さんもいるかもしれないと知りあいは言っているのだが、そんなことはあるのだろうかと思ったが、「それなら、そこに行きましょうか」とミチコに言ったのだった。
ミチコは、道路に表示があれば、すぐに手元の地図を見た。やがて、運転手のところに行って降ろすように頼んだ。ぼくらが降りる時、乗客全員は別れを惜しんでくれた。
道路はまだ登り坂が続いていた。どこにも建物はなく、両脇は木が密生していた。
しばらくバスの後を追うように歩いたが、標識が立っているのを確認すると、ミチコは地図を見た。左に車一台通れるぐらいの細い道があったので、「この道を行くようよ」と言った。
バス道を車が通らないか確認して、さっと細い道に入った。ぼくは、「どのくらい歩きますか」と聞くと、ミチコは、「5キロあるから、1時間ちょっと歩くわね」と言った。それから、お互い何も言わずに黙々と歩いた。
ミチコの話では、道からは見えにくい場所に第二の研究所はあるらしい。しかも、建物は平屋で草に覆われるように立っているとのことだ。どうして名古屋の商社でうわさになっているのかは知らないが、そこにミチコの叔父さんがいるかもしれないというのだ。
二人は見逃さないように歩いた。しかし、頭の中でドイツの空港でのことを思い出した。ぼくのパスポートをミチコに預ける時、ぼくの本名を見たはずだが、ミチコは何も言わなかった。ミチコがぼくのほんとのママなら、何か感じて、ぼくを見直すはずだと思ったが、そんなことはなかった。
突然、ミチコがぼくを制した。道の横に入り大きな木に隠れた。「あそこ」ミチコが指さすほうに、確かに人口物らしきものがあった。
ぼくは、「見てきますから、ここで待っていてください」と言って一人で密生している木の間を進んだ。
確かに背の低い灰色の建物があった。用心しながら進んだが有刺鉄線で囲まれているので、近くまではいけないことが分かった。
目を凝らしてみていると、いくつもの人影が動いている。ぼくは、ここにミチコの叔父さんだけでなく、パパもいるような気がしてきた。
急いでミチコがいるところに戻ろうとした。すると、遠くで犬が激しく鳴いているのが聞こえた。ミチコさん!と叫んだ時、夢が覚めた。
ののほん丸の冒険
第1章68
ののほん丸は、目が覚めるとふっーと息を吐いた。しばらく何も考えられなかったが、もう一度息を大きく吐くと、少し考えられるようになった。
夢というものはいつも突然はじまり、突然終わるものだ。しかも、訳も分からない話が続くが、心のどこかに引っかかっている人や物が出てくる。
逆に言えば、その人や物が夢を見させているのではないかと思えるのだ。
ミチコの叔父さんは、きっとミチコの夢にも出てきてるだろう。それなら、ミチコの叔父さんはドイツにいるかもしれない。
新宿駅でうつらうつらした時もぼくの夢にママが出てきた。ママがミチコかもしれないと自分で思うきっかけも夢を見たからだ。夢の中でぼくの名前を呼んだママの声と、ぼくを見て、「このバッグを預かって」と言ってどこかに走っていったミチコの声はそっくりだった。
ぼくは家族と離れ、ずっと施設にいたから、夢に特別な意味をもとうとしているだけかもしれない。
施設の先生は、夢を持ちつづけていれば、必ず実現すると言っていたが、寝て見る夢はどうなのだろうか。それを信じて行動をすればいいのか。
それは分からないので、とにかくミチコの様子をそれとなく見ることにした。朝からミチコはおじいさんの世話を一生懸命していた。ぼくは、すきを見て、「いつでも家に行けますよ」と声をかけた。
「ありがとう。夕べまた知りあいから電話があったのでお話しします」と答えたので、テツやリュウが来ると、3人で公園に行くことにした。
「夕べの電話では、誰かが研究者を集めていたらしいという話です」
「叔父さんの場合と同じですね。どこの会社か分かりましたか」ぼくは聞いた。
「具体的なことは分からないようです。大学や企業に属している研究者ではなく、フリーで研究している人をターゲットにしているようなので、商社などは直接会うことはあまりないので、それ以上は分からないそうですが」
「叔父さんと同じような立場の研究者を知っていますか」
「研究所に個人の人が来た記憶はないですね」
「その人が分かれば、その人に連絡すれば何かわかるかもしれませんよ」
「そうですね」
「明日行きましょう。実は夕べ叔父さんを助ける夢を見たんですよ」しゃかりき丸がそう言ったので、ぼくは思わずしゃかりき丸の顔を見た。
「おれとののほん丸の二人でドイツのアジトに乗りこみましたよ。トロリストたちは慌てておれたちを機関銃のようなもので攻撃してきました。
