ののほん丸の冒険 第1章101~105

   

ののほん丸の冒険

第1章101
2時間ほどで大雪山国立公園に着いた。それから、沼めぐり登山コースを申しこんだ。このあたりはヒグマが出るので、注意事故を聞いて出発することになった。
10月半ばで大勢の人が高揚を楽しんでいたが、ぼくとしゃかりき丸は、沼などの近くに紫色のダイセツトリカブトがないかを見て歩いた。
しかし、登山道を離れてさがすわけにはいかないので、横目であちこち探したのだった。
一人のおじいさんが、「君らは二人で来ているのかい」と声をかけてきた。
「そうです。紅葉がきれいと聞いていたのではじめて来ました」と無難に答えたが、しゃかりき丸が、「ダイセツトリカブトは咲いていますか」と聞いてしまった。
おじいさんは、えっという顔をしたが、「トリカブトに興味があるのか」と言った。「紫色のきれいな花だよ。ダイセツトリカブトはこの辺にしか咲かないけど、トリカブトは沼地なら日本中のどこでも咲いている。ただ、毒があるから素手で掴んではいけないよ。ほらあそこに咲いている」と言って、道から離れた場所を指さした。
背丈の長い草が密生している間から、確かに紫の色の花が見えた。あれがダイセツトリカブトかとぼくらは立ち止まって見ていた。
「あちこち咲いているから、進んだほうがいいよ。3時までには帰らなくて行けないからな」とおじいさんはぼくらを促した。
確かにあちこち咲いていた。ほとんどおじいさんが教えてくれたので分かったのだが。
おじいさんは昔中学で理科を教えていたそうで、ダイセツトリカブト以外の植物も話しだすと止まらなかった。
とうとうしゃかりき丸が、「どこかに建物がないですか」と聞いた。
「建物?どんな」
「住宅のような」
「ここは国立公園だよ。個人の住宅は立てられないよ。それにこのあたりはさっき聞いたようにヒグマが住んでいる。食べもののにおいで近づいてきたら大変なことになる」おじいさんはあきれたように答えた。
それからも植物の講義が続いた。さすがに先生をしていただけあって楽しかった。ただ頭の片隅では、このあたりを探すのにはどうしたらいいのか、また、それが無理ならどこを探したらいいのかを考えていた。
それで、ハイキングコースが終わりに近づいたので、思い切っておじいさんに、例の写真を見せて、この写真を見てくれませんか。鮮明ではないのですが、この写真に写っている人はぼくの知りあいのご主人なんです。奥さんがまちがいないと確認しました。
と言うのも、ご主人が行方不明になって3年たつのですが、警察にも行方不明者の捜索願いを出していても、まったく行方が分かりません。
最近、こんな写真が送られてきたので、生きていると喜びましたが、誰が送ったのか、どこにいるのは分かりません。写真をよく見ると、トリカブトが写っているような気がして、ぼくらがあちこち探しているんです」
おじいさんはじっと写真を見ながら、「それは心配だな。きみらはこの人とどんな関係なんだい。おじいさんか」
「ぼくらは東京から来ているんですが、遠い親戚なんです。ぼくらの母親の叔母さんの主人です。奥さんが困っているので、二人で探しているんです」
「なるほど。それは心配だな。確かにトリカブトらしいな。場所も沼地のようだな。ただ、写真の写りが悪いので、どのトリカブトかは判断できない。
そうか。それで、このあたりに建物はないかと聞いていたんだな。はっきりしているのは、このあたりには建物がないということだ。その人は道内に住んでいたのか」
「そうです。札幌市内です」
「トリカブトはどこにでも咲いているから、まず建物を探すほうが早いかもしれないね。それと、何人か写っているけど、どういう関係だろう。住所を知っているのは犯罪のにおいがする。
そういうことをもう一度警察に言ったほうがいいよ。きみらは探偵好きそうだから、自分らで調べたいのなら、ぼくも調べておく」
そして、午後3時にヒグマ情報センターに戻ってきた。スタッフからの確認などが終わるとそれそれ帰ることになったが、おじいさんとはしばらく話をした。おじいさんがトリカブトが咲く場所を調べてくれることになったが、まずは警察からの連絡を待ったほうがいいと言ってくれた。
ぼくらも奥さんの家に帰ることにしたが、帰り道しゃかりき丸は、「これは厄介なことになったな」とため息をついた。
「確かにすべての場所を探すのは不可能だね」ぼくも賛同せざるをえなかった。

