チュー吉たちの冒険

   

今日も、ムーズが降りてきた~きみと漫才を~
「ほんとにヘンな童話100選」の(50)
「チュー吉たちの冒険」
みんなでどこかの家の屋根裏で寝ているとき、誰かが、「これでかあ!」と叫びました。「どうした、チュー太郎?」とチュー吉が聞きました。
「見てくれよ、この写真」と興奮しています。敷いていた新聞の写真を指さしました。
ミッキーマウスが大勢の人間に囲まれています。「音楽がうるさくて熟睡できなかった」
「日本のディズニーランドができて30年になるという記事だよ」物知りのチュー助が教えました。
「そうか。でも、ここからは遠いな」
「行きたいのか」チュー作がからかいました。「別に。でも、ぼくらをモデルにしているミッキーマウスに人気があって、本家のおれたちは嫌われるのか知りたい気はするけどな」
「ビニール傘に頼めば行けるよ」
「でも、なぜあいつだけがもてるのかな?」
「おれたちのように夜行性じゃないからだよ。この写真のように、昼の日中に出てきては、人間と写真を撮ったりしているじゃないか」チュー造も加わりました。
「あいつは、元祖チャラ男なんだ。人間を助けたことなんかないはずだぜ。なあ、チュー助?」チュー作はチュー助に振りました。
「まあ、ミッキーマウスは、昔から子供のまわりにあったので、DNAにしみこんでいるのだろう。
ディズニーランドがある千葉県では、ディズニーランドで成人式をしているが、以前、朝日新聞が、新成人がネズミ踊りに興じたなどとからかったことがあった。すると、ものすごくクレームが来たそうだ。日本でも、子供のDNAにしみこみつつあるということだ」
「それは、ぼくらから言えば差別だ」チュー作がすかさず口を挟みました。
「どうして?」チュー次郎が聞きました。
「ミッキーマウスは、汚いネズミじゃないということだよ」
「ミッキーマウスは、何もしなくても、楽しくなる人気があるのだ」チュー吉が間に入りました。
「おれたちネズミでも、トカゲでも、ヘビでも、実際は嫌われているのに、漫画になると人気が出るのだ。不思議なことだが」
「不思議と言えば、一つわからないことがある」チュー造が言いました。
「何だ?」
「最近、円安で景気が戻ったとか言っているだろう?」みんなうなずいた。
「でも、人間は、低いとか安いとかは嫌うのじゃないか」
「よく気がついたな。それじゃ、しばらく説明するよ」みんなチュー助のまわりに集まりました、みんな眠気が覚めたようです。
為替の話では、「チュー助、ちょっと待ってくれ」という声が何回も起きましたが、みんな何とかわかったようです。
「それじゃ、同じお金にすればいいじゃないか」チュー作が言いました。
「まあ、そうだが、それぞれの国の歴史、経済、文化がちがうので、そういうわけにはいかないのだろう」
「円高より円安を喜ぶというのは、名より実(じつ)を取るということだな」
「それじゃ、円安なら、円をドルに替える場合は損をするじゃないか。これは困った!」チュー造が素っ頓狂な声を上げました。
「おまえが外国に行くことはないさ」とチュー作。
「行くとしても、船か飛行機の貨物室に紛れこむから、財布はいらないぞ」みんな大笑いしました。
「国内では、さらに格差が広がるかもしれないな」
「食べものも豪華になればいいけどな」
「株で儲けるやつもいるけど、庶民は変わらないということだな」
「福島の原発の停電は、おれたちの仲間が原因だそうだな」
「また本家はイメージダウンになった。ミッキーマウスはますます人間にちやほやされるというのに」
そのとき、キャーという声がしました。みんな顔を見まわしました。
「ほっとけ。ケガでもしたらつまらないぜ」チュー作は不機嫌そうに言いました。
「まあ、そう言うな。へんな童話シリーズも今回で50回目だそうだ。地道に努力を続ければ、いいことがあるかもしれない」
「そうだ。夢があれば道ができる、だ」みんなは声のほうに急ぎました。

 -