おれたちも機関銃で応戦しました。10人近くいたテロリストが逃げたので、二人で叔父さんが監禁されている部屋を探したのですがまったくわかりません。
ただ、他の研究者たちは助けることができました。
またやつらが戻ってくる音が聞こえたのであわてているところで目が覚めた」しゃかりき丸はなぜか得意そうにぼくを見た。
ぼくはそれには答えないで、「テントに戻ったら、テツに明日おじいさんの世話を頼みますよ」とミチコに言った。
「わかりました」とミチコは納得した。
テツは、「お安いご用だ。元々おれたちがやっていたことをミチコさんにお願いしているのだから、何でもないよ」と心安く承諾してくれた。
ミチコの家は町田市にあり、新宿から40分で着いた。
電車の中で、「家は親戚から借りています。家賃は少し払っていますが、この2か月は払えなかったので親戚に電話すると、『そんなことはどうでもいいよ。何かあったのか心配だったので見に行こうと思っていた』と言っていました。
監禁されていたと言うとびっくりしていましたね。『よく助かったわね。警察に行ったの』と聞いていたので、お二人に助けてもらったことを説明しました。
叔父のことも心配して、『早く警察に行かなきゃ』と言っていましたので、家を見てからそうします」と話した。
駅前からバスに乗り20分ぐらいで住宅地に着いた。「あの青い屋根の家です」とミチコは言った。
ののほん丸の冒険
第1章69
ぼくらはミチコの家に向かったが、走ったりしないようにした。そこは住宅地なので人や車の往来は少なかったが、この近くに住んでいる親子が歩いているようにしたかったのだ。
昼間からやつらが来るとは思えないけど、用心には用心しておかなければならない。
家に近づくと、家のまわりは高さ1メートルぐらいの石垣があり、その上にも短い木が植えてあった。そして、門扉がある。ぼくはミチコに、「どうして家に入れますか」と聞いた。
「門扉のキーと玄関のキーは取られてしまったのでないのですが、スペアは置いています。玄関の左側に植木鉢が4つあります。右から2番目の植木鉢を上げてもらうとビニール袋があります。そこに入れています」
「それなら、おれが取ってくる」としゃかり丸が道を渡った。そして、あたりを見てから石垣の上に飛び乗り庭に降りた。
そして、すぐに出てきた。「あった、あった」と小さな声で言って、ミチコに渡した。
「ありましたか。すぐに見てきます」ミチコは急いで家に向かった。ぼくらも道を渡った。
門扉はすぐに開いたので、ミチコはすぐに入った。ぼくらも続いて入り、門扉を閉めて、錠を回した。
それからミチコは玄関のキーをそっと回した。玄関も開いた。そのまま家に入った。
ぼくとしゃかりき丸は、門扉の左右に分かれて身をかがめた。
10分ぐらいで玄関がゆっくり開いてミチコが出てきた。旅行バッグを持っている。しゃかりき丸がすぐにそれを取った。それから、門扉を少し開けて前や左右を見て外に出た。
3人は何も言わず、今度は速足でバス停に戻った。バス停に着くと、4,5人の人がバスを待っていた。
ぼくらはその陰に隠れるように立った。ミチコは「ありました。誰も来ていないようです」と小さい声で言った。ぼくとしゃかり丸は黙って頷いた。
5分ほど待つとバスが来た。バスの中でも何も話さなかった。
電車に乗ると乗客が少なかったので、しゃかりき丸はあたりを見て、「やつらは来ていないみたいですか」と小さな声で聞いた。
「そうです。荒らされた形跡はまったくありませんでした。それで、急いでメモとか服をカバンに詰めてきました」とミチコが答えた。
「携帯は取られたんですよね」しゃかりき丸がまた聞いた。
「そうです。電話番号も見たでしょうが、友人の番号しか入れていないのであきらめたかもしれませんね。
それに、監禁されている間は、叔父のことを自分の父親と言いつづけていたので、それ以上携帯を調べなかったのかもしれませんね。
とにかく私の口から聞きだそうとしたのでしょうが、ほんとに私もわからないのですから、相手も困っていたようです」ミチコは少し笑顔で答えた。
「それはうまくいきましたね」ぼくも笑顔で言った。
ミチコはしばらく自分のメモを見ていたが、「叔父と同じように一人で研究していた人が3人ほどおられましたが、幸い電話番号も書いていましたので、後で電話してみます」と言った。
ぼくらは、そのままテントに戻っておじいさんの世話をすることにした。
テツとリュウがいたので、ミチコの家のことを話した。
テツは、「それはよかった。何か分かるかもしれないな」と喜んでくれた。