ののほん丸の冒険

第1章102
奥さんの家に帰ると、すぐに沼めぐりコースで、ダイセツトリカブトを見たが、建物などはなかったことを話した。しかし、奥さんは無事に帰ってきたことを喜んでくれてから、警察に写真にはトリカブトらしい花があると説明したが、とにかく今捜査中だからと言うばかりだったそうだ。
それなら、ぼくらだけで何かするしかないと決めて、もう一度植物図鑑を見ることにした。
ダイセツトリカブトはダイセツ山系でしか咲かないらしくて、しかも、国立公園なので住宅は立てられないそれで、他のトリカブトが咲く住宅地を探すことにした。
トリカブトは全国にあるが、やはり北海道の中央部が多いらしいので、住宅や別荘の情報も集めた。
それで、知床半島や日高山系などは省いて、十勝地方を調べることにした。つまり帯広を中心に、森などの近くに住宅がないか調べることにした。
しばらく帰ってこられないかもしれないので、荷物が一杯になった。奥さんは、必ず一日に一回は連絡するようにと言って、札幌駅で切符を買ってくれた。
帯広は空港からも近く、病院や店などが近くにあるので、住宅だけでなく、別荘、避暑地などで人気があるようだ。
「市街地ではあいつらも困るだろう。それに森などがないとトリカブトは咲かないからな」しゃかりき丸が地図を見ながら言ったので、ぼくは、「まず郊外を先に探そう」と答えた。
それで、あちこちの不動産屋に電話をして、「親が、森が近くにある別荘を聞いておくようにと言っています」と聞いた。
「それなら、案内します」と言ってくれる不動産屋がいると、帯広駅まで迎えに来てもらった。
「家族でアメリカにいたんですが、日本に帰ることになったんです。でも、母が東京のような大都市に住みたくないというので、ぼくら兄弟が先に帰って情報を集めているんです。
父が北海道で生まれたので、まず北海道を調べておけと言うものですから。仕事の整理がすんだら帰ってきます。決まらないとホテル住まいが長くなってしまうので急いでいるんです」ぼくは一生懸命話した。
「なるほど。急がなくちゃいけないんですね」若い営業社員はうなずいた。
「何か所か回りたいんです。まわりの風景とか家の内部とか親が決めますから」
「わかりました。三か所ぐらい回りましょうか。どこもすばらしい物件ですよ。親御さんも迷われると思います」若い営業社員は大きな声で言ったが、ぼくは慌てて、「中古物件でお願いします。子供は東京で住みたいもんで」とつけくわえた。しゃかりき丸をちらっと見ると、ぼくにうなづいた。
最初は床が高い家だった。これは写真から判断して、どうもちがうようだと思ったが、営業社員の案内で部屋の中を見た。近くに林があって、トリカブトが咲くかもしれないが、室内から写真を撮ると、どうも高さがありすぎる。
二軒目はそこから30分ほどの場所で、裏に森があり写真に似ているが、同じような別荘が集まっている。これはあいつらも警戒するだろう。
三軒目も、そこから30分以上かかった。かなり坂を上った。森がすぐ後ろにあり、隣の家とはかなり離れている。
内部から写真を撮ると、例の写真と似ている。「ここは誰が住んでいたのですか」と思いきって聞いた。
「10年以上空いているんですが、私が入社する以前のことで、会社に帰らないと分からないのです。
ちょっと不便なので、何人か案内したのですが、借り手がないのです」若い営業社員は少し言いにくそうに答えた。
10年前なら関係ないかと思ったので、背後の森近くに後2件あるので、その別荘のことを聞いた。
「こちら側は夏だけ来られる方がいます。向こうは東京の会社が所有しています。たまに車が止まっていますが、よくわかりません」
「それじゃ。部屋を見ることはできないのですね」
「そうです。でも、基本の作りは一緒です。忘れていましたが、地下室もあります。見ますか」
「見せてください」
玄関に入り、2階に上がる階段の下の床を開けると、また階段があり、そこを下りるとかなり広い地下室があった。ぼくは胸騒ぎがしだした。

ののほん丸の冒険

第1章103
階段を下りて地下室に入った時、胸騒ぎがしたのは、少し離れたところにある三番目の別荘の地下室にミチコの叔父さんや奥さんのご主人が監禁されているような気がしたからだ。
同じ企業が建てた三軒の別荘のうち、最初に見た別荘には地下室がなく、ここと東京の会社が借りている三番目の別荘には地下室があるという。
10年前から貸家になっているこの地下室には何もなく、20畳ぐらいの地下室は広々としていた。ここなら、4,5台の机は置けそうだ。
「ここは広そうですね」ぼくは聞いた。
「ジムとして使っている人が多いようです」
「両親はスポーツが好きですので、多少高くても地下室があるほうが喜ぶと思います」しゃかりき丸も聞いた。
「そうですね。こちらのほうが絶対お得だと思います」
「向こうの別荘もそうされているのですか」ぼくは三番目の別荘について聞いた。
「会社の保養所として利用されているようですから、たぶんそうでしょう。それじゃ、駅までお送りしましょうか」と営業社員は急かした。
ぼくは返答に困ってしゃかりき丸の顔を見た。すると、しゃかりき丸は「両親が、家だけでなく、まわりもよく見ておけと言っていたので、二人でこのあたりをぶらぶらしますので、ここで失礼します」と助け船を出してくれた。
若い営業社員は、二人が子供なのでか、「バス通りまで、小一時間ぐらい歩きますけど大丈夫ですか」と確認してから、「ご連絡をお待ちしています」と言って帰っていった。
しゃかりき丸は、「ここと同じ作りだと言っていたな」と言った。
「4,5人の研究者でも大丈夫そうだった。」二人は、怪しいとにらんでいた三番目の別荘に向かった。
三つの別荘のすぐ後ろには林があり、また建物と建物の間にも多くの木が植えてあるので、お互いの建物が見えないようにされていた。これは秘密を守る上で最高の工夫になっていた。
別荘に着くと、すぐに裏側の部屋の壁から、20メートルぐらい離れている林を見た。送られてきた写真で確認するとよく似ている。今はトリカブトの花は咲いていないのので草だけでも持ってかえろうとしたけど、下草が伸び放題なのでよくわからない。
写真は何枚も撮った後、家のまわりで手掛かりになるものはないか探したが、きれいに片付けられていて、何も見つからなかった。「逆に何もないというほうが怪しいな」しゃかりき丸は推理した。
それからも、1時間近く探したが、暗くなってきたので帰ることにした。
奥さんに、別荘の様子を説明したり、撮ってきた写真を見せたりした。「あの別荘のような気がします。後はどこが借りているか調べます」ぼくは奥さんに約束した。
翌日、不動産屋に連絡した。幸い、案内してくれた社員がいたので、「あれから、両親に話したら、やはり地下室があるほうがいいし、山の風景などを見たら、どこかの会社が保養所として借りている別荘をどうしても借りたいと言うんですよ」と思いきって話した。
営業社員は意味が分からないようで、言葉が出なかった。
「『そんなこと無理だよ』と言ったんですが、『何とかならないか聞いてくれ』と粘るものですから、無理は承知で連絡しました」と精一杯芝居をした。
「はあ。どうさせていただいたらいいのですか」営業社員は困りきった様子で答えた。
ぼくはさらに続けた。「移転費などはこちらが持つので、その会社に聞いてもらえませんか」
「そうですか。でも、こんなことははじめてなので、上司に聞いてみます」
その日はこれで話は終ったので、翌日また攻撃した。家業社員は、「上司からお断りするように言われまして」と板挟みの返答をしてきた。
「会社に聞いてもらえたのですか」と聞くと、「それは上司の判断だと思います」
「会社名だけでも教えてもらえませんか。こちらから電話したりしません。父親がニューヨークで貿易会社をしていますので顔が広いです。もし知りあいの会社なら連絡するかもしれませんが、それ以外連絡をしませんから。それは父親も分かっています」ぼくも板挟みになっていることを相手に印象づけた。
営業社員は少し考えていたが、「ほんとは上司の許可がいるのですが、そこまで言われるのなら」と折れてくれた。

ののほん丸の冒険

第1章104
営業社員は、「東京通商の子会社らしいです」と答えた。ぼくはそれを聞いた時驚いたけど、よく考えると東京通商は世界的な商社なので、いくらでも子会社があるはずだ。しかも、研究者を何らかの目的で誘拐するようなことをするだろうかと思った。
営業社員は、それくらい言っておけばいいだろうと考えたかもしれないが、「でも、子会社なんですね。契約している会社名を父に伝えたいんです」と再び聞いた。
営業社員は少し黙ったが、「契約している会社は菱和貿易です」と今度ははっきり言った。
「菱和貿易。ありがとうございます。早速父に連絡しますが、お約束どおりこちらから連絡しないように言っておきます」と言って電話を切った。
ぼくは、すぐミチコに電話をかけた。「東京通商の子会社の菱和貿易と言っているんですね。すぐに調べてもらいます」と答えてから、おじいさんの様子などを話して電話を切った。
奥さんは、菱和貿易という名前を聞くと、どこかで聞いたことがあると大きな声でいったので、しゃかりき丸とぼくは顔を見合わせた。二人は、「菱和貿易を追いかけたら必ずミチコの叔父さんや奥さんのご主人を見つけだせるはずだ」とお互い無言で話した。
奥さんは、すぐご主人の書斎に行って名刺などを調べはじめた。集中したいだろうと思って、居間で待っていたが、30分ぐらいすると、「一緒に探してくれませんか。他の人の目で見てもらおうと思って。よく似た名前はあるのですがちがうようです。住所が分かればいいのですが」
「それはぼくのミスです。さりげなく聞こうとして、つい聞きそびれました」とぼくは謝った。
「いえいえ。住所を聞くのも不自然ですものね。確かに聞いたことがあるのですが、なかなか思いだせなくて」と奥さんも恐縮した。
3人で、名刺、ノート、論文集のファイルに分かれて1時間以上調べたが、菱和貿易の名前は見つからなかった。
最初から偽名かもしれないし、不動産屋も深く調べて契約することはないだろうと思ったが、それは二人には言わなかった。
それに、ミチコから連絡が来れば何か分かるかもしれないのだ。貿易商社に勤めているミチコの友だちなら情報は持っているはずだ。
それから二日たったが、ミチコから連絡がない。小さい会社なら、そうすぐには見つからないだろと考えていたら、三日後、営業社員から連絡が来た。
「お父さんはどうおっしゃっていましたか」と話しはじめた。
「まだ連絡をしていません」もおかしいから、「伝えたんですけど、帰国の準備で忙しいので、後から連絡するといっていました」と言うことに決めて、そう言うとしたら、「朗報です」と大きな声で言ってきた。
理由を聞くと、「例の別荘を借りている会社から電話があって、別荘を解約したいと言ってきたんですよ」と言うのだった。
「ほんとですか。父と母も喜ぶでしょう。先日話した時も、あの別荘に執着していまして、『あそこからの山並みの景色はすばらしいから、もし貸してくれたらゆくゆくは買ってもいい』とか言っているんですよ。
しかし、どうなるか分からないから、『もう少し待とうよ』と言っていたんです」
「そんなに気に入っていただいていたんですね」
「菱和貿易の住所はどこですか」ぼくは思いきって聞いた。
営業社員は驚いたようだったが、住所を教えてくれた。
そして、営業社員も負けていない。「そろそろスキーシーズンがはじまりますので、会社としましては、空いている2件の別荘の営業に力を入れることにしました。
それで、他の営業もお客様を案内していますのでお知らせしておきます」
「どうして解約されたんですか」と聞いた。
「どこか外国に営業本部を移されると聞いています。急に決まったそうで、お話では11月10日に別荘を引き払うようです」

ののほん丸の冒険

第1章105
11月10日と聞いた時は、ぼくはびくっとしたけど、それに触れずに、「分かりました。早く返事をするように父を急かします」と言って電話を切った。
しゃかりき丸にそれを言うと、「いよいよ動きだしたな。すぐ作戦会議だ」と叫んだ。
「まずミチコさんに連絡しよう。何か分かったかもしれないから」ぼくはすぐ連絡した。
今回はすぐに出た。「まだ友だちから連絡がないから遅くなっています。ごめんね」とのことだったので、ぼくから新しい情報を話した。
「確かに怪しいね。それで追いかけるんでしょう」
「そうです。あと三日あるから、作戦を練ります」
「でも、トラックで来るんでしょう」
「まちがいなくそうです。そこをどうするか考えます」
「ののほん丸はお父さんからお金を送ってもらっているようだけど、あまり使っちゃだめよ。これからお金がいるんだから。会社が分かったらすぐ連絡します」と言って話が終わった。
奥さんも呼んで会議を開こうと思った時、しゃかりき丸が、「もう人連絡するのを忘れていた」と言って携帯電話を持って別の部屋に行った。
しばらくして帰ってきて、「これで作戦を遂行する人間が揃った」と笑った。
居間に来た奥さんが聞いた。「誰ですか」と驚いたように聞くと、「三上さんです」しゃかりき丸が得意そうに答えた。
「三上さんに連絡したのか」ぼくは思わず聞いた。
「そうだよ。三上さんは『何か困ったことがあったら連絡しろよ』と言ってくれていたからな。それで連絡したんだ」
「確かにミチコさんも、『引越しならトラックで来るから、あなたたちではむずかしいね』と言っていたからね。助けてくれるなら助かる」
「それと、『わしも作戦を考えておくよ』と言ってくれた」
「そうね。子供がうろうろしていたら目立つわ」奥さんもぼくらを心配してくれた。
3人で話しあったが、やはり三上さんの協力がないとトラックがどこに行くか分からないのだ。
翌日も三上さんから電話があった。しゃかりき丸が話を聞いたが、11月10日は、三上さんと友だちの佐藤さんがそれぞれの車で来てくれるそうだ。
佐藤さんの車ならどこまでも追いかけかけられるそうだよ」しゃかりき丸は楽しそうに話した。
「これで何が起きても対応できそうだな」ぼくは感心した。
「そうだよ。三上さんは、自分たちは林の木を切る作業員としてふるまうと言っていた」
「もうお任せします」
当日、早朝5時に2台の車が来た。三上さんも、初めて会う佐藤さんも作業員の格好をしていた。
奥さんは礼を言って、少し休んでくださいと言ったが、三上さんは急ぐことを決めた。
「きみらがどうしているか心配していたんだよ」
「写真にトリカブトらしきものが写っていたので,それがどこか二人で探していたんです」
「すばらしい推理力だな。そして、行動力だ」
「三上さんがいてくれたので、あいつらがどこに行ったのか分かったんです」
「いやいや。尻切れトンボになってしまったからなあ。今日は追いかけるよ」
車は、4時間近くかかったが、別荘の近くに来た。まだ引っ越しの車は来ていない。
「向こうの端の建物です」ぼくは教えると、三上さんと友だちの佐藤さんは別荘からバス通りに出る道を調べた。とりあえず2台の車は林の裏手にある農道のような道に止めることになった。
それから、枝切ばさみなどを下ろして準備ができた。それから、30分ぐらいたって大きなトラックが来た。4人の男たちが下りてきた。そして、トラックの荷台を開けてから、別荘に入っていった。
荷物の運び出しがかなり進んだ時、三上さんが一人別荘のほうに向かった。

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