シーラじいさん見聞録

   

「それはよかった。ぼくたちはようやくヨーテボリに着いた。トロムソまですぐに行けると思ったが、飛行機が飛ばないのでバスや電車しかない。それで、ものすごく混雑している。
とにかく行けるところまで行こうと思っていたが、イリアスが船でトロムソに向かおうと言ったので、今港に向かっているころだ」と説明した。そして、マイクの話を聞いた。
「そちらにもまだ連絡がないのか。どうしたんだろう?」しばらく話を続けたが、「とにかく急いで行くようにする」と電話を切った。
内容を知りたがっている3人には、「大体分かっただろうが、ベンからは連絡がないそうだ。何かあったかもしれないが、一段落すれば連絡が来るだろうと言っている」
「マイクたちは?」
「ようやく政府の船に乗ることができたので、明日の夕方にはトロムソに着くらしい」
「ぼくたちより早く着くな」
「それなら、みんなでオリオンを迎えることができる」
「でも、オリオンは狭い場所に閉じ込められたままで大丈夫だろうか」
「ベンは、オリオンのことはよくわかっているから、それは大丈夫だ」
「わたしたちが心配していることは分かっているはずだから、もうすぐ連絡が来るわよ」
3時間ほどして、切符を買うことができた。しかし、乗船まで4,5時間待たなければならないが仕方がない。
深夜12時を過ぎてフェリーに乗ることができた。何回かどこかの港に寄ってからトロムソに着くが、明日中には着けるようだ。
みんなほっとしてベッドで休むことにした。しかし、イリアスは、みんなが寝てから、一人でデッキに行った。オリオンのことが気になって仕方がないのだ。
もし何か起きていれば、船のテレビや新聞でわかるだろう。それがないということは、心配はない。ベンに何かの用事ができただけなんだ。
そうだ。海軍では、センスイカン同士でも互いの行動が秘密になっているとダニエルが教えてくれた。心配することはないと自分に言い聞かせた。
しかし、イリアスは、翌日も早朝からデッキに立っていた。3人が来て、「イリアス、向こうでゆっくりしろよ。マイクから連絡が来たらすぐに言うから」と言葉をかけたが、イリアスは、「ここのほうが気持ちいい」と答えるだけだった。
昼過ぎ海を見ているイリアスの前にカモメが1羽近づいてきた。イリアスは、「あっ!」と叫んだ。「見覚えがある。手紙を運んでくれたカモメだ」と思った。
まわりには多くの乗客がいたが、「おい。ぼくだよ」と叫んだ。すると、別のカモメが来た。何かくわえていて、イリアスに渡そうとした。
「ありがとう」イリアスはそれをさっと取った。そして、それを読んで、アントニスたちがいるキャビンに人をかきわけながら急いだ。
そして、3人を見つけると、「たいへんだ!」人に聞かれないように言いながら、それを渡した。「シーラじいさんからだ」アントニスはそれを読んで、ジムとミセス・ジャイロに渡した。
「そんなことがあったのか。でも、テレビでは言っていない」3人は顔を見合した。
「どうしよう。マイクとジョンは知っているのか」
「この際仕方がない。連絡しよう」
「そうしよう」アントニスは席を立って、人がいない場所を探した。
そして、電話をかけた。すぐにマイクが出た。そして、シーラじいさんからの手紙のことを話した。
「知らなかった。これは政府の船だが、そんな話はまったく出ていない」
「多分、シーラじいさんもそのことがわかっているので、ぼくたちに手紙を書いたのだろう」
マイクはしばらく黙っていたが、「すぐにベンに連絡するよ」と電話を切った。
アントニスはそこで待っていた。10分ほどして、マイクから電話が来た。
「どうだった?」アントニスはすぐに聞いた。しかし、コールはするがベンは出ないと言う。
「しかし、まだベンとオリオンが乗っていた船が沈んだとは断定できない」アントニスは自分に言い聞かせるように言った。
「そうだ。断定できない」マイクも自分に言い聞かせるように言った。
そして、「ここで懇意になったものがいるので、そこから調べてみる」と電話を切った。
そして、翌日の昼マイクから電話が来た。
「どうもベンの船のようだ」マイクの声を沈んでいた。「それは本当か!」アントニスが詰問するように聞いた。
「ここで知りあったものが、海軍に親戚がいたので聞いてくれた。すると、ベン・アレグザンダー中尉だと教えてくれたそうだ」
「すると、オリオンもか!」
「そうでないことを祈るが」マイクは泣きそうな声を出した。
「ああ。そうだね」アントニスも泣きたくなったが、それをぐっと我慢した。マイクも、「あきらめずに電話をしてみる」と言った。
アントニスは3人にマイクから聞いたことを説明したが、3人が何か言う前に、「しかし、,まだわからないから、マイクがベンに連絡を続けてくれるからそれを待とうと言った。
イリアスも、一瞬泣きそうな顔になったが、アントニスの言葉にうなずいた。

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