翌日、おじいさんの世話がすむと、ミチコが、「公園に行きましょう」と誘った。
「二人が電話に出ました。叔父のことを心配してくれました。ただ、二人とも
それぞれ別の研究をしているので、叔父の研究は詳しくありません。
それに、自分の研究について話すことはあまりなかったようです。お互い研究の邪魔をしないようにしていたようです。時々、息抜きのために世間話をしていたようです。
私が研究所にいる時に3人の誰かから電話がかかってくることがありましたし、また、叔父に、誰かに電話するように言われることもありました。
しかし、3人目の方は、何回かけても電話に出られないのでちょっと心配しています」ミチコの顔が曇った。
ののほん丸の冒険
第1章70
ミチコはそれから何回も電話をしたそうだが、誰も出なかった。
ぼくは、「どこの人ですか」と聞いた。
「北海道です」
「北海道ですか。少し遠いですね。でも、行きませんか」とぼくはすぐに言った。
ミチコは驚いた顔をしてぼくを見た。「しかし、費用がかかりすぎます。ずっと電話しますから」
その日はそのままテントに帰って、おじいさんの世話をした。それから、数日、ミチコは電話をしたが、連絡は取れなかったようだ。
不確かなことでお金を使うことを遠慮しているはずだから、ぼくは北海道に行くことを強く勧めることにした。
案の定、ミチコは「これ以上お金を出していただくことはできません。返すと言っても受け取らないのですから。それに、住所もはっきりおぼえていません
」と断った。
よく聞くと、5,6年前、ミチコの叔父さんがその人に北海道まで遊びに来るように言われたとき、「何かのビルを右に曲がり、それから、次を左に10分ぐらい歩いた小さなビル」と言っていたような気がすると言ったので、それなら、時間をかければ見つかりますよ。
お金はパパが送ってくれたのがありますから大丈夫です。ここで寝泊まりさせていただいているので、使うこともありませんから」とミチコが断れないように言った。
ようやく、ミチコは自分一人で行くことで了承した。一番心配していたおじいさんの世話も、ぼくらがすることで納得したのだった。
ほんとは、ミチコと、ぼく、しゃかりき丸の3人で行きたかったけど、仕方がない。ミチコからの報告を待つことにした。その結果にしゃかりき丸はとても残念な顔していた。
ぼくは、行くことに決めた以上は飛行機で行くべきだと主張したので、ミチコはそうした。
翌日の夜電話があった。「昨日は昼過ぎについたのでよく調べられませんでしたが、今日は朝から歩いて、見つけましたよ」と声が弾んでいた。
「ほんとですか。研究所はあったんですか」と聞くと、「ありました。でも、誰もいませんでした。それで、管理会社に連絡すると、『解約はされていません』と言うので、事情を話して、借主を教えてもらいました。叔父の友だちでしたのでまちがいありません。
しかし、契約書の住所を教えてくれたのですが、電話ができたい番号なので、本人と連絡は取れていません。それで、明日、自宅らしき家に行ってきます」
と報告した。
「ミチコさんはすごいな。どんどんやっている。後は明日の結果待ちだ」しゃかりき丸も聞き耳を立てていたのだ。
翌日午後8時。いつものように定時にミチコから電話が来た。「札幌から電車で2時間ほどかかりましたが、奥様と会えました」と言ったので、しゃかりき丸が急いでぼくのそばに来た。
「奥様がいました。70才ぐらいの上品な方です。最初不安そうな顔をされていましたが、訪問の理由を言うと、『すぐ上がって』と言われました。
それから、奥様はご主人がいなくなったことを話してくれました。帰らなかった日は、私がののほん丸にバッグを預けた後監禁された日の数日後だったようです。
帰らないので心配になって電話しても出ないので、夜遅く研究所まで行かれたそうです。
ドアは閉まっていたので、スペアキーで開けたそうですが、どこも異常がなかったということです。
年に一回ぐらい、アイデアが浮かぶと家に帰る途中でも電車を降りて近くのホテルに泊まってアイデアをまとめることがあったそうですが、そんなときでも、
時間がたっても電話がかかったのですが、その日からまったく電話もないとおっしゃっていました。
すでに電話は呼び出しもできないし、知りあいに位置情報を調べてもらっても、分からないようです。
警察に行方不明の捜索を頼んだのですが、事件性がないということで受理されませんでした。ただ、身元が分からない死亡者がいれば連絡しますという返事だったそうです」
「叔父さんと一緒ですね」ぼくは答えた。
「そうですね。それから、行方不明になる日の前後のことも聞きました」