のほほん丸の冒険
第1章111
それで、「実は」と言って、今までのことをかいつまんで話した。山岡さんは、「伯父さんを探すために、兄弟でがんばったんだね。それにしても、一つ一つ事実をつなぎあわせていくのは学問と一緒だよ。
警察にも相談しているということだから、きみらが見つけた証拠を使って、伯父さんは必ず見つかると思うよ」
大雪山のときに言った内容まで訂正しなかったのは気がかりだったが、ぼくは
「ありがとうございます。ただ、次々と追いかけることが出てくるので、今後どうなるのか心配なんです」と答えた。
「また研究のことを言って申しわけないが、どんどん研究が進んでいるときは、もっと行こうもっと行こうと思うものだが、それがちがう道を言っている場合がある。
何かおかしいと思うときは、どこかで一休みすることも必要だ。だから、進めなくなって立ち止まったときのほうがうまくいくことがある。
私もたまに論文を出すこともあるけど、早く手柄を立てようとすると大抵うまくいかないもんだよ。誰かがすでに研究していることもある。
きみも、今までのことを振りかえったら、何か見落としていることが分かるかもしれない。ただ、きみらがしていることはとても危ないことだから、無理はしないことだ。警察が捜査しているはずだから、伯父さんは見つかるかもしれないから」
ぼくは、「貴重なご意見ありがとうございました。またお電話します」と言って電話を切った。
そうだ。山岡さんが言うとおりだ。それで、今までの流れをもう一度考えなおすことにした。
東西商事はテツとリュウが追いかけてくれることになった。
ぼくは、しゃかりき丸に今までのことを振り返ることを提案した。しゃかりき丸も、「実はおれも、追いかけるのが世界的な会社から徐々に町工場のような小さな会社になるので大丈夫かと思っていたところなんだ」とぼくの考えに賛成してくれえた。
そこで、すぐに公園に行って、さっそくぼくがミチコからカバンを預かるところから話をはじめた。
「おれたち3人がそれぞれ監禁されたときは、あいつらは例のカバンはどこにあるんだと脅すばかりだったな」としゃかりき丸が言った。
「そうだった。しかし、ミチコからカバンを預かったときはミチコの伯父さんはすでにどこかに連れ去られていたんだ。だから、カバンが手に入らなかったら、伯父さんに直接研究内容を聞こうとしていたかもしれない」
「それにしても、おれたちを監禁した会社は全部ちがう名前だったな」
「そうだった。あれは今でも分からないけど、研究書類が高く売れるので、会社同士で競争していたと思える」
「なるほど。それで分かった。そして、ドイツのテロ組織の事件か。あそこでも研究者が監禁されていたんだな」
「それで、ミチコと北海道の福田さんが知りあうとになったわけだ」
話は北海道での出来事が続いた。佐々木、ジェームス・ミラー、東京通商、菱和貿易、セイワ化学、関東実業、東西商事などの名前が出た。
「分からないのは3つだ。誰が写真を奥さんの郵便受けに入れたか。なぜ佐々木とジェームス・ミラーが殺されたのか。そして、奥さんが車の中で佐々木が電話でしゃべっていたコ―ズモスとは何なのか」ぼくは夕べから考えていたことを話した。しゃかりき丸は、「確かに」とうなずいた。
「それで申しわけないけど、ぼく一人で北海道に行ってくる」と、これも夕べ考えて計画を話した。
しゃかりき丸はびっくりした顔をしたが、すぐ「了解した。きみのことだから、もう奥さんには連絡しているだろう。おれは、ここでテツから東西商事についての連絡を待つことにする」と笑った。
のほほん丸の冒険
第1章112
新宿に戻っておじいさんやミチコに挨拶をしてから札幌に行ったので午後8時過ぎになったが、奥さんはごちそうを作って待っていてくれた。
お互い今までの情報交換をしたが、目立った動きはなかった。奥さんの話では、警察から捜査を続けているという連絡が一度来ただけだった。
「『どんな状況ですか』と聞いたのですが、『写真の風景もすべて確認して、それらしき場所で近所の人から話を聞いたのですが、人が出入りするのを見たことがないということだったので、さらに調べています』と木で鼻をくくる返事でしたね。それに、殺されていた二人の人間も佐々木やジェームス ミラーなのかも分からないようです」奥さんは悔しそうに言った。
「やはりスパイなので身元が分からないようにしているのでしょうか。でも、警察も国際的な協力機関があるので協力すればすぐ分かりそうなものですが」と奥さんに感想を言った。それから、奥さんの家の郵便受けに入れられていた写真から、トリカブトらしいものが見える別荘を見つけ、そこにあったスポーツ器具を追いかけていることを話した。
しかも、別荘の借り主は東京通商とその系列会社の菱和貿易という商社であることが分かったときは興奮したことを話した。「これでご主人やミチコの叔父さんをすぐに救いだせると確信しましたよ」
そして、別荘が解約されたことも知って、ぼくとしゃかりき丸は興奮しました。それは奥さんのご存じです。最初は三上さんや佐藤さんのおかげで漁通センターに運ばれたことが分かりました。それから、東京の町田に運ばれ、セイワ化学、関東実業とスクラップ会社をたらい回しされていくのです。今は関東実業から別の会社に行っているはずです。今考えれば、どんなことでも注意深く計画されているのかもしれません」
それを聞いていた奥さんは、「そうすると、東京通商や菱和貿易が主人たちを監禁した会社と言えるわけですか」と聞いた。
「ぼくも、最初そう思いました。しかし、世界的な商社がテロ組織を作ったり加担したりするとは考えられません」
「確かにそうですね」奥さんもうなずいた。
「それに誰が二人を殺したのかという大きな問題があります。警察も被害者が誰なのかもわからないそうですから、解決には相当時間がかかりそうです。
ただし、警察がご主人たちの行方が分かればすぐにでも助け出してくれるでしょう」
そして、奥さんに「しばらく佐々木が下りた場所を調べようと思いますが、警察はあのあたりを調べたのでしょうか」と聞いた。
「私は警察にちゃんと言いました。研究所に来ていた佐々木という男が下りたことは分かっていますからと。
警察の話では、佐々木らしき男を見たことがある人はいたようですが、それ以上は分からないと言っていました。それに、あの一帯は北海道でビジネスをしている外国人が多いらしいです」
「そうでしたか。先日ぼくもこれからどうしたいいのかと考えているときに、大雪山で知り合った人から電話がありました。
その人は山岡というおじいさんで昔理科の教師をしていたそうです。トリカブトのことをいろいろ教えてくれました。
それで、心配して電話をくれたようです。あのときは詳しいことは言わなかったのですが、もう少し話をしました。
すると、大人の助けがあるとはいえ、よくそこまで追いかけたなあとびっくりされました。
しかし、スポーツ器具が処分されたら今後どうしたらいいのか迷っているんです」と率直に聞きました。
先生は、自分は社会のこともよく分からないし、きみのような国際テロ事件のことなどは知らないけど、植物の研究などでは、楽しようと考えていると新しい発見はできないな。どうしてこうなったかを見つけるためには長い時間が必要だ。自分は横着者だから、一流の研究者になれなかったんだと笑っておられました。
きみがみんなのためにやつていることはすばらしいことだけど、ぼくが言えるのはそれくらいだ。
また北海道に来たら連絡してくれよ。一緒に話そうじゃないかと誘われたので、来たんですよ。確かにわからないことだらけですから」