新しい国(1)
今日も、ムーズが降りてきた~きみと漫才を~
「ほんとにヘンな童話100選」の(152)
「新しい国」(1)
「ケン、定例会議を前倒しすることはできないかな」ノックする音が聞こえたので、ドアのほうに振り向くと、体を半分入れたジョンが言いました。
「どうしたんだい?そんなに急いで」ケンはあきれたように言いました。
「いやいや。みんなが困っているので、きみに相談しようと思って」
「なんとなくわかっていたが、まだ続いているのか?」
「そうなんだ。みんな家に帰ることができないので、なんとかしなくては」
「そうか。これに対して何らかの考えを公式に発信しなくてはならないな。今までは成り行きに任せていたからな」
「そうなんだ。すでに10億人の申し込みがあるんだ。定員は1万人なのだから、もう手の打ちようがないよ」ジョンは肩をすくめた。、
「ほっとくことはできないな。世界の理解があってこそ、おれたちは活動できるのだから」
「それに、DONATION(寄付)にも影響が出るから」
「DONETIONは順調か?」
「今のところは。でも、国を動かそうという話もあるんだ。議題には出るはずだ」
「なるほど。いつかは出るだろうと思っていたよ。でも、これには莫大な資金がいる。入国するときは言っているはずだが」
「でも、国を動かすのは国民だけでなく、世界が注目していることだから。なるべく急がなくては。可能なことははっきりしているから、後は資金の問題だけだ」
「やれやれ。二つの難問が目の前にあるんだな」
「きみが弱音を吐くとはな。世界はきみの野望に注目しているんだから」
「すまない。やるだけのことはやるよ」
「おれも言いすぎた。少人数では世界を動かせないから、ある程度の人数を集めなければならなかった」
「それはそうだけど」
「でも、きみの、世界への、つまり、人類のみならず、すべての動物に対する貢献を考えたら、世界はきみのことを聞く耳を持っている」
「まあ、そうだろう。でも、失敗はできないね」
「それじゃ、定例会議の日時は決めておくから」ジョンは出ていった。
その日の夕方には、近々定例会議が開かれることがネットで知らされた。
酒場でもその話でもちきりだった。「入国希望者が天文学的数字になっているそうだね」誰かが言った。
「国民が増えると不満分子も増えて、住みにくくなるぞ」
「いや、希望者が増えるのは仕方がない。人間が楽しく生きるための国だから」
「それなら、第二2、第三の国を作らざるをえないだろう」
「でも、この国のときでも、世界中の国が反対した。ケンの申し出があったからこそ、特別に認められたんだ。第二、第三の国は認められるかどうかはあやしいものだ」
「でも、ケンならできるよ。それに、今は優秀なスタッフがついているから」
「それはまちがいない。そして、早くどこかに行きたい」
「どこに行きたいんだ?」
「北極海はあきたから、今度は太平洋だ」