赤い糸

今日も、ムーズが降りてきた～きみと漫才を～

「赤い糸」
正月に家に帰るために高速に乗った。
去年は、あちこちに「挿入して」とか「妊娠」とか書いてあったのでドキドキしたが、よう見るとETCカードを「挿入して」、「認証させる」やったとかゆうた。
今年は、めでたく自分で挿入して、妊娠させた。ちがう、認証させた。
この数年、カードを何回か申しこんだけど、その都度はねられた。
自己破産はしてへんけど、会社を破産させたから、「ブラック」になっていたんやろな。
「そっちがその気なら、一生いらんわい」と思うていたけど、「割引」には勝てんかった。
ようやく「年季」があけて、届いたとゆうことや。
ところで、「早いもんが勝ちが美徳」のわが大阪は、この不況でどうなっているのやろかとおそるおそる向った（オイルショックのとき、最初に便所紙を取りあいしたところやからな）。
せやけど、阪神高速の環状線に入るとき、タクシーがライトを消して入れてくれた。
「娘の給料より安い」と嘆くタクシーの運転手が多いのに、何というやさしさ。
ハザードで礼を言ったが、ひょっとして次女のお下がりの赤くて小さい車に乗っているので、自分の娘を思いだしたか、クゥー。
ぼくにとって、車の運転はストレスの最供給源やから、大阪にいるときは暴走族もちょっかいだせへん車に乗っていた（それで妬みを買うていたのは薄々知っていたが、成功の証や思う愚かさのほうが強かった）。
まあ、そんなこんなで、家に帰って酒やおせちをたらふくいただいたわけやけど、体がおかしくなった。腹が張ってしゃあないのや。それも、このような生活を始めてからずっと。
以前、テレビで、デザイン会社に入社したOLが、ゲップが出てどうしようもなくなった。次に、おならが出そうになって、異常にトイレに行くようになったようなことをゆうていた。
また、単身赴任をしたサラリーマンが、めでたく家からの勤務になったが、どうも居場所がなくなって、また単身赴任を希望するケースもあるようや。
ぼくもおんなじようなことになった。緊張しいなんや。それにしても、自分の家で緊張するとはな。
２年前の義理の姪の結婚式でフランス料理を食べている最中に差し歯が取れたし、昨年末は義父の死亡を聞いて車で駆けつけているとき、おにぎりといっしょに歯を食べそうになった。
病気のデパートと自認している、毎日放送の角淳一が、「最近は高層ビルを見ても、ようがんばっているなあと涙が出てくる」とゆうていた。
確かに年を取ると、大病をせんでも、自分の内外のもんがどんどん細くなってくるので、気ぃ張っとかんと倒れるんとちがうかと思う。
内では、「目の視神経はしばらくはもつでしょう」やし、「歯のブリッジの長さが限度です」とゆわれている（それで、かぶせたもんが取れたようや）。
一度小脳梗塞をしているから、血の通り道もどうなっているかしれたもんやない。
外も、おんなじように細うなっている。
「赤い糸」ってゆうやろ。人生の機微をあらわす、なかなかええ言葉やと思うけど、「赤いロープ」なんてもんはないやろな。
「いいや、自分たちのは、誰にも邪魔されないように赤い有刺鉄線です」とかゆうやつがいるかもしれんけど、そうゆうおめでたいやつには、久本雅美のように、「それって、錆びてるだけじぇねー？」とゆうとくわ。
とにかく、最近とみに細くなったと思う向きは、自分から距離を縮めることやな。
目や歯ぁなら、手術や入れ歯があるけど、「赤い糸」は切れたら終わりや。